2017年1月28日土曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(2) MONK'S MUSIC

Coltraneを加えたMonk 4は、1957年7~12月にかけてFive Spotに連続出演し、大評判となるのだが、残念ながらその録音は残されていない(とされている)。

そのため、Monk+Coltraneについては、Riversideに残されたわずかな録音をもとに、ファンは脳内でFive Spotの演奏を再構成して想像するしかなかった。

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その残されたわずかな録音のうち1枚目はこれ↓

Thelonious Monk Septet/MONK'S MUSIC [Riverside(ビクター)] rec.1957, re-issue 1996


















Cover Design : Paul Bacon

1957/06/26, NYC
Ray Copeland (tp), Gigi Gryce (as), Coleman Hawkins (ts), John Coltrane (ts), TM (p), Wilbur Ware (b), Art Blakey (ds)

01. Abide with Me (RC+GG+CH+JC)
02. Well You Needn't
03. Ruby, My Dear (CH+TM+WW+AB)
04. Off Minor
05. Epistrophy
06. Crepuscule with Nellie
07. Off Minor (alternate take) *
08. Crepuscule with Nellie (alternate take) *

* Additional track on re-issue

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Hawkinsとの再会に、Coltraneを加え、1955年にSavoy盤で共演したGigi Gryceも持って来てSeptetでの録音。盛り込み過ぎだよ。特にtsを2本も置く、というのは異常だ。

案の定リハーサルが十分でなかったらしく、MonkもHawkinsもColtraneもBlakeyもトチりまくり。これはこれでものすごくおもしろいが・・・。

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Monkが作り出すアンサンブルはおもしろい。このアルバムは、各人のソロよりもアンサンブルの方が聴きどころかもしれない。後にアレンジャー方面に向かうRay Copelandは勉強になっただろう。

Crepuscule with Nellieは前述のMonk's Mood同様、アドリブ皆無。不思議な曲だ。

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Hawkinsのtsが朗々と歌うRuby, My Dearは名演。Off Minorで先頭切ってソロを取るHawkinsのドスのききかたもすごい。

しかしその分、このアルバムではColtraneの出番は非常に少ない。Coltraneファンは物足りないだろう(Gigi Gryceはもっと影が薄いが・・・)。

その不満を少しだけ解消してくれるのが、MONK WITH COLTRANEというアルバム。それは、次回。

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(追記)@2017/01/28

TpのRay Copelandは目立たない人だが、Monkのキャリアの要所要所に登場してくる(Art Blakeyほどではないが)不思議な人。

Discographyを見ても、ほとんどMonkとRandy Westonのとこにしか出てこない。謎だ。

1979年には

Archie Shepp Attica Blues Big Band/LIVE AT THE PALAIS DES GLACES, PARIS [Blue Marge] rec.1979 

で、編曲・指揮を担当し、とてもいい仕事をしてくれた。

一度そのへんもまとめてみよう。

2017年1月26日木曜日

Sharon Freeman/Monk's Mood

Thelonious Monk at the Five Spot大全を続ける前に、Monk's Moodの名演を一つ紹介。

Hal Willner/THAT'S THE WAY I FEEL NOW : A TRIBUTE TO THELONIOUS MONK [A&M(キャニオン)] pub. 1984


















Design : M&Co. New York

これは1980~90年代に大活躍した仕掛け人Hal WillnerによるMonk追悼盤。Halはミュージシャンではなくプロデューサー。

1990年前後には、David Sanborn司会のTV番組Night Musicでもプロデューサーとして辣腕を振るった人。

このアルバムは、Jazz畑ばかりではなく、Rock畑からも様々なミュージシャンを集めて、Monkの曲をいろんな解釈で演奏したとても楽しいコンピレーション。

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当時はHalをはじめ、Bill Laswell、Kip Hanrahanと、Jazz周辺でこれらの仕掛け人がいい仕事を連発して楽しい時代だった。

この盤やHal Willnerの仕事については、いずれまた、まとめて語りたい。

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その中から1曲紹介↓

ca.1984, NYC
Sharon Freeman (frh, celesta, arr), Willie Ruff (frh-solo), Vincent Chancey (frh), Bill Warwick (frh), Greg Williams (frh), Kenny Barron (el-p), Buster Williams (b), Victor Lewis (ds, perc)

