本エントリーは
stod phyogs 2014年9月23日火曜日 音盤テルトン(6) George Coleman Octet-その2
からの移籍です。日付は初出と同じです。
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さて、George Coleman OctetのAir Checkとは、
George Coleman – Billy Higgins Octet/PORI JAZZ FESTIVAL 1980 [EBU→NHK-FM]
1980/07/11or12, Pori, Finland
Danny Moore (tp,flh), Frank Strozier (as), George Coleman (ts), Sal Nistico (ts), Mario Rivera (bs), Harold Mabern (p), Clint Houston (b), Billy Higgins (ds)
01. Big George
02. A Few Miles from Memphis
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北欧Finlandの南端PoriでのJazz Festivalのライブです。
1977年との大きな違いは、bとdsが入れ替わっていること。ヘヴィーなファンク・リズムが得意なIdris Muhammadから軽快なBilly Higginsへの変更は正解。速吹き、速弾きを得意とするColeman – MabernにはHigginsの方が合っている。曲がよりサクサク進むようになった。
そしてHoustonも超速弾きベーシストですから、その推進力は絶大。この快速リズムセクションに乗って、Colemanはじめソロイストは皆飛ばしまくり。
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1曲目が14分、2曲目が15分という長尺2曲。凄い演奏が続きます。Catalyst盤もPye盤もTheresa盤もいいんだけど、自分にとってはこれがGeorge Colemanの最高傑作。
1曲目はおなじみのBig George(作曲はShirley Scott)。
Catalyst盤からは一層テンポアップ。それほど凝ったアレンジではないにしろ、アンサンブルも一段とこなれてきた。一糸乱れぬとはこのこと。Colemanの統率力が光る。
テーマに続いては当然Colemanのソロ。これが圧倒的。アドリブに迷い・淀みが一瞬たりともない。展開もヴァラエティに富んでいて飽きることがない。循環奏法とフラジオを組み合わせるなど、テクニックの限りを尽くします。
それでいてソロは4分間と意外にコンパクトにまとまっている。高密度のソロで、満足度も高いぞ。
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1979年頃George Colemanバンドの番頭格だったHilton Ruiz談「ジャズ界で最も創造的な演奏をしているのはGeorge Colemanだ」
これは、
・ジャズ批評 特集・多様化するジャズ-自分のジャズを見つけよう-. no.37[1981/01]
に載っていたインタビューだったと思う(今は手元にないのでうろ覚え)。
当時はまだGeorge ColemanもHilton Ruizもほとんど知らなかったので、全くピンとこない発言だった。
上記ライブ録音を聴いたのはその後すぐ。これに続いて
George Coleman/LIVE ! [Pye] 1979(通称Ronnie Scott's)
も聴いた。それで「ああ、Hilton Ruizが言っていたのはこういうことだったのか」と納得。
本盤については、Hilton Ruizのお話の時に改めて取り上げましょう。
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さらに、David Sanbornからは「Master of Saxophone」とまで呼ばれています。SanbornはかつてColemanのサックス教室の生徒でした。
私は聴いたことがありませんが、ライブ・リポートによれば、直接Colemanのステージを聴いた人はその音圧、テクニックに一様に驚いています。
とにかく過小評価とは、この人のためにある言葉。
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George Colemanの音色というのは、高音を多用するのが特徴。その意味ではColtraneと似ています。MilesバンドへもColtraneの推薦だったよう。
Coltraneの高音多用は、一時期親分だったJohnny Hodgesの影響があるのでは?と見ているが、George Colemanの高音多用はどの辺から来たんだろう?Lester Young~Stan Getzの系譜かなあ?印象はかなり違うけど(注1)。
George Colemanの音色は硬質です。その辺はマウスピースによるものなのかはよく知らない。George ColemanのマウスピースはメタルのOtto Link 7だそうです(本人のWebsiteより)。この硬質感はJoe Hendersonに近いかも。
いずれにしても、高音、硬質、最高のタンギング、ビッグ・トーンで、急速調の曲を淀みなく吹く続けるのですから、圧倒されないわけがないのです(ただし録音にはあまり凄さが刻まれていない)。
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ここでようやく演奏の方に戻ります。
1曲目Big Georgeのソロ回しは、
Theme→GC(ts)→BH(ds)→Theme→ClH(b)→Theme→HM(p)→Theme
ソロの間やバックに挟まるテーマやアンサンブルがカッコイイ。この辺は、ソロでは全く出番がないSal Nisticoの貢献もあるのではないかと見ているのだがどうか?(注2)
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Billy Higginsのソロは短い。
1970年代以降のHigginsのドラム・ソロは、もうマンネリが著しい。本人も自覚しているのか、ここでは手短に終わります。バックに回った時の推進力はさすがだが。
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Themeを挟んで、次はClint Houston(b)の番。Colemanのソロも驚きだが、Houstonのソロはそれに輪をかけてすごい!
