2017年5月3日水曜日

Nana Vasconcelos/SAUDADES

Nana Vasconcelos(1944~2016)はBrazilのpercussionist。Milton Nascimentoなどとの共演からUSAに進出するようになり、Jazzとも関わりは深くなった。

Pat Methenyとの共演、Brazilでも異色のミュージシャンEgberto Gismontiとのコラボなど、Brazilの、特に野性的なテイストを欲しがるミュージシャンに引っ張り凧だった。

自分としては、Colin Walcott (sitar)、Don Cherry (tp)とのグループCODONAの3作が印象的だった。ECMならではの組み合わせとサウンド。

惜しくも、来日直前2016年3月に亡くなった(享年71歳)。

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Nana Vasconcelos/SAUDADES [ECM] rec.1979, pub.1980


Cover Design : Horst Moser

1979/03, Ludwigsburg, West Germany

NV (berimbau, perc, vo), Radio Symphony Orchestra Stuttgart (strings), Martin Gutesha (cond), Egberto Gismonti (strings comp)
01. O Berimbau 「おお、ビリンバウよ」
02. Vozes (Saudades) 「声(郷愁)」
03. Ondas (Na óhlos de Petronila) 「波浪(ペトロニラの中心で)」

NV (perc), EG (g)
04. Cego Aderaldo 「盲人アデラルド」

NV (berimbau)
05. Dado 「所与」

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01. O Berimbau 「おお、ビリンバウよ」

18分の大作。タイトル通り、Nanaのberimbauが主役。

Berimbauとは、弓(状にしならせた棒に弦を張ったもの)を楽器にしたもの。弦は針金。下にひょうたんがついている。主に弦を棒切れで叩いて音を出す。音程はほとんど出せないので、打楽器である。ひょうたんは主に共鳴用。詳しくはこちらを↓

参考:
・Wikipedia (English) > Berimbau(This page was last modified on 25 April 2017, at 04:05)
https://en.wikipedia.org/wiki/Berimbau
・BÊ-A-BÁ DO BERIMBAU/ビリンバウ入門(as of 2017/05/03)
http://www.urucungo.org/

Cubaにもあり、Africa起源とみられている。Celia Cruzのヒット曲にもBerinbauというのがあるくらい。

さて、この曲は、Nanaのberimbau独奏が中心。これに時おり、ジャングルの鳥か猿のような雄叫びを交える。シャカシャカした音が交じるのは、caxixi(カシーシー、小ぶりのマラカスみたいな楽器)を同時に振っていると思われる。

かと思うとNanaの演奏の切れ目には、シンフォニーがからむという変な曲だ。シンフォニー部はすべてEgberto Gismontiの作曲。

このあたりがECMらしいところで、好き嫌いも分かれるところだろう。しかし、弦楽シンフォニーをEuropeの民族音楽ととらえて聴くと、がぜん面白くなるから不思議。Africa-Brazil文化とEurope文化のミスマッチだ。

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02. Vozes (Saudades) 「声(郷愁)」

さあ、このアルバム最大の聴きどころは実はこの曲。

Nanaの歌というか声が多重録音で繰り広げられるので、「voze(声)」が複数形なのはわかるとしても、「saudade(サウダージ/郷愁)」が複数形である理由はよくわからない。

そのへんは、ポルトガル語としてもいろいろむずかしいところで、どっちでもいい、という説もある。

とにかくこの多重録音がスゴイ。

「ダゥンダダダーイ」というNanaの声が、多重録音で繰り返されるのだが、これがルーズなカノンになっていて絶妙。後になるほど重ねがどんどん増えて、だんだんカオス状態となる。

途中からは、シンフォニーがこれと全く無関係のごとく、静かに奏でられる。何これ?

Nanaの声は、最後はうがいみたいなになり、「ああーああああっ!」でクライマックスを迎える。わー、なんだこれは!

この曲を初めて聞いたのは、実はNHK-FM。意外なことに渋谷陽一の番組であった。

なんでまた渋谷陽一がこんな曲を紹介したのか謎だが、聴いた人はみな衝撃を受ける曲なのは間違いない。

私も腰抜かして、翌日レコードを買いに行きましたよ。

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03. Ondas (Na óhlos de Petronila) 「波浪(ペトロニラの中心で)」

PetronilaはUSA Texas州にそういう町があり、海から2kmほどのところにあるが、そこのことなのかどうか、わからない(他にもスペイン語・ポルトガル語圏のあちこちにある)。Petrolinaならば、Brazilの海沿いの町なんだけどなあ・・・。

congaとtablaのソロ(多重録音)に、Nanaの声とシンフォニーがかぶさる。この曲が一番Nanaとシンフォニーが融合してるかな(他はミスマッチの域を出ていない)。

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04. Cego Aderaldo 「盲人アデラルド」

この曲はシンフォニーではなく、Egberto Gismontiのギターとのデュオになる。作曲はGismonti。

盲人アデラルドというのは、Brazilの詩人(+弾き語り?)Aderaldo Ferreira de Araújo(1878~1967)のこと。Brazilでは有名らしい。

主役はGismontiのアコースティック・ギター。これにやはりNanaのcongaとtablaがからむ。サビのパッセージが美しい。

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05. Dado 「所与」

これはNanaのberimbauソロ。「所与」は論理学や哲学の用語なんだが、Nanaがつけたタイトルとは思えない。

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全部聴くと、結構冗長に感じるかもしれないが、Vozesだけでも一度聴いてほしい。ECMのクリアな音質で聴くberimbauの生々しい音も聴きどころだ。

1970年代後半~1980年代前半、ECMはこういう(いわゆるクロスオーバー/フュージョンではない)クラシック+Jazz/ブラック・ミュージックのフュージョン・ミュージックをたくさん作っていて面白かったな。

CODONAもECMらしい変な音楽だったなあ。過去3枚のBoxセットも出ているようだし、CODONAも一度紹介したいところ。

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