Sharon Freeman/Monk's Mood

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わずか3:40の小品ながら、Sharon Freemanがfrench horn 5本のアンサンブルで、実に美しく、また簡潔に仕上げてくれている。

ここでもアドリブはほとんどなく、原曲メロディの美しさをそのまま伝えてくれています。名演。そしてやっぱり名曲。

Sharonがかぶせるcelesta(オーバーダブ)もいい効果。この曲の可愛らしさを際立たせていますね。

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French hornはJazzでは珍しい部類に入る楽器。1950年代に活躍したJulius Watkinsは知っている人が多いかもしれない。この曲に参加しているVincent Chanceyは彼の弟子だ。

Sharon Freeman(女性)は、Vincent Chanceyと並んで現代jazz french hornの第一人者。Charlie HadenのLiberation Music Orchestraのレギュラーとしても活躍しています。

もっと評価されていい人なんだが、french horn自体マイナーな楽器だし、リーダー作もないのでなかなか難しいかな。

Charlie HadenのLMOでも、一度彼女に注目して聴いてみてください。

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(追記)@2017/01/26

THAT'S THE WAY I FEEL NOWはCD化もされているけど(LP版の23曲から7曲も削られて、16曲だけ。フザケンナ!)、LPもCDもなかなか見かけないので、Sharon Freeman/Monk's Moodだけならこちらでどうぞ↓

・YouTube > Sharon Freeman - Monk's Mood(posted by Jackadee on 2011/09/27)
https://www.youtube.com/watch?v=vZunnlfqxVc

・YouTube > That's The Way I Feel Now - A Tribute To Thelonious Monk "Monk's Mood" (posted by yomogi3go on 2012/01/30)

2017年1月24日火曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(1) Monk's Mood (revised)

Thelonious Monkは1951年、Bud Powellの身代わりとなって麻薬所持の罪で投獄された。その際にcabaret cardを没収され、NY市内のクラブでは仕事ができなくなった(Jazz Festival、TV、海外などでの演奏はOK)。

1957年になり、パトロネスであるPannonica de Königswaterの手助けでcabaret cardを再取得することができた。

そしてその夏から冬にかけてFive Spot Caféで長期ライブを行い大評判となる。そのパートナーとなったのはJohn Coltrane。

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Coltraneは、1955年以来Miles Davis Quintetのレギュラーであった。

1957年は、Miles 5の2作、

Miles Davis/'ROUND ABOUT MIDNIGHT [Columbia] rec.1955-56
COOKIN' WITH The Miles Davis Quintet [Prestige] rec.1956

が発売され、そのプロモーションのライブ活動を開始しようとしていたところであった。

1957年4月、Miles 5はNYCのCafé Bohemiaでの長期ライブに臨んだが、それはわずか1週間で終わってしまう。というのも、ColtraneとPhilly Joe Jonesがヘロイン依存症で会場に現れなかったり、現れてもボロボロの演奏をするばかりであったためという。

それでMilesはColtraneをぶん殴り、Quintetは解散。MilesとColumbiaはQuintetで売り出すのをあきらめ、その後しばらくはGil Evansとのコラボを前面に打ち出していくことになる。

Jazz史の本や記事などでは、「Mile Davis 5が一世を風靡した」みたいに書かれていることが多いけど、実際はそんなにうまくいってはいないよう。録音時と発売時にタイムラグがあるので、Miles 5の評判が一般に高まるのは、1957年の解散後のようだ(ライブ会場やミュージシャン間での評判はすでに高かっただろうけど)。

そして、その評判に乗っかって、Milesは1958年にQuintet+Cannnonball Adderley (as)のSextetでバンドを復活させる。

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Miles 5をクビになったColtraneを拾ったのが、Thelonious Monk。MilesがColtraneをぶん殴る現場にMonkがいて、そこでColtraneを拾ったという話もあるが、それはできすぎだ。おそらく神話にすぎないだろう。

(追記)@2017/10/20

などと書いてしまったが、

・ロビン・ケリー・著, 小田中裕次・訳 (2017.10) 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』. 673+30pp. シンコーミュージック・エンタテイメント, 東京.
← 英文原版 : Robin D.G. Kelley (2009) THELONIOUS MONK : THE LIFE AND TIMES OF AN AMERICAN ORIGINAL. xviii+588pp.+pls. Free Press, New York.

