2019年4月20日土曜日

KEROUAC & THE BEAT GENERATION (03) Jack Kerouac 『THE SUBTERRANEANS(地下街の人びと)』

・ジャック・ケルアック・著, 真崎義博・訳 (1997.3) 『地下街の人びと』(新潮文庫). 195pp. 新潮社, 東京.


カバー装画:飯田淳, デザイン:新潮社装幀室

← 英語原版 : Jack Keouac (1958) THE SUBTERRANEANS(An Evergreen Book). 111pp. Grove Press, NYC.

なお、上記書は新訳で、旧訳として

・ジャック・ケラワック・著, 古沢安二郎・訳 (1959.7) 『地下街の人びと』(新潮・現代世界の文学). 196pp. 新潮社, 東京.

というのもある。

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これは、『ON THE ROAD』の後、1953年のお話。『ON THE ROAD』同様、ほとんど私小説。

作者の分身Leo Percepiedと、黒人女性Mardou Fox(Alene Leeがモデル)の出会いと別れを描く。そこに、Beat Generationのボヘミアンたちの日々が散らされる。

なお小説では、舞台はSan Franciscoに変えられているが、実際はNew Yorkのお話である。

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『ON THE ROAD』では、主人公がどんどん移動していくので、主人公の意識だだ漏れ文体でも、読者もそれにつられてフレッシュな感覚を持続でき、面白く読んでいけた。

しかし、本書のように、定住し、狭い地域、狭い人間関係の中で、同じ手法を取られると、なかなかにつらい。堂々巡り、煮詰まり感、螺旋状に険悪に落ちていく人間関係・・・。

しかし、ダラダラ若者文化の黎明期の姿が実写されており、その意味ではとても面白い。やっぱりこれは、読むより実践したほうが面白いに決まってる。

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なお、本作の登場人物もいずれもモデルがあり、

Adam Moorad(Allen Ginsbergがモデル)
Frank Carmody(William S. Burroughsがモデル、北Africa出身の作家ということになっている)
Jane(Joan Vollmer=Burroughsの妻がモデル、小説上でも死んでいる)
Sam Vedder(Lucian Carrがモデル)
Leroy(Neal Cassadyがモデル)
Yuri Gligoric(Gregory Corsoがモデル)

なので、これを念頭に読むとまた違って見えるかもしれない。

なお、前回紹介した『ケルアック』には、Kerouac全小説での「登場人物名-実在の人物名」対比表がある。便利。

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ただし、1953年当時、BurroughsはとっくにMexicoに去っている。私小説とはいえ、時空はねじ曲がっている。1940年代のBeat Generationの日々がかなり反映されていると思った方がいい。

なお、BurroughsのJoan射殺事件は1951年だから、小説上ではJoanがモデルのJaneがすでに死んでいるのは、そこだけ変に時系列に忠実でおもしろい。

発表は1958年なのだが、小説の舞台となった1953年夏の直後にはKerouacはこの小説をもう書いていた。だが、その後何度も書き直しているため、その後の情報が混入しているのだ。

BurroughsがモデルのFrank Carmodyが北Africa出身になっているのも、1958年の発表当時BurroughsがTangierに住んでいたことが反映されているし。

参考:
・Wikipedia (English) > The Subterraneans (This page was last edited on 15 January 2019, at 02:21 (UTC).)
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Subterraneans
・David S. Willis/Beatdom > Christina Diamente/Walking With the Barefoot Beat: Alene Lee (Posted by David S. Wills on February 17, 2010)
http://www.beatdom.com/walking-with-the-barefoot-beat-alene-lee/

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なお、『THE SUBTERRANEANS(地下街の人びと)』は映画化されているのだが、その映画についてはのちのentryで触れる。

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(追記)@2019/04/20

しかし、「THE SUBTERRANEANS=地下街の人びと」という邦題はどうなんだろ。地下室の部屋に集まって、ウダウダする連中の話なんだが、地下街ではないよな。

2019年4月16日火曜日

KEROUAC & THE BEAT GENERATION (02) 『JACK'S BOOK(ケルアック)』

Kerouacの伝記はいくつもあるのだが、私が読んだのはこれだけ。

・バリー・ギフォード+ローレンス・リー・編著, 青山南+堤雅久+中俣真知子+古屋美登里・訳 (1998.1) 『ケルアック』. 542+xxiv pp. 毎日新聞社, 東京.


