2014年7月29日火曜日

音盤テルトン(4) MONTY ( ALEXANDER ) MEETS SLY AND ROBBIE - Old Wine in A New Bottle-その2

本エントリーは
stod phyogs 2014年7月29日火曜日 音盤テルトン(4) Old Wine in A New Bottle-その2
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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えー、ここでようやくメンバーと曲名をあげておきます。

Monty Alexander/MONTY MEETS SLY AND ROBBIE [Telarc]


















1999/08 & 12, Conshohocken, PE
Monty Alexander (p,melodica), Robbie Shakespear (b), Sly Dunbar (ds,rhythm,prog), Handel Tucker (add key), Desmond Jones (ds fills), Steve Jankowski (tp), Jay Davidson (sax)

01. Chameleon
02. Monty's Groove
03. Soulful Strut  ┐
04. The In Crowd  ├ この流れがサイコー
05. Sidewinder    ┘
06. People Make the World Go 'Round
07. (Do the) Kool Step
08. Moanin'
09. Mercy, Mercy, Mercy
10. Hot Milk

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曲名を見てすぐわかる通り、これはMonty Alexander Plays Funky & Soul with Sly & Robbieです。1960年代(一部70年代)のファンキー、ソウルの名曲がズラリと並んでいます。この辺の俗っぽさは、また嫌う人がいるでしょうなあ。

もう、この辺はMontyの芸風と思ってあきらめて下さい。

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さて、まず1曲めはHancockのChameleon。「なんだよ、HEAD HUNTERSかよ!」と、さっそく脱落する人続出、でしょうか(笑)。

いきなり飛び出すタブラとスクラッチ(どちらもサンプリングくさいですが)。おもしろすぎ!だが、さらに去る人も・・・。

Slyのリズムはほとんど打ち込みです。Bill Laswellと知り合ってから(?)、Slyのドラムはどんどん打ち込みが増えてきましたが、本作ではほぼ全面打ち込み。あの豪快なドラムが聞けないのはちょっと残念ですが、Sly & RobbieはDubの人でもあるのですから、こういう小細工かました音作りもお手の物。

しかし、これも(自分の)サンプリングと思われるリムショットだけでも存在感充分なんだから、たいしたものです。

Robbieの方は、相変わらず地をはうようなベース・ラインを弾き続けます。鉄人ベース健在。

で、肝心のMontyはというと、かつてのバカテクは影を潜め、音は少なめ。まるでCount Basieかと思うくらい淡々と弾いていきます。これは意外。

でもこれがなかなかよい。バックがゴチャゴチャ小細工している時は、それにバカテクを被せる必要がないのをよく知っている。

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2曲めは自作のMonty's Groove。これも淡々と弾いていきます。

そして3~5曲めの怒涛の3連発が、本作の聴き所。

3曲め、Soulful Strut。これはYoung – Holt Unlimitedの1968年の大ヒット曲。と言われても、リアルタイムでは知らなくて、知ったのはカバーでした。

カバーしたのはStyle Councilとばかり思い込んでいたが、どうもSwing Out Sistersだったよう(どっちも一時期ハマったハマった)。こっちの曲名はAm I the Same Girl。というか、こっちが元曲で、それをインスト化して曲名をつけかえたのがSoulful Strut。

元曲が発表される前に、インスト版が発表されて大ヒット。それも、Young – Holt Unlimited自身は全然演奏していなかった、といういいかげんさ。

その辺の事情はこちらのサイトで知りました。

・SAX & BRASS magazine > コラム >塚本謙のFunk裏Recommend Disc > 2012年8月16日 真夏のシカゴ・ファンク:ザ・ヤング・ホルト・アンリミテッド編 今回の”裏”Recommend Disc 『Soulful Strut』 The Young-Holt Unlimited
http://rittor-music.jp/saxbrass/column/funkdisc/283