によると、どうも本当らしい。詳しくはこちらで↓

2017年10月19日木曜日 ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み2

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Coltraneは、4月には早くもMonkのレコーディングに参加している。

Thelonious Monk/THELONIOUS HIMSELF [Riverside→Fantasy/OJC] rec. 1957, re-issue 1987


















Cover Design : Paul Bacon

1957/04/05 & 16, NYC
TM (p)

01-08. 略

1957/04/16, NYC
John Coltrane (ts), TM (p), Wilbur Ware (b)

09. Monk's Mood

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Monkのソロ作の最後に1曲だけ参加。

Monkがソロで1コーラス、Coltraneが加わり1コーラス半、テーマを奏でるだけの静謐な演奏。

珍しい構成だが、こういったアプローチはMonkはバラード曲を挟んで来る時によく使う。テーマのみ、あるいは少しフェイクを加えるだけで短くまとめるやり方。

題材となるのはCrepuscule with Nellie、Just A Gigoloなど。それほど多くないが、このMonk's Moodはその流れと見ていいだろう。

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主にMonkのアイディアだろうとは思うが、Coltraneにもその素養がすでにあったんではないだろうか?

Coltraneは、若き日にはJohnny Hodgesがアイドルであり、Miles 5に加入する直前の1954年には数ヶ月間Hodgesバンドのメンバーでもあった。

Coltraneの高音を多用する、tsらしからぬ音色は、tsでHodgesになりたかったのではなかろうか?とも思っている。

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John Coltrane/BALLADS [Impulse] rec.1961-62

は、言わずと知れたColtrane最大のヒット・アルバム。

このアルバム当時、Coltraneはマウスピースの調子が悪く激しい演奏を避けていた、とか、それまでImpulseが出したアルバムの売れ行きが悪いので、売れ線狙いのアルバムを出した、とか言われている。

それは本当かもしれないし、邪推かもしれない。しかしアルバム・コンセプトとしては、これはColtraneがHodgesになろうとしたアルバムではなかろうか?と思っている。

「一度はHodges的なアルバムを作ってみたい」とColtraneは思っていたんじゃないかなあ。ちょうどそのタイミングが来たわけです。

これと、ColtraneがまるでHodgesの代役を務めたかのような

Duke Ellington & John Coltrane [Impulse] rec.1962(BALLADSと同時発売だったらしい)

で、Hodgesに借りを返した形になり、Coltraneはその後数年間は激しい音楽に邁進していく。

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で、Monk's Moodに戻ると、バラード曲ではテーマを奏でるだけで終わり、あるいはアドリブだけ他の奏者にまかせる、というのはHodgesもよくやるアプローチなのだ。このMonk's Moodはそれとよく似ている。

テーマをを繰り返すだけ、というMonkのアイディアにColtraneは「ああHodgesのあれね」とすぐに順応できたのかもしれない、と思っているのです。

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実はColtraneは、後に自作で似たアプローチをやっている。

John Coltrane/GIANT STEPS [Atlantic] rec.1959

のNaimaがそうだ。

そこではColtraneは最初と最後にテーマを吹くだけ。アドリブはWynton Kelly (p)にまかせている。Kellyの名演。

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もう一つ

John Coltrane/OLÉ COLTRANE [Atlantic] rec. 1961

のAisha(作曲はMcCoy Tyner)でも同様に、Coltraneは最初と最後のテーマのみ。

アドリブはFreddie Hubbard (tp)→Eric Dolphy (as)→McCoy Tyner (p)と続き、最後にColtraneがテーマでビシッと締める。7分強で簡潔にまとまった美しい演奏だ。

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Monk's Moodで1回終わってしまいましたが、その後Coltraneは2度Monkのレコーディングに参加した上で、Five Spotに臨みます。

次回はその過程を見てみましょう。

2017年1月2日月曜日

Thelonious Monk と Duke Ellington

MonkとEllingtonは似ている、とよく言われる。「垂直的」、「パーカッシブ」あたりがキーワードか。

でも、あらためて比較してみると、そんなに似ていないようにも感じる。Ellingtonが密集した濃密な音を出すのに対し、Monkの音は隙間が多く、わりと風通しがいい。

どちらもHarlem stride奏法の伝統の中で育ったというべきか。いや、Ellingtonは作った方か。Monkよりも、Harlem stride直系奏法を繰り出すEddie Costa(THE HOUSE OF BLUE LIGHTS)やHarry Connick Jr.の方がEllingtonに似ているかもしれない。