装幀 : 坂川事務所

← 英語原版 : Barry Gifford+Lawrence Lee (1978) JACK'S BOOK : AN ORAL BIOGRAPHY OF JACK KEROUAC. 339pp. St. Martin Press, NYC.

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この本はなぜか全然知られていないし、Amazonあたりの書評も全くない。不思議な本。

そもそも、1978年の本が20年後に翻訳されたのも謎だし、それを毎日新聞社が出したのもわからない。当時、日本で何かKerouac関連のeventってあったのかなあ?

・スティーブ・ターナー・著, 室矢憲治・訳 (1998.11) 『ジャック・ケルアック 放浪天使の歌』. 376pp. 河出書房新社, 東京.
← 英語原版 : Steve Turner (1996) ANGELHEADED HIPSTER : A LIFE OF JACK KEROUAC. Viking, NYC.

が出たのも同年だ。なんでかなあ?1997年にGinsbergとBurroughsが亡くなった影響はあるかもしれないな。

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全部で600ページ近くあるし、値段も3400円+税と高い。おそらく刷り部数も少なかったのだろう。毎日新聞社は、当時もすでに出版に熱心な新聞社ではなくなっていたし。

古本でも見かけたことがなかった。それで今回ようやく読んだわけ。

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Kerouacの人生を、友人たちの証言で追うdocumentary。1978年当時はまだ珍しかった「oral history」という手法だ。編著者の主観よりも、証言を重視している。観念的な話が少ないので、すごく読みやすい。

証言者ごとに訳者を割り振って、言い回しを統一しているのも面白い。

Burroughsの証言が3つしかないのは物足りないが、訳文はいかにもBurroughsらしいcoolな口調になっている。素晴らしい。Burroughsの映像なども参考にして訳文を作っていると思う。

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これを読むと、Kerouacはなかなか自分の本が出してもらえず、けっこう苦労したことがわかる。『ON THE ROAD』も出版されるまで10年くらいかかってる。

もちろん、その間何度も書き直していることも記述されており、「三週間で書いた」がハッタリであることもバレている。

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1957年に『ON THE ROAD』が出る頃には、その後に出る諸作もすでに書き終えていた。だから、この伝記も『ON THE ROAD』が出て大ヒット、その熱狂に巻き込まれるところで実質的に終わっている。

そのあとは、虚脱して酒に溺れていくKerouacの惨めな姿を見るしかない。読むのも辛い。Jaco Pastriusと似たところがあるね。「一度は大仕事を成し遂げた自分」との戦いだ。

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本書で一番長い章は「3 The Road(路上)」。これは『ON THE ROAD』の元ネタになった旅の日々を追う章。主人公はKerouacというよりNeal Cassady。Kerouacの影は薄い。

しかし、Nealが中心になる分、Nealとその女たちの話ばっかり。果てしなく続く痴話喧嘩にへきえき。(日本の)ヤンキーの身の上話を居酒屋で延々聞かされているような感じ。

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『ON THE ROAD』ではMarylouという名で登場するLu Anne Henderson(1930-2009)の証言もたくさんある。この人は、Nealが最初に結婚した娘で、結婚当時15歳。

写真を見るとなかなかカワイイ娘だ。一見小柄に見えるが、身長は170cm以上らしい。

だが、本書に見える言動を見ると、これが見事な「アーパー娘」。

Nealと離婚した後も、他の男と結婚した後も、Nealと関係を続け、2番めの妻Carolyn(『ON THE ROAD』ではCamille)を悩ませ続けた。

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こんなアーパー娘にも、評伝(というよりiinterview本)があるのだ。『ON THE ROAD』のご威光はすごいね。著者の片割れはLu Anneの娘さん。

・ジェラルド・ニコシア+アン・マリー・サントス・著, 堀江里美・訳 (2013.7) 『ガールズ・オン・ザ・ロード』. 253pp. 河出書房新社, 東京.


