2018年1月16日火曜日

Joe Bowie & Defunkt (1) Defunkt結成前夜

この後、Burroughsものがさらに続くので、ちょっと息抜き。

DEFUNKT [Hannibal] release 1980 → [Ryco Disc/Hannibal] re-issue 1992


Design : M&Co. New York

最近ようやくCDを手に入れたので紹介しておこう。これJazzとしてもSoul/Funkとしても名盤なので、もっと入手しやすくなってほしい。

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今も活動を続けるDefunktのデビュー作。リーダーはJoseph(あるいはJoe) Bowie。

Joe Bowie(1953-)は、St.Louis出身のtrombonist。Art Ensemble of ChicagoのLester Bowie (tp)(1941-99)は彼の兄。本盤Producerでtsで参加もしているByron Bowieも兄らしい。

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1970年代にfree jazz畑で活躍。St. LouisのJazz Musiciansは、ChicagoのAACM(Association for the Advancement of Creative Musicians)を真似たような、Black Artists Group(BAG)という団体を作って活動していた。Joe Bowieもそのメンバー。

BAGのメンバーは、Julius Hemphil (as,ss,fl)、Oliver Lake (as,ss,fl)、Hamiet Bluiett (bs, acl)、Bailida Carroll (tp), Charles Bobo Shaw (ds), Luther Thomas (as, fl), Joe Bowie (tb)という錚々たる面々。

なおJoeの兄Lester Bowieは、早くからChicagoのAACMに参加していたため、BAGのメンバーではない。が、もちろんSt. Louis出身なので、BAGのメンバーとはしょっちゅう共演している。

BAGは1968年頃から活動していたが、1970年代後半にはみんなNYCに出て行ってしまい、発展的解消をしたようだ。

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Hemphil、Lake、Bluiettあたりは、当時のNYCのLoft Jazzシーンでは中心的役割を果たし、後にはWorld Saxophone Quartetを結成するなど、めきめき売れっ子になっていった。楽器のテクも超絶。

一方、Charles Bobo Shaw、Luther Thomas、Joe Bowieは共にHuman Arts Ensembleを結成し活動(リーダーはLuther ThomasだったりShawだったりとテキトー)。

悪いけど、この3人になると、BAGでも「2軍」といった感じ。楽器はヘタクソ、その音楽もやたらとドタバタ~ガッチャガチャした感じで、あまり洗練されていない作風。

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それでも

Luther Thomas Human Arts Ensemble/FUNKY DONKEY Vol.I [Creative Consciousness] rec.1973, Release 1977 

は、かなりおもしろいアルバムだった。これはいつかまた、ちゃんと取り上げよう。

なお、2001年には、未発表だったVol.II(Intensity)と合わせ、

Luther Thomas Human Arts Ensemble/FUNKY DONKEY Vols.I&II [Atavistic/Unheard Music Series] rec.1973, release 2001 


Cover Design : Luther Thomas

という形で初CD化されている。

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Joe Bowieがやっていたのは、主にfree jazz。しかし、free jazzというのは「楽器のテクニック自慢」的なところが多分にある。

ところがJoeのtbはというと、あまりテクがなくガナるばかり。彼のfree jazzは、あまりおもしろいものではなかった。

1970年代中頃のLoft Jazzブームが一段落し1970年代後半になると、free jazzシーンもなんとなく行き詰まり感があり、free jazz musiciansは次の展開を求めて動き出した。

Free jazzに他のBlack Musicを混ぜ始めたのだ。

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口火を切ったのは、1960年代に続いて、またしてもOrnette Coleman。

バンドメンバーが、Jazzをあまり知らない若手に切り替わると、若手たちが得意なR&B/Funk rhythmに仕方なく切り替えていったという。これが1975年ころ。

これは、Miles Davisが活動を休止した時期と一致している。上記のOrnetteの言い分では、Milesは全然出てこないが、少なからずElectric Milesの影響はあったんではないか、と推察する。

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Ornette Coleman/DANCING IN YOUR HEAD [A&M/Horizon] rec.1973 & 1976, release 1977

Ornette Coleman/BODY META [Artist House] rec.1976, release 1978

とリリース。

とても変なfunk rhythmに乗せ、Ornette自身は相変わらず、という異形のfree jazzをやり始めた。

商業的には全く話にならなかったが、free jazz musiciansには大きなヒントを与えたのではないだろうか?

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1980年頃になると、Loft系のfree jazz musiciansたちがJazz以外のBlack Musicにfree improviasationを乗っける、という展開を見せ始める。

Lester Bowie (tp)は、

Art Ensemble of Chicago/NICE GUYS [ECM] rec.1978, release 1979

で、JamaicaのReggaeを取り上げる。Jaという曲がそうだ。この後にはGospelを取り上げるようになり、ECMに名作の数々を残した。

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Ornetteの弟子、James Blood Ulmer (g)、Ronald Shannon Jackson (ds)、Jamaaladeen Tacuma (b)らは、それぞれが独自のfunk rhythmで強力な作品群を続々とリリース。Ulmerなどは、ついには大majorのColumbiaと契約するまでに至る。

Oliver Lake (as,ss)は、Jump UpというReggaeバンドを組んで活動し始めた。

Joe Bowieの盟友Luther Thomasも、DizzazzというバンドでMoers Jazz Festivalに登場。ReggaeもFunkもRapも、そしてJazzもごった煮にしたような名アルバムを残す。

Ray Anderson (tb)も、Slickaphonicsというfunk色の濃いバンドをやっていた。

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片や白人Rock畑からは、James Chance (as)、The Pop Group分裂組のPig Bag、Rip Rig & Panic、Maximum Joyなどが現われ、こちらもBrass Rock、Funk、Afro Cuban、Free Jazzをごった煮にしたような音楽をやり始めた。

他にもPinski ZooだのElliot Sharpだのもいたなあ。一時はECMですら、Everyman Bandという、得体のしれないFunk-Free Jazzバンドのアルバムを出していたほど。

そんな妙な作品群を、次から次へと入手していた自分もどうかと思うが、とにかく面白い時代だった。

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さて、ここでようやくJoe Bowieに戻るが、彼もfree jazzをやっていたわけだが、自分の限界というものもよくわかっていたのではないだろうか。周囲の流れと歩調を合わせるように、JoeもFunk Musicを取り入れたDefunktというグループを結成。

これがJoe Bowieの音楽性に、ピタリとはまった。彼は辛気臭いfree jazz向きの男ではなかったのだ。

ようやく、そのDefunktのfirst album DEFUNKTの登場にたどり着いたところで次回。

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(追記)@2018/01/16

この時代のFree Jazzの動きはとてもおもしろいので、Arthur BlytheやDavid Murrayあたりも含めて、いつかまた歴史をたどってみよう。

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