ゆったり弾くMontyのピアノが気持ちいい。これはもう曲の力に全面的に身を委ねた作戦勝ち。ジャズ的なスリルはほとんどありませんが、この辺まで聴くと「ああ、これは当たりだあ!」と宣言できます。

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4曲目はRamsey Lewisの大ヒット曲The In Crowd。こういう曲なら、Montyはお手の物。手数もちょっと増えています。本家のArgo盤もいいけど、本当に楽しい曲だと再認識できる名演。

すっとぼけた打ち込みリズムには、「馬鹿にすんなあ!」と怒り出す人もいそうだなあ。でも変にマッチしていていいんだよなあ。

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5曲目はLee Morganのこれも大ヒット曲Sidewinder。Montyは、これまた音数少なく進めていきます。この手のヒット曲というのは、本当に曲の力が強い。アドリブ・パートで小細工は必要ないのだ。

その辺は、大昔は馬鹿にしていたGrover Washington Jr.の聴き方がわかってから、理解できるようになりました。

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6曲目、StylisticsのPeople Make the World Go 'Roundをしっとりとこなした後、7曲目は自作の(Do the)Kool Step。

これが珍品。というのは、これは4ビートJazz。なんと、Robbie Shakespearの4ビート・ウォーキングが聴けるのです。

これ、なかなかよい。今までRobbieが参加したジャズ作で、こんな4ビートをこなしたことはあったんだろうか。あったら聴いてみたい。

そして、今後4ビート・ジャズに参加させてもみたい。もしかすると、最近4ビートやることが多いAnthony Jacksonみたいになるかもしれない。

さらに驚くことに、Robbieはベース・ソロをとるのですよ。20分位ある長い曲でもリズム・パターンをほとんど崩さないあのRobbieが!

おそらく「これはお遊び」と割りきっているのでしょう。曲はRobbieのベース・ソロでフェイドアウト。しかし、もっと聴いていたかった。

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8曲目はBobby Timmons(+Art Blakey & Jazz Messengers)のMoanin'。これも打ち込みリズムがふざけていて、怒り出す人いそうだなあ。Montyはやはり淡々と弾いていきます。完全にSly & Robbieの音作りに乗っかる作戦。それにしても、この三人相性いい!

9曲目はJoe Zawinul(+Cannonball Adderley)のMercy, Mercy, Mercy。ここでようやくレゲエになります。ああ、Mercy, Mercy, Mercyがこんなにレゲエにぴったりとは、目からウロコ。実に気持ちいい。

最後の10曲目は、Jackie MittoのHot Milk。これはReggae以前のJamaicaのヒット曲(1968年)。この辺は、3人共青春時代の思い出の曲なのでしょう。

ここではMontyはAugustus PabloばりにMelodica(注)を吹きます。エンディングにふさわしい、いい演奏です。

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この作品を「傑作」とする人はまずいないでしょう。眉をひそめる人の方が多いかも。

かといって「珍品」、「駄作」で片付ける作品でもない。事実、私はたいそう楽しむことができましたし。

Monty Alexanderはここでは特に変わったことはしておらず、むしろかつてより音数を減らし、一歩引いた立場でSly & Robbieの音作りに身を委ねています。主役なのに。

言い換えれば、リラックスしている、あるいは、二人を信頼しきっている、という気もします。

この作品は、言うなればSly & Robbieのプロデュースの勝利。結構スカスカながらも面白い音を作りこんだ上に、Monty Alexanderをお招きして、わりと気楽に弾いてもらい、結果心地よい作品になっている、という。こういう発想は、ジャズ屋さんからはあまり出てこないような気がします。

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この作品は、マンネリ化してレコーディングもなくなり、くすぶっているベテラン・ミュージシャンにとって、新しい展開を探るヒントになるかもしれません。

本人は特に変わらなくとも、これまでなかったようなシチュエーションに身を置いてみると、かなりおもしろいものが生まれる可能性があります。

考えてみると、Miles Davisの作品の多くはこの方法論で作られているのに気づきます。

あと、思いつくところでは、ちょっと聴いただけだが、Ron CarterがMC Solaarとやった曲はかなりカッコよかった。その路線はその後一切ないのは残念だけど。