装丁 : 水戸部功

← 英語原版 : Gerald Nicosia+Ann Marie Santos (2011) ONE AND ONLY : THE UNTOLD STORY OF ON THE ROAD AND LU ANNE HENDERSON, THE WOMAN WHO STARTED JACK KEROUAC AND NEAL CASSADY ON THEIR JOURNEY. 244pp. Viva Editions, Berkeley (CA).

同書は、Nicosiaが1978年にLu Anneにinterviewした内容が中心。長らくお蔵入りとなっていたが、2011年にようやく陽の目を見た。

NicosiaにLu Anneの居所を教えたLarry Leeという人物は、『ケルアック』の著者の一人Lawrence Leeと同一人物。Nicosiaに先立ってLu Anneにinterviewし、『ケルアック』に収録したものとみられる。両証言は当然重複する内容が多い。

でも、このLu Anneの証言からですら、Kerouacらの旅の様子は至極楽しそうなのが伝わってくる。

だが、San FranciscoでNealが、金も尽きたLu AnneとKerouacを置き去りにして逃げて行った時には相当ショックだったらしく、interviewでは何度もこの話を繰り返し、恨みつらみをinterviewerにぶつける。どうもNealはLu Anneが邪魔で、Kerouacに押しつけようとしたらしい。クズ野郎ですね。

二人も危うく出来上がりそうだったのだが、Kerouacはどっと落ち込んで動きもせず。結局、母親から送金してもらって、バスでNYCに帰った。この辺のKerouacのダメっぷりは自著ではあまり描かれないところ。

後半は、Nealの親友Al Hinkle(『ON THE ROAD』ではEd Dunkel)への取材を再構成したもの、そしてLu Anneの娘Ann Marie Santosによる母の回想。

この本は、Lu Anneを肯定的に描くことに努めているのだが、まあ話半分で・・・。

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『ケルアック』に戻って・・・

初めて知っておもしろかったのは、BurroughsとNealは相性が悪かったらしいこと。確かにBurroughsの口からNeal Cassadyの話が出てくることはない。

BurroughsがLouisiana州Algiersで暮らしていた1949年に、Kerouac、Neal一行がBurroughs宅を訪れるが、その際にも二人は互いを避けていたようだ。

確かに、躁病のスケコマシ+歩く陽物Nealと、陰鬱な学者肌Burroughsが合うとは思えない。それでも両者は、一緒くたにBeat Generationとしてくくられているんだからおもしろい。

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Kerouacの自著や既存の情報ではあまり明らかにされていない、Keouacの同性愛やdrugとの関わりがいろいろ出てきているのも面白いところ。

Kerouacは基本heterosexalだったが、どうもNealとは同性愛関係にあったようだ。限定的bisexual。ただし、肉体関係にはそれほど深入りしてはいなかったようで、「Kerouacはheterosexualだよ」と断言する人も多い。

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KerouacはBenzedrine(覚醒剤の一種、当時は合法)を多用しながら一気に『ON THE ROAD』や『THE SUBTERRANEAN』を書き上げた、という神話は有名。ただしこれは多分にハッタリが入っている。

確かに、果てしなく続くスピード感は、upper系drugの力を強く感じる。だが、あのスピード感はKerouacがもともと持っていた資質でもあり、drugはそれをちょっと助けた程度ではないか。

Marijuanaは結構やっていたようだ。Kerouacのあのダラダラ文体は、marijuanaで止めどなく湧いてくるimageによるもの、という説もある。

しかし、Kerouacはdrugよりも酒の人だ。この本でも最後はKerouacのアル中episodeであふれている。人集めが好きだったKerouacにとっては、自分の中に閉じこもるdrugよりは、やっぱり酒だったのだろう。

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本書は読み物としてもおもしろいのだが、巻末の「Kerouac小説の登場人物名-実在の人物名」対照表、Keouac著作リスト(ご丁寧に、執筆年、発表年、小説のモデルとなっている年が並べてある)、索引などの資料も充実。これを使って何か書くには最適な、Beat Generation資料集でもある。