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実はその辺の話は、ジャズ評論家(本職は医師)の加藤総夫がさんざん書いているので、そちらを読んだ方がいいでしょう。

・加藤総夫 (1991.1) デューク・エリントンとモンク. wombat press 白石幸紀・編 『セロニアス・モンク ラウンド・アバウト・ミッドナイト』所収. pp.108-118. 講談社, 東京.
→ 改題・再録 : エリントンとモンク ミュージシャンが影響を及ぼしあうことをめぐる神話. 加藤総夫 (1993.8) 『ジャズ・ストレートアヘッド』所収. pp.30-43. 講談社, 東京.

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MonkがEllingtonを敬愛しているのは間違いない。でもそれは他の大多数のジャズ・ミュージシャンも同じなのだが。

PrestigeからRiversideに移籍しての1枚目がEllington曲集。本人の意志ではなくProducerのOrrin Keepnewsのアイディアだったらしいのだが、それでもすんなり8曲選んであっさり弾いてしまうあたり、Ellingtonの当時のポピュラーぶりが伺える。

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Thelonious Monk PLAYS DUKE ELLINGTON [Riverside→Fantasy/OJC] rec.1955, re-issue 1987


















Cover Painting : Henri Rousseau
Cover Design : Paul Bacon

1955/07/21-22, NJ
TM (p), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)

01. It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)
02. Sophisticated Lady
03. It Got It Bad and That Ain't Good
04. Black and Tan Fantasy
05. Mood Indigo
06. I Let A Song Go Out of My Heart
07. Solitude (TM solo)
08. Caravan

ここでのMonkは、ちょっとおとなしめかな。dsが正統派Kenny Clarkeのせいもあり、リズムが端正。変態ドラムのArt Blakey、Roy Haynes、Frankie Dunlopの方がMonkに合っている。

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そのMonkとEllingtonが1962年に共演しているのは、あまり知られていない。場所はNewport Jazz Festival。

MonkのNewport Jazz Festival出演といえば、1955年のMiles Davisとの共演、1958年のトリオ演奏、1963年のPee Wee Russellを加えたライブ盤が有名。

1958年の演奏は、映画

Aram Avakian+Bert Stern・監督 (1960) JAZZ ON A SUMMER'S DAY(真夏の夜のジャズ).

にBlue Monkが収録されています。これが一番有名ですね。

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それも含め、1958年、1959年、1962年の演奏を収録したブートレグ(海賊盤)がこれです↓

Thelonious Monk Trio & Quartet/UNISSUED LIVE AT NEWPORT 1958-59 [Gambit] pub.2008


















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1958/07/07, Newport Jazz Festival, Newport, Rhode Island
TM (p), Henry Grimes (b), Roy Haynes (ds)

01. Just You, Just Me
02. Blue Monk
03. 'Round Midnight
04. Well You Needn't

1958年の演奏は映画に収録されたBlue Monkの他に3曲。Monkのトリオ演奏は少ないので貴重だ。

残り3曲も映像があるはずなので、誰か探し出してほしい。Blue Monk自体も、映画では音にも映像にもヨット・レースとその実況がかぶさり、Monkの演奏を楽しめないし。

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1959/07/03, Newport Jazz Festival, Newport, Rhode Island
Charlie Rouse (ts), TM (p), Sam Jones (b), Art Taylor (ds)

05. In Walked with Bud
06. Blue Monk
07. Crepuscule with Nellie
08. Well You Needn't
09. Rhythm-A-Ning

1959年の演奏は当時のカルテット。すでにCharlie Rouseがレギュラー。

Sam JonesとArt Taylorがレギュラーの期間は短かった。Monkのリズム感に合わせるには端正すぎたし、二人共セッションでは引っ張り凧だったから、バンド・レギュラーとしては長続きしなかったんだろう。

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1962/07/08, Newport Jazz Festival, Newport, Rhode Island
TM (p), Duke Ellington Orchestra including Bill Berry (tp), Cat Anderson (tp), Roy Burrows (tp), Ray Nance (tp, vln), Lawrence Brown (tb), Chuck Connors (tb), Buster Cooper (tb), Gene Hill (as, cl), Johnny Hodges (as), Jimmy Hamilton (ts, cl), Paul Gonsalves (ts), Harry Carney (bs, cl, bcl), Aaron Bell (b), Sam Woodyard (ds), DE (cond, MC), Billy Strayhorn (arr)