Montyが幸運だったのは、Sly & Robbieという気の合う仲間(と私は思う)を見つけられたことでしょう。まず、よい仲間、プロデューサーを見つけるのが第一でしょうね。それが大変なんでしょうが。

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なお、この3人は、Skaの巨人Ernest Ranglin (g)を加えた4人で2011年11月に来日しています。

そのステージの様子は、

・SMASHING MAG > ? >アーネスト・ラングリン (Ernest Ranglin) モンティ・アレキサンダー(Monty Alexander)& スライ&ロビー(Sly & Robbie) @ コットン・クラブ 2011.11.03 
http://www.smashingmag.com/jp/archives/26717
・YouTube > Jamaica Jazz feat. ERNEST RANGLIN, MONTY ALEXANDER and SLY & ROBBIE : Cotton Club 2011/11/2 (2011/11/03 uploaded)
https://www.youtube.com/watch?v=iIG9k6FYccE

で、その一端を知ることができます。

また、Monty AlexanderとErnest Ranglinは、

Monty Alexander – Ernest Ranglin/ROCKSTEADY [Telarc](2004)

という共作もリリースしています。Montyのジャマイカ回帰路線は、今も続いているようですが、私ごときではとても追いきれませんね。

というわけで、ようやく終わりです。

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(注)

MelodicaとPianicaはどうちがうの?一般には鍵盤ハーモニカと呼ばれる楽器ですが、ほぼ同じです。ヤマハの製品名が「Pianica」、Hohnerの製品名が「Melodica」。

どちらも鍵盤のボディにマウスピースを突っ込んで、息を吹き入れて鍵盤を弾く、というシステムは同じ。ただしPianicaは直にマウスピースを突っ込むよりも、蛇腹のホースを付けその先にマウスピースをつけるケースが多いようです。その辺が違い。

参考:

・ウィキペディア(日本語版) > 鍵盤ハーモニカ (最終更新 2014年7月16日 (水) 12:54)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB

2014年7月26日土曜日

音盤テルトン(3) MONTY ( ALEXANDER ) MEETS SLY AND ROBBIE - Old Wine in A New Bottle-その1

本エントリーは
stod phyogs 2014年7月26日土曜日 音盤テルトン(3) Old Wine in A New Bottle-その1
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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いやあ、暑くて調べ物をする気になりまへんな(笑)。

チベットものを期待している方にはすいません。まあそんな方もほとんどいないんですが。

そういうわけで、今のうちはなんぼでも書けるJazzもののストックを置いておきます。

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今回は、

Monty Alexander/MONTY MEETS SLY AND ROBBIE [Telarc]



















1999/08 & 12, Conshohocken, PE

「Monty AlexanderとSly & Robbie?なにそれ?」と思う人がほとんどでしょうが、これがなかなかの拾い物なのです。

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Monty Alexanderといえば、誰もが知っているのは

Monty Alexander/MONTREUX ALEXANDER [MPS] (1976)
http://www.amazon.co.jp/Montreux-Alexander-Monty/dp/B000VAH9XK

というか、自分はほとんどそれしか聴いたことがない(ファンの人申し訳ない)。

これは1976年のMontreux Jazz Festival(Jazzという頭はまだついているのかな?)でのライブ盤。John Clayton (b), Jeff Hamilton (ds)の名コンビを従えた名盤です。

とはいえ、ポップスのヒット曲Feelings(注1)なんかやっているせいで嫌う人も多い。

音盤も有名だけど、映像もまた素晴らしい。LP/CDとは収録曲がかなり違っていて、音盤には収録されていないMontevideoがすさまじい。バカテク・モンティの面目躍如でしょう(注2)。

そのかわりBen(映画「ベン」のテーマ、えー、これは言わずと知れたMichael Jacksonのヒット曲)なんかも収録されていて、ますます嫌う人もいるでしょうね。