この証言集・評伝が埋もれたままなのはもったいない。文庫化してほしい。でも無理かなあ。大部すぎる。

これから、Kerouac & The Beat Generationの話が延々続くのだが、折々でこの『ケルアック』からのネタも投入していくことにしよう。

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(追記)@2019/04/16

『ON THE ROAD』が大ヒットし、登場人物は仮名だったものの、Dean MoriartyのモデルがNeal Cassadyであることは、世間にはバレバレだった。

おかげでNealはすっかり警察にマークされ、1958年にはmarijuana不法所持・売買で逮捕。2年間の獄中生活を送る羽目になった。

ちょっとかわいそうでもあるが、自業自得の面が大きいので、さして同情はできない。

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(追記)@2019/04/17

青字を追記した。

2019年4月12日金曜日

KEROUAC & THE BEAT GENERATION (01) Jack Kerouac 『ON THE ROAD(オン・ザ・ロード/路上)』

Jack Kerouac(1922-1969)はUSAの小説家。Allen Ginsberg、Willam S. Burroughsと共にBeat Generation=Beatnikという文学グループを形成していたとされる。

とはいえ、この三人はそれぞれ芸風が全く違う。この三人は、単に若い頃一緒につるんでいた仲間たちで、それが同じ頃に評価され始めたため、一緒くたにされているだけ。

しかしながら彼らは、WWII直後という時代に、進路も定まらずブラブラしているという、今でいうmoratoriumを体現していた。1960年代以降はごくありふれた風景である、「ダラダラ若者文化」の範となった連中なのだ。

そういったBeatnikたちは、確かにある程度同じグループにくくれる面はある。

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Kerouacの小説は10冊以上邦訳されているが、

・ジャック・ケルアック・著, 青山南・訳 (2010.6) 『オン・ザ・ロード』(河出文庫). 524pp. 河出書房新社, 東京.


カバー装画 : 下田昌克, カバーデザイン : 緒方修一

← 原版 : (2007.11) (池澤夏樹・編 世界文学全集1-01). 河出書房新社, 東京.
← 英語原版 : Jack Kerouac (1957) ON THE ROAD. 310pp. Viking Press, NYC.

にとどめを刺す。というより、これ一冊読んでおけば十分、というKerouacの代表作だ。

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なお、上掲書は新訳で、旧訳として、

・ジャック・ケルアック・著, 福田実・訳 (1959.10) 『路上』(世界新文学双書). 河出書房新社, 東京.
→ 再発 : (1970.8) (モダン・クラシックス)/(1977.10)(世界海外小説選)/(1983.2) (河出文庫) いずれも河出書房新社, 東京.

もある。お好きな方をどうぞ。

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『ON THE ROAD』は、Kerouacの分身であるSal Paradiseが、ヒッチハイク、バス、自家用車などでUSAを数度に渡り横断した際の、いわば旅行記だ。

BackpackersのBibleとも言われ、日本でも1960~70年代にUSAを横断する旅行スタイルが結構流行った。

しかし、行き先がAsia中心に変わった1980年代以降のbackpackersにとっては、「これがbackpackersのBible」と言われても、ピンと来ないのではないだろうか?

でも、いわゆる大上段に振りかぶったテーマ性もなく、あちこちを無軌道にうろつく旅行スタイルは、確かにbackpeckerの祖と言えよう。

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Salは自発的に旅立つときもあるが、旅の原動力となっているのは、友人Dean Moriarty。

こいつは、周囲を振り回すタイプのいわゆるmood makerで、なおかつtrouble maker。押しが非常に強く、ハッタリ屋でもある。一見とても魅力的な人物なので、色んな連中がこいつに引っかかる。

ところが、こいつは全くの無責任野郎で、あちこちに女を作ってはそれぞれにテキトーな事を言って回る男。しょっちゅう自分で自分を窮地に陥れるような奴だ。

自分の周囲には、いてほしくないタイプだなあ。いや、実際いたことがあるのだが、当然へきえきしたよ(笑)。

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このDean Moriartyにも実在のモデルがいる。それがNeal Cassady(1926-1968)。

こいつは、『ON THE ROAD』のMoriartyそのままの生き様だったらしい。Beatnikの連中には大きな影響を与えたようだが、自分は特に作品らしきものを残していない。まさにHippie Generationの元祖だ。