10. Announcement by Duke Ellington
11. Monk's Dream
12. Ba-Lue-Bolivar-Ba-Lues-Are

そして目玉が1962年の演奏。本盤での表示ではなんだかオマケ扱いですが。

Ellington Orchestraに2曲Monkが参加するという驚天動地のパフォーマンスです。EllingtonはピアノをMonkに譲り、MCと指揮。

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EllingtonのMCを訳してみましょう。

10. Announcement by Duke Ellington

さあ、淑女・紳士の皆様。MD、Billy Strayhornが編曲しましたMDです。MDはとても魅力的な曲で、この曲では取っておきのソロ(奏者)も用意しております。

(録音が飛び飛びで、何を言っているかよく分からない)

偉大なるThelonious Monkの協力でお送りします。(MDの正しい)曲名はMonk's Dreamです。

11. Monk's Dream

(Monk登場。Ellingntoniansからの野次がすごい)

曲 : Monk's Dream

Thelonious Monk!Monk!Thelonious MonkのMonk's Dreamでした。

あー、(次の曲は)Monk Fur・・・?Frereなの?Frere Monk?アンコール!

12. Ba-Lue-Bolivar-Ba-Lues-Are 

曲 : Ba-Lue-Bolivar-Ba-Lues-Are (Frere Monk)

Yeah!Thelonious Monk!

(Monkはそそくさと帰ってしまったよう)

おー、Monkはまだ帰りませんよ。大丈夫、大丈夫。彼はすぐ戻って来ます、すぐです。

(たぶん戻って来なかった。あるいはこの後にMonk 4のセットがあったのかもしれず、Ellingtonはそのことを言っている可能性もある)

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Ellington OrchにMonkを加えるにあたり、Ellingtonの曲にMonkを参加させるのではなく、Monkの曲を2つ選び、この日のためにわざわざ編曲を施してあるわけで、EllingtonがMonkを丁重に迎えていることがわかります。

Ellingtonianのオヤジ達もMonkが大好きらしく、Monkが登場すると大喜びで、野次もものすごい。手荒く大歓迎、といったところ。

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Monk's Dreamは1962年時点の新曲。この直後、Columbiaと契約して最初のアルバム・タイトルにもなります。

イントロのアンサンブルからしてすごいんだが、テーマはわりと大人しめ編曲。

そしてMonkのソロに入る。Monkがガチガチに緊張しているのがわかっておもしろい。Monkらしからず、テーマからあまり離れないわりと単調なソロを繰り返す。

後半ようやく調子が出てくるのだが、そこにStrayhornが不協和音だらけの凶悪なアンサンブルをかぶせてきて、そのままエンディング。

なんだこれはー!Monkも相当面食らっただろうなあ。

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2曲めは、BRILLIANT CORNERSでのたうつようなメロディを放っていたBa-Lue-Bolivar-Ba-Lues-Are。

なおここでは、Ellingtonはこの曲をFrere Monk(兄弟Monk)と呼んでいます。

BRILLIANT CORNERS収録版よりはだいぶ軽快になり、MONK'S DREAM収録のBolivar Bluesに近くなっている。

今度はMonkがリードしてテーマ。緊張感はだいぶ取れて、好調なソロを繰り出すMonk。Ellington Orchは、そこに犬が唸るようなどす黒いアンサンブルをかぶせる。

タイミングをずらしてアンサンブルをぶつけたりもしている。まるでMonkを模したよう。Strayhornも人が悪い。

ブリッジとエンディングでは、Strayhornは1曲目にも増して凶悪なアンサンブルをぶつけてくる。まるで獣の咆哮。しかし今回はMonkも負けずに鍵盤を強打。壮絶なエンディングを迎える。

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いやー、ものすごいものを聴いた。特に緊張したMonkなんて滅多に聴けないから貴重。

しかし、これがなんで最近まで出てこなかったんだろうなあ。オーディエンス録音なのかエアチェックなのか知らないが、音は悪いんで、商業化は無理だったにしても・・・。

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ちなみに当日は、Monkとの共演の前か後かわかりませんが、当然Ellington Orchだけの演奏もあり、それは映像が残っています。