だいたいバックに回っているときですら、まともに4ビートを刻まず、倍速ですっ飛ばす人。ドライブ感が物凄い。
超速弾きなのにテンポもピッチも正確だし、聞いていて気持ちいい。とにかく驚きのソロ。
この人が参加した名盤には、
John Hicks/HELLS BELLS [Strata East] 1975
Joe Bonner/TRIANGLE [WhyNot] 1975
Joanne Brackeen/NEW TRUE ILLUSIONS [Timeless] 1976
Woody Shaw/STEPPING STONES : LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD [Columbia] 1978
などがあり、どれも驚愕のテクニックを聞かせてくれます。しかし、なぜか知名度はきわめて低い。
リーダー作として、
Clint Houston/WATERSHIP DOWN [Trio→Storyville] 1978
Clint Houston/INSIDE THE PLAIN OF THE ELLIPTIC [Timeless] 1979
というのもありますが、こちらも話題になることはありませんでした。
内容が端正というか、ホンワカすぎ。本人は、アルバムの内容通り温厚な人だったらしい。実力は充分なのですが、アクの強いジャズ界では押しが足りなかったのかもしれません。
速弾きベーシストはScott LaFaro以来たくさん出ましたが、その中では一番好きな人です。
残念ながら2000年にひっそり亡くなられています。Clint Houstonについてはいずれまとめて取り上げるつもり。
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最後を締めるのはHarold Mabern(p)。
この人もキャリアは長く、1960年代にリーダー作も数枚出しています。
しかしブレイクするのは、傑作
Harold Mabern/STRAIGHT STREET [DIW→Columbia] 1989
から。その後はDIWやVenusからリーダー作連発+Eric Alexander(注3)の後見人として大活躍なのはご存知の通り。
ここでは快調そのもののソロ。しかし、1990年代の自信たっぷりの爆走にはまだ到達していない。爆発前夜のMabernの姿です。
前述のとおり、George Colemanとは付き合いが長いだけあって、二人の共演作は多い。
George Coleman/MANHATTAN PANORAMA [Theresa→Evidence] 1985
George Coleman/AT YOSHI'S [Theresa→Evidence] 1989
あたりは名盤といっていいでしょう。日本盤などは出ていない無名作だけど。
2曲目は次回。
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(注1)
ColtraneやGeorge Colemanの後、1950年代後半Eddie Harrisという人が出て来ます。やはり高音多用派ですが、音色はかなりフニャフニャ。
この音でファンクを演奏するので、ジャズ・ファンからは軽く見られていますが、その影響力は意外に大きいと見ているのですがどうでしょう。Charles LloydやBranford Marsalis、Joshua Redmanの音にはEddie Harrisの影がありありと見て取れます。
(注2)
Sal Nisticoは、Woody Herman Orch.やCount Basie Orch.の重鎮。テナー奏者としては地味な実力者といった立ち位置。アレンジャーとしてもたいへん有能な人でもある。George Coleman Octetでのソロは残念ながらYouTubeで1曲聴いたことがあるだけ。
(注3)
実はこのEric Alexanderが最もGeorge Colemanに似たテナーを吹く。そのテクニックは今やColemanを越えつつあるかもしれない。本人も常々Colemanへの尊敬の言葉を述べ続けている。
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