ちなみにNealの最期は野垂れ死に。

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小説では、Salは比較的受動的でおとなしい人物像だが、Kerouac自身はもう少し積極的に動く人物だったように思える。

思うに、Dean Moriartyの人物像にはCassadyだけではなく、実際は作者Kerouacの性格も入ってるような気がした。Moriartyに激しい性格を吸い取られてしまったKerouacの、残りの部分であるSalがおとなしく見えるは当然だろう。

Moriarty/Cassadyもそうなんだが、Kerouacもそれに負けず劣らずカッコつけだ。文体にしても、fashionにしてもそれが伺える。

やはり偉大なるカッコつけである、佐野元春あたりがKerouacを持ち上げるのもよく理解できる。

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しかしこの『ON THE ROAD』は、とにかくスイスイ読める。物語も淀みなく進んでいくし、一箇所に滞在中も休みなく動き回っている。若者の文学なのは間違いない。

Kerouacは、この小説を「三週間で書いた」と言っていたらしいが、思わず納得してしまうほど、小説にはスピード感がある。

しかし、実際は何年もかけて何度も書き直していたことが明らかになっているし、やっぱりKerouacはハッタリの人なのだ。

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他にもAllen GinsbergはCarlo Marxとして、そしてBurroughsはOld Bull Leeとして登場する。

Leeは第2部、Moriarty+SalがNew OrleansのLeeの家に数日滞在する場面に登場するだけだが、毎日heroineを打ってるし、coolでシニカルだし、子供へも愛情薄いし、会話の端々に小話(Routine)が挟まるし、まさにBurroughsそのままだ(笑)。

おもしろいのは、猫好きであることを明言していること。THE CAT INSIDEを書いたように、Burroughsは晩年すっかり猫派になるのだが、実は若い時から猫派だったのだ。

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必ずしも自分の好みではないのだが、ストレスなく楽しく読むことができた小説だ。1970年以降の「ダラダラ若者文化」が大好きな自分にとって、水が染み込むようによく理解できるのだ。

この「ダラダラ若者文化」は、薄まりながら、形を変えながら、今も続いているのだが、その1960年代的展開であるHippie文化の隆盛を横目で見つつ、Kerouacはアル中で死んでしまった。

片や、そこからは距離を置いて、孤高の存在となっていたBurroughsは、junkyのくせに83歳まで長生きした。これは一体なんだろうなあ・・・。

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(追記)@2019/04/12

ちなみにHippieとは、「Hipsterきどりの小僧」という意味だ。Hippie文化を生んだのがBeat Generationであることは、これからも明らか。

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(追記)@2019/04/12

草稿versionも刊行されている。

・ジャック・ケルアック・著, 青山南・訳 (2010.6) 『スクロール版 オン・ザ・ロード』. 543pp. 河出書房新社, 東京.


(from Amazon.co.jp)

← 英語原版 : Jack Kerouac, Howard Cunnell (ed) (2007) ON THE ROAD : THE ORIGINAL SCROLL. 408pp. Viking, NYC.

登場人物を実名に戻し、削除箇所を回復。そして章分けはもとより、段落もなくしたversionだ。ダラ書きKerouacの真骨頂。

自分は・・・もういいな・・・。高いし、そこまでKerouacマニアではないのだ、実は。

2019年4月8日月曜日

BURROUGHS WITH MUSIC (108) William S. Burroughs+tomandandy/Old Western Movies(KEROUAC KICKS JOY DARKNESS)

ここでJack Kerouac Tribute作品の登場だ。

KEROUAC KICKS JOY DARKNESS (Japanese Edition) [Rykodisc Japan] release 1997


Package Design : Barbara Longo

various date, various place, Jim Sampas (prod)