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とにかくノリノリのバカテクで、同じJamaica系ということもあり、Wynton Kellyの後継者?的な見方をしていたこともあります。

しかし、自分的にはその後あまり聴く機会もなく、興味の彼方に去ってしまいましたが、どことなく気になる人ではありました。

長らくMPSで録音し続け、その後主にConcordで活躍。しかしその辺もほとんど聴いたことない。スマン。

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この音盤は、とある中古屋で見かけたもので、買おうか買うまいかかなり迷ったのですが、Sly & Robbieとのコラボという異常さに惹かれて購入。

こういう異種格闘技もの好きなんですよ。なにせ、Hal Willner、Bill Laswell、Kip Hanrahanの異種格闘技もので育った人ですから。

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Sly & Robbieは、Jamaica一のリズム・チームとして40年近く君臨し続ける化け物二人。本職はReggaeになるんでしょうが、いろんなフィールドに出現しています。個人的にはGrace Jones(この人もジャンルがわからないし、色んな意味で化け物)とのコラボが興奮ものでした。Gwen Guthrieも、いまだに年に何回かは聴く。

そしてなんといっても、Black Uhuruですさまじいリズムを文字通り叩きだしていたのは忘れられない。本筋と関係ないけど、Puma Jonesかわいかったなあ(1990年に亡くなっていますが)。

いかん、話がひとつも進まない。Black Uhuruの話はいずれまた。

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Sly & Robbieがジャズ・フィールドに出現し始めたのは、いつごろでしょうか?

Bill Laswellの出世作、

Herbie Hancock/FUTURE SHOCK [Columbia] (1983)

にSly Dunbarだけ呼ばれたのが最初か?その後Bill Laswellがらみでよく名前を見かけるようになりましたが、出て来る作品はJazzだか何だかよくわからない代物(いや、おもしろがってるんですよ)。

Bill Laswellプロデュースで、

Sly & Robbie/LANGUAGE BARRIER [Island] (1985)

というのもありました。Bill LaswellのDMXが全面的に支配するジャンルがさっぱり謎のアルバムです。もうReggaeではないですね。

Bill Laswellは、メンバーを微妙に変えて似たようなアルバムを大量に出す人ですが、これもその一枚。Hancockとのヤツや、Phillip WilsonとのDeadlineとか、Bernie Worrellのヤツとか、なんだか区別がつかない。そんなのをいちいち追っかけてる自分もアレですが。

いかん、話がBill Laswellになっている。進めよう、進めよう。

Sly & Robbie参加のジャズ作品では、渡辺香津美のMOBOの話なんかもしたいんですが、いずれまた。

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で、Monty AlexanderとSly & Robbieのこの組み合わせ、実はなんの不思議もないのです。三人共Jamaicaの人ですから。

Monty Alexanderが活躍し始めた頃は、ちょうどReggaeも勃興期でした。だから、MontyにReggaeの素地がないのは仕方ない。一貫してJazzの人でした。

それがどうやってSly & Robbieと仲良くなったかは知りません。同郷ですから、音楽ジャンルは違えいつ知り合ってもおかしくないでしょう。

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Montyは本作の前に、

Monty Alexander/STIR IT UP : THE MUSIC OF BOB MARLEY [Telarc] (1999)

というBob Marley曲集(未聴)を出しています。Sly & Robbie は参加してはいないものの、その辺から関係が深まり、「じゃ、次は一緒にやろうか」となったようです。

ああ、ようやく本作までたどり着いた。

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だめだ、話が長すぎる(笑)。2回に分けます。

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(注1)

USAで「Feelings」といえば、「イケてない!」の象徴でした。ペプシコーラのCMで、M.C. Hammerがいつも飲んでるペプシを某ライバル社のコーラにすり替えられたせいで、イケてない「Feelings」を歌ってしまい、客ガッカリ、というヤツで日本にもその事実が広まりました。