1-01. Morphine/Kerouac
1-02. Lydia Lunch/Bowery Blues
1-03. Michael Stipe/My Gang
1-04. Steven Tyler/Dream : "Us Kids Swim Off A Gray Pier…"
1-05. Hunter S. Thompson/Letter to William S. Burroughs & Ode to Jack
1-06. Maggie Estep & The Spitters/Skid Row Wine
1-07. Richard Lewis/America's New Trinity of Love : Dean, Brando, Presley
1-08. Lawrence Ferlinghetti & Helium/Dream : "On A Sunny Afternoon..."
1-09. Jack Kerouac & Joe Strummer/MacDougal Street Blues
1-10. Allen Ginsberg/Brooklyn Bridge Blues (Choruses 1-9)
1-11. Eddie Vedder, Campbell 2000 & Sadie 7/Hymn
1-12. William S. Burroughs & tomandandy/Old Western Movies
1-13. Juliana Hatfield/Silly Goofball Pomes
1-14. John Cale/The Moon
1-15. Johnny Depp & Come/"Madroad Driving..."
1-16. Robert Hunter/"Have You Ever Seen Anyone like Cody Pomeray?..."
1-17. Lee Ranaldo & Dana Colley/Letter to John Clellon Holmes
1-18. Anna Domino/Pome On Doctor Sax
1-19. Rob Buck & Danny Chauvin/Mexico Rooftop
1-20. Patti Smith with Thurston Moore & Lenny Kaye/The Last Hotel
1-21. Warren Zevon & Michael Wolff/Running Through – Chinese Poem Song
1-22. Jim Carroll With Lee Ranaldo, Lenny Kaye & Anton Sanco/Woman
1-23. Matt Dillon with Joey Altruda, Joe Gonzalez & Pablo Calogero/Mexican Loneliness

2-01. United Future Organization/Poetry and All That Jazz
2-02. Graham, Parker & David Amram/Unpublished Journals 1949-1950
2-03. Matt Dillon/The Thrashing Doves
2-04. Inger Lorre & Jeff Buckley/Angel Mine
2-05. Lydia Lunch/How to Meditate & Mexican Loneliness
2-06. Eric Anderson/Brooklyn Bridge Blues (Chorus 10)
2-07. Anna Domino/Pome on Doctor Sax (Unedited Version)

青字は日本盤のみ)

OriginalはCD1枚ものだが、ここで紹介する日本盤は2枚組になっているので注意。

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作家Jack Kerouac(1922-1969)のtribute compilation。大半がKerouacの詩の朗読(+音楽も)。

Allen Ginsberg、BurroughsといったBeatnikの仲間たちはもちろんのこと、豪華musiciansが大挙参加。Joe Strummer、John Cale、Patti Smith、Warren Zevon、David Amram、それから前回紹介したR.E.M.のMichael Stipeもいるぞ。Juliana Hatfieldのかわいい声にもヤラレタ!

Johnny Depp(この後、映画THE SOURCE(ビートニク)(1999)でKerouacを演じることになる)、Matt Dillonといった俳優陣もいる。かなり豪華なalbumだ。

Burroughsと違って、Kerouacの小説/essaysはストレートだから、本albumもそんなにひねくれたところはない。まさに1950年代の青春模様だ。

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本作で取り上げられているのは、死後発表された詩集

・Jack Kerouac (1992) POMES ALL SIZES (The Pocket Poets Series, no.48). x+175pp. City Lights Books, San Francisco.

からの詩と、未発表だった詩が多い。

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さて、Burroughsだが、朗読しているのはやはりKerouacの詩。

unknown date, NYC
William S. Burroughs (vo), tomandandy (Tom Hajdu+Andy Milburn) (kb), Gil Goldstein (acc), James Leibow (g), John Patitucci (b), John Arucci (perc), Bashiri Johnson (perc)
1-12. William S. Burroughs & tomandandy/Old Western Movies

同録ではないだろう。また、Burroughs録音地はLawrence, Kansasの可能性が高い。

Backをつけるのは、USAの映画・TV・games音楽を制作する二人組unit、tomandandy。よって当然、本作も映画音楽的だ。

Gil Goldstein、John Patitucciといった一流Jazz Musiciansの名前も目につく。

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Old Western Movies

A Jedge in the West comin from the South with ruby sideburns, boy –
Always usin flowery languij –
The grim fightin hero's troubles are always private –
He wants to know where "I fit in" in herd wars –
Sometimes you see villains so ancient you saw them in infancy exaggerating in snow
their mustaches looking older than yr father's grave –
"Thanks Marshall" – "I reckon" -- I guess I better run on back to Whiskey Row, Colorada & marry an old Tim McCoy Gal or turn off the tele vision, one –

-- You gotta go a long way in the West to find a good man –
So close the book,
The Courier, run by Steve, is a paper wearing a sunbonnet
Drive the cattle thru that silver wall, help ladies to their hearse, mouth in the sun
That oughta do till Mexican Drygulcher finds Redwing in the Shack
And Kwakiutls menstruate
Old Horses' necks by broken fences guns gone rust
I guess the gang got shot.

Kid Dream
Hid
In the leaves

April 1958, Northport

from Booklet of KEROUAC KICKS JOY DARKNESS (Japanese Edition) [Rykodisc Japan] release 1997
← Original : Jack Kerouac (1992) POMES ALL SIZES.

オールド・ウェスタン・ムーヴィーズ

南部から西部へとやってきた一人の判事 そのもみあげはルビー色、おやまあ –
いつでもやたらと流暢な喋り方 –
厳しい顔つきの闘う英雄の悩みごとはいつでも内に秘められたまま –
群同士の抗争の中で"私がどことウマがあっている"のか彼は知りたがっている –
うんと昔の悪党どもにためにお目にかかることもある まだ幼かった頃に見かけたこともある ほら話でやたらと自分を大物に見せていた輩たち
やつらが口ひげをのばし始めたのは 父親の墓ができたよりももっと前のことだったように思える –
「ありがとよ、マーシャル」 -- 「わたしが思うに」 -- どうやらわたしはコロラダのウィスキー街へと逃げ戻った方がよさそうだ そして古くから知っているあのティム・マッコイの娘と結婚するか それともテレビを消してしまうか、ひとつ –

-- いい男を見つけだそうと思ったら 西部中をうんと歩きまわらなきゃだめさ –
だから本を閉じて
スティーヴが経営しているザ・クーリアは新聞 つばの広い日よけ帽を被り
虫けらどもを銀色の壁の中へと叩き込む 貴婦人たちの手を取って彼女たちの棺へと導き いったい何を喋るのかとみんなの注目の的
メキシコ人の裏切り者が掘っ立て小屋の中のハゴロモガラスを見つけ出す前には 実行に移さなければならない
そしてクワキュートル族の人たちは月経がある
壊れたフェンスのそばで時代を経た幾つもの馬の首 銃も錆びついてしまった
思うに悪党の一味は撃ち殺されてしまったのだろう

ガキの夢は
隠した
木の葉の中に

1958年4月 ノースポート

from 中川五郎・訳, Booklet of KEROUAC KICKS JOY DARKNESS (Japanese Edition) [Rykodisc Japan] release 1997
赤字は訳文がない箇所を補足)

和訳を提供している中川五郎(1949-)は、Folk Singer - Song Writer/翻訳家/音楽評論家。

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古い西部劇映画の場面を、断片的に散らした詩。Kerouac流cut-upとも言えよう。ずいぶんnostalgicな内容だ。晩年のBurroughsが朗読するにふさわしい。

Burroughsは死の1年ほど前で、もう元気がない。ゆえに、このnostalgicな詩には、合いすぎるくらい合っている。Producerの卓見ですな。しかし、ちょっと寂しい気持ちになる。・・・のは、思う壺にはまっているということだけど・・・。

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Burroughsシリーズはまだまだ続くのだが(ホントいつ終わるんだ?)、その前にちょっと(と言っても二十数回あるが・・・)KerouacとBeat Generationに寄り道しておこう。

2019年4月4日木曜日

BURROUGHS WITH MUSIC (107) William S. Burroughs+R.E.M./Star Me Kitten(SONGS IN THE KEY OF X)

またもやBurroughsマニアに請われて、変なところに引っ張りだされる。今回はR.E.M.のMichael Stipe。こいつもgayだ。

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SONGS IN THE KEY OF X [WarnerBros.] release 1996


Illustration : Sue Coe, Design : Katherine Delaney

unknown date, various places, David Was (prod)