これが1990-91年ですか・・・。M.C. Hammer自体、当時でも(一般はさておき)Hip Hop界では「イケてない!」の象徴でしたが・・・。「イケてない!」の自乗、入れ子構造ですな。

参考:
・ウィキペディア(日本語) > 愛のフィーリング (最終更新 2014年6月2日 (月) 04:47 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E3%81%AE%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0

(注2)

音盤と、私が所蔵している映像版(WOWOW放映)の曲順を比較してみましょう。

Monty Alexander/MONTREUX ALEXANDER [MPS]
1976/07/10, Montreux, Swiss
MA (p), JC (b), JH (ds)

01-Night Mist Blues
02-Feelings
03-Satin Doll
04-Work Song
05-I'll Drown In My Own Tears
06-Battle Hymn Of The Republic

Monty Alexander/MONTREUX JAZZ FESTIVAL 1976 [?→WOWOW] (ON-AIR in Japan on 1995/01/09)
1976/07/10, Montreux, Swiss
MA (p), JC (b), JH (ds)

01-Montivideo
02-Nite Mist Blues
03-Ben
04-Feelings
05-Satin Doll
06-Unlimited Love
07-You Make Me Feel Brand New (fadeout)

青字は両者で共通のもの。

これは、WOWOW Jazz Fileが始まる前、WOWOWで散発的に放映されていたJazz映像のひとつ、と記憶しています。Yellow Submarineみたいなサイケなタイトル・イラストが当時らしい。

さっきも書きましたが、とにかくMontevideoが凄すぎ!当然完全版が残っているはずなので、是非商業ベースでリリースしてほしいですね。

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参考までに、1997年に21周年(?)記念で同一トリオでMontreux Jazz Festivalで再現ライブを挙行しています。こちらも映像所蔵。

Monty Alexander/MONTREUX JAZZ FESTIVAL 1997 [?→WOWOW] (ON-AIR in Japan on 2004/05/11)
1997/07/17, Montreux, Swiss
MA (p), JC (b), JH (ds)

01-Just in Time
02-Work Song
03-Ben
04-Renewal
05-When the Saints Go Marching
06-Close Enough for Love
07-Glory Hallelujah
08-River

性懲りもなく「Ben」をやっているあたりが反感買いそうですが(笑)、3人共快調そのものです。

その20年で、Montyはマイペースですが、リズム・セクションの二人はぐっと名を上げましたね。

2014年7月13日日曜日

音盤テルトン(2) Milt Buckner & Buddy Tate/THEM THEIR EYES - うなり声の最強怪人バックナー

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stod phyogs 2014年7月13日日曜日 音盤テルトン(2) うなり声の最強怪人バックナー
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音盤話開始記念ということで2連発。

なんつって、実は本筋で調べ物に手間取っているだけなんですが(現在長物3件停滞中)。まあそのうち。

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今回紹介するのは、

Milt Buckner – Buddy Tate/THEM THEIR EYES [Black & Blue]




















またBlack & Blue盤のMilt Bucknerです。

もともとは3枚のアナログ盤に分散収録されていたようなのだが、このようにまとまった形で再発されたのはよいこと。ジャケットも白地にハゲオヤジの笑顔(笑)と、スッキリしていてなかなかよい。

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1967/12/07, Paris
Buddy Tate (ts), Milt Buckner (org), Wallace Bishop (ds)

01. Mack the Knife
02. Stompin' at the Savoy
03. Too Heavy Blues
04. Them Their Eyes ← 最強!
05. Margie
06. Rose Room
07. Bouncin' at Dawn

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Buckner、冒頭のMack the Knifeからうなりまくり。しかしこんな楽しげなMack the Knife他にない。

その秘密の一つはベースペダルの素晴らしさ。これならサポートのBassistは全然いらない。ペダルだけでBassist参加なんてのも可能なくらいそのスウィング感は素晴らしい。

テーマから最初にソロを取るのはBuddy Tate。マイペース。

この人、私にはイマイチぴんとこない人なのだ。いつもパターンにハマり過ぎで熱くならない印象。そこがTateの味なんですけどね。職人としては超一流なんですが、お仕事を超えてムヂャグヂャになってもほしかったけど。

BucknerはIllinois Jacquetと組むと、二つ火の玉となって炸裂してしまうので、濃すぎてついて行けない人もいるでしょう。Bucknerのオルガンを主体に聞きたかったら、堅実なTateと組んだ時の方がいいかもしれません。

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次はSavoy。どんどんテンションが上がっていきます。Bucknerうなりまくり。よくBud PowellやKeith Jarrettのうなり声を気にする人もいるけど、Bucknerの声はそのレベルではないので、もはやパーカッションの一部として聞くべきでしょう(笑)。

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軽めのBluesを挟んで、いよいよThem Their Eyes。これだけ盛り上がる演奏はなかなかない。

Tateの最初のソロはマイペースを崩さない。なかなか火がつかない人だよね、この人。Bucknerのアオリとうなり声は激しさを増し、もう爆発寸前。

Bucknerのソロは、音数がいつもの二割増しで突進。ペダルすら倍速で刻む時間帯もあり、その火の玉スイング感は尋常じゃない。体が動いてしょうがない。ウリュウリュ、アニャオニャ。

Bucknerのうなり声もついには奇声・掛け声にレベルアップ。後半にはテナーよりもオルガンよりもドラムスよりも、Bucknerの掛け声が一番大きく録れている、という異常さ。

2回めのソロでTateにもついに火がつく。Bucknerの「One More ! One More!ウギェヒャー!」からの取り乱しぶりはTateらしからぬ怪演。

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これを聴いたあとの3曲は、もう疲れてしまってほとんど印象に残らない。Them Their Eyes1曲だけ聴いてラックに戻すことも多いです。

ドラムスのWallace Bishopって人については全然知らないのだけど、シャキシャキとキレのよいリズムは素晴らしい。録音もよいのだな。非常に快適です。

ドラムソロなど全く与えられていないけど、必要ないよね。ドラムスの名演は、ドラムソロや、ましてリーダー作にあるのではないことがわかります。

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これは、たしかディスク・ユニオンで300円で投げ売りされていたヤツ。事前に情報は全くなく買ったわけですが、こういう大当たりが出るから、エサ箱あさりはやめられない。

2014年7月8日火曜日

音盤テルトン(1) Jay McShann with Milt Buckner/KANSAS CITY MEMORIES - カンザスおやじ対オルガンの怪人、おフランスの決戦!

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stod phyogs 2014年7月8日火曜日 音盤テルトン(1) カンザスおやじ対オルガンの怪人、おフランスの決戦!
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今回から音楽の話も挟んでいきます。こちらもマイナー・ネタ中心ですが、そんなこと言ってると大好きなモンクの話とかできなくなるから、まあテキトーに好みの音盤を紹介していきます。

しかし、ますます何のblogかわからなくなってきましたな。

ちなみに「テルトン」とは「གཏེར་སྟོན་ gter ston」、埋蔵経典発掘者のこと。世にあまり知られていない音盤を紹介したい、という意気込みも少しあります。ま、そんな大層なもんじゃありませんが。

音盤を何千枚も持っているマニアではないので、気楽に書いていきます。マニアの方々にとってはぬるい話ばかりですが。

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第1回めは、

Jay McShann featuring Milt Buckner/KANSAS CITY MEMORIES [Black & Blue]




















01-04 : 1973/07/23, Bordeaux, France
Jay McShann (p,vo), Milt Buckner (p), Rolland Lobligeois (b), Paul Gunther (ds)

01. Vine Street Boogie
02. Cherry Red
03. Miltjaybird
04. Yardbird Waltz
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05-08 : 1973/07/31, Paris, France
Arnett Cobb (ts), JM (p,vo), MB (org-05,06), Clarence "Gatemouth" Brown (g-05,06), Al Casey (g-07,08), RL (b), PG (ds)