01. Mark Snow/X-Files Theme (Main Title)
02. Soul Coughing/Unmarked Helicopter
03. Sheryl Crow/On the Outside
04. Foo Fighters/Down in the Park
05. William S. Burroughs & R.E.M./Star Me Kitten
06. Nick Cave and the Bad Seeds/Red Night Hand
07. Filter/Thanks Bro
08. Frank Black/Man of Steel
09. Meat Puppets/Unexplained
10. Danzig/Deep
11. Screamin' Jay Hawkins/Frenzy
12. Elvis Costero with Brian Eno/My Dear Life
13. Rob Zombie & Alice Cooper/Hands of Death (Burn Baby Burn)
14. P.M.Dawn/If You Never Say Goodbye
15. X Files Theme (P.M.Dawn Remix)

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これはFox TVの人気TVドラマThe X-Files(1993~2002放映)にinspirationを受けて制作されたcompilation album。

ProducerはWas (Not Was)の片割れDavid Was。

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前半は知らないmusiciansが多いが、Screamin' Jay Hawkinsが出てくるあたりから風向きが変わり、Elvis Costero、Brian Eno、Alice Cooperだのと豪華な顔ぶれになる。「なんで、あんたらこんな所に?」という人たちばかりだが(笑)。

私はThe X-Filesを見たことがないので、本albumの内容がどの程度ドラマに則したものか知らない。が、どうも大半は新作らしい。みんなThe X-Filesのファンだったのかもしれないな。

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Burroughs参加曲はThe X-Filesとは関係なさそうなので、なんでこんなとこに入ってるのか?そして、なぜBurroughsなのか全くわからない。

R.E.M.はWarner Bros.と契約しており、無理やり参加させられたのかな?「新作は面倒だし、旧作の再録でいいんじゃね?いい機会だからBurroughsと共演したい、そうだそれで行こう!Warner Bros.ならそれくらいの金出してくれるだろう」てなところじゃないかと思う。

それにしても、いろんなところにホイホイ出てくるなあ、Burroughsは。

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この曲はもともと

R.E.M./AUTOMATIC FOR THE PEOPLE [Warner Bros.] release 1992


Art Direction & Design : Tom Recchion & Michael Stipe

収録曲。このカラオケをそのまま流用し、そこにBurroughsの歌、というよりつぶやきを乗せている。

牧歌的な曲で、Burroughsらしくはないんだが、詞もmelodyもギスギスしたものが多いBurroughs作品に、こういうのが1つくらいあってもいいだろう。

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ca.1996, unknown place
William S. Burroughs (vo), R.E.M. (music)
05. William S. Burroughs & R.E.M./Star Me Kitten

Alright, just something I picked up. A knack of going along with someone else's song. Puttin' myself into it, it belongs to Lili Marleen. Marlene Dietrich, not one of my favorite people, but that's where it came from

Keys cut, three for the price of one
Nothing's free, but guaranteed for a lifetime's use
I've changed the locks, and you can't have one

You, you know the other two
The brakes have worn so thin that you could hear
I hear them screeching through the door from our driveway

Hey, love, look into your glove-box heart
What is there for me inside, this love is tired
I've changed the locks, have I misplaced you?

Have we lost our minds?
Will this never end?
It could depend on your take

You, me, we used to be on fire

If keys are all that stand between
Can I throw in the ring?
No gasoline, just fuck me, kitten

You are wild
And I'm in your possession
Nothing's free, so fuck me, kitten

Just fuck me, kitten
You are wild
I'm in your possession
Nothing's free, so fuck me, kitten

参考:
・GENIUS > VERIFIED ARTISTS > W > William S Burroughs > Featured > Show all songs by William S. Burroughs > Star Me Kitten (Featuring W.S. Burroughs) R.E.M.(as of 2018/04/25)
https://genius.com/Rem-star-me-kitten-featuring-ws-burroughs-lyrics

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前口上で、突然歌い出すBurroughsに驚きだ。本編はmelodyなしの語りになってしまうが。

このalbumの発売は1996年。実際の録音がいつかはわからないが、1996年からさほど前ではないだろう。Burroughsは1997年に亡くなるので、もうホントに最晩年だ。

それにしては声はまだしっかりしてる。だいたいBurroughsはThe X-Filesを見ていたんだろうか?情報は何もないが、James Grauerholzの差し金に従っただけなのかも・・・。

まあ、ちょっとした珍品ではある。