05. My Chile
06. Hot Biscuits
07. Tain't Nobody Business
08. Doo Wah Doo
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09-11 : 1970/11/16, Barcelona, Spain
JM (p,vo), MB (p), Unknown (b), PG (ds)

09. Funky KC
10. Please Mr. McShann
11. Honeysuckle Rose

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Kansas City Jazzの重鎮Jay McShann(注1)とオルガンの怪人(今回はオルガンは2曲だけ)Milt Bucknerのダブルピアノでにぎにぎしくお送りします。右チャンネルがMcShann、左チャンネルがBucknerです。

いつもギャーギャーうるさいBucknerとMcShannをぶつけてどうなるかと思ったが、さすがにBucknerがちょっと引いて、McShannのサポートに回る。ぶつかり合うことはない。大人の音楽ですな。雰囲気は終始和やか。

これは、Albert AmmonsとMeade Lux LewisのダブルピアノBoogie Woogieの楽しさを1970年代に復活させたものと言えますね。1曲めから飛ばす飛ばす。

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McShannの歌がまたよい。声量もないしそんなにうまい歌ではないが、湯上がりオヤジの鼻唄みたいで気持ちよさそう。太り肉でチョビヒゲ、あのスケベそうなニヤニヤ顔を思い浮かべながら聞くと、またいい感じ。

中盤にはArnett CobbとGatemouthが加わって、味付けがさらに濃くなる。それにしても、Cobb、Gatemouth、Bucknerっていう組み合わせのBlack & Blue盤、オレはいったい何枚持ってるんだろう?

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1973年というと、メジャー・シーンでは、やれフュージョンだ、エレクトリック・マイルスだと目まぐるしい時代でしたが、そんな流れとは関係なく地道に自分の音楽を続けていたオヤジたちもいたわけです。生活はみんな大変だったらしいけど。

その受け皿になったのが、ヨーロッパの聴衆とレーベル。Black & Blueはその中でもスウィング~ブルース系のやや古臭いミュージシャンを拾ってくれたフランスのレーベル。

音楽的な傾向は1950年代Verve~Pabloと似ているが、それよりやや泥臭い連中が好みのよう。

アルバム作りやジャケット(注2)のいいかげんさもVerve~Pabloと似てるかな。大量にダラ録りして、小出しにして行くやり方は、むしろPrestigeと似てるかもしれない。

アナログ時代はジャケットも中身も正体不明の代物で、なかなか手を出す気になれなかった。CDになってから、音源もジャケットも整理されて、だいぶ素人も手に取りやすくなった感がある。

とにかくBkack & Blueというレーベルは、まとまった記事もないし、実態がつかみにくい。だれかDiscographyにまとめてちょ。

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(注1)

Jay McShannくらいになると、スウィングだとかジャンプだとか中間派だとかブルースだとか、ジャンル分けは無意味。McShannの中に全部入ってる、とも言えるし、McShannから全部出て来たもの、とも言える。

Jay McShann(1916-2006)はOklahoma出身。1930年代にKansas Cityに移って、自分のバンドを結成して名を上げる。ジャズ正史(スイングジャーナル史観とも言う)では、Charlie Parkerをめっけてきたオヤジ、としてしか知られていない(笑)。ちゃんと聴いてる人少ないよね、オレもだけど。

NYやLAなどの中央に出ることもなく、一貫してKansas Cityで活動を続ける。が、レコーディングは途切れることなく、単なるローカル・ミュージシャンとは一線を画す存在。まさに重鎮。21世紀になってからしばらくはご長寿ジャズ・ミュージシャン(早口言葉だな)の一人だったが、2006年90歳で死去。大往生。お疲れ様でした。

(注2)

アナログ白黒ジャケット時代には、やはり白黒ジャケットのPabloと区別しにくかった。Norman Granzの手書き文字がないだけ。