DVDにもなっています。

・Amamzon.com > Movies & TV > Newport Jazz Festival 1962 [Quantum Leap](pub. December 2, 2003)
https://www.amazon.com/Newport-Jazz-Festival-1962-Roland/dp/B0000JAV1E

YouTubeにも上がっています。

・YouTube > Newport Jazz Festival 1962 - Oscar Peterson, Roland Kirk, Duke Ellington, Count Basie(51:07, Rafael Petrosyan uploaded on 2013/04/02)
https://www.youtube.com/watch?v=ZUB72NfTQLM

Ellington Orchだけならこちらでも。

・YouTube > Duke Ellington 1962 Newport, Rockin´ In Rhythm + Passion Flower + Things Ain´t What They Used To Be(6:38, hoffmannjazz uploaded on 2013/04/03)
https://www.youtube.com/watch?v=w7qW0Y01B98

ということは、Monkとの共演もどっかに映像が残っている可能性が高い、ということだ。これはいずれ出てくるのが楽しみだ。緊張したMonk見てみたい。

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なおEllingtonは上記2曲を、Orchだけでこの2ヶ月後に録音していますが、残念ながらお蔵入りとなりました。

それが表に出てきたのは1988年。これです↓

Duke Ellington/THE PRIVATE COLLECTION VOLUME THREE : STUDIO SESSIONS NEW YORK 1962 [WEA/LMR] pub. 1988


















Cover Illustration : Nancy Stahl

1962/07/25(a), 09/12(b), 09/13(c), NYC
BB (tp), CA (tp), RB (tp), RN (tp), Cootie Williams (tp), Britt Woodman (tb), LB (tb), BC (tb), CC (tb), JHo (as), Russell Procope (as), JHa (ts, cl), PG (ts), HC (bs), DE (p, cond), BS (p), AB (b), SW (ds), Milt Grayson (vo)

01. ESP (b)
02. Blue, Too – The Shepard (a)
03. Tune Up (a)
04. Take It Slow (a)
05. Telstar (a)
06. To Know You Is to Love You (b)
07. Like Late (a)
08. Major (a)
09. Minor (a)
10. "G" for Groove (a)
11. The Lonely Ones (c)
12. Monk's Dream (c)
13. Frere Monk (c)
14. Cordon Blue (c)
15. New Concerto for Cootie (c)
16. September 12th Blues (b)

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こんな未発表集が全10集で出ているのです。Ellingtonの底力には驚くよりほかありませんね。

この第3集はさしずめ「Paul Gonsalvez虎の穴」。ほとんどの曲でtsのGonsalvezがソロを取ります。

Monkの2曲はNewport Jazz Festivalの2ヶ月後。Strayhornがさらに手を加えているようで、編曲は少し変わっています。2曲とも2分台と短く、リハーサルの可能性もありますね。

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Monk's Dream

テーマの編曲はNewportとほぼ同じ。ソロはJimmy Hamilton (cl)→Ellington (p)→Gonsalvez (ts)。

EllingtonはMonk風にタイミングをずらして弾いている。古今東西のピアニストがふざけてMonkの真似をよくしてるけど、あのEllingtonでも真似したくなるんだねえ。

Frere Monk

アンサンブルはNewportと同じ展開だが、もはやBolivar Bluesのメロディは出てこないので、「Ellington作曲Frere Monk」という曲になってしまっている。

ソロはCootie Williams (tp)。そのソロにアンサンブルが絡む。

どちらもおもしろいんだが、いかんせん短すぎる。ライブでは演奏されたんだろうか?ライブ版があるならそちらもぜひ聴いてみたい。

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1962年はEllingtonにとっては他流試合の年になった。

Monkとは上掲作、

Coleman Hawkinsとは
・Duke Ellington MEETS Coleman Hawkins [Impulse] rec. 1962/08/18

Charles Mingus+Max Roachとは
・Duke Ellington/MONEY JUNGLE [United Artists] rec. 1962/09/17

Coltraneとは
・Duke Ellington & John Coltrane [Impulse] rec. 1962/09/26

といった具合。

ColumbiaかImpulseが口を利いて、Ellington – Monk共演盤を正式に作ってくれてもよさそうだったのになあ。残念だ。

次回もMonkの話です。

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(追記)@2017/01/02

ところで、上記作品にも参加していたトロンボニストBuster Cooperは2016年に亡くなったばかりだった。

・Tampa Bay Times > News > Jay Cridlin/Jazz icon, trombonist Buster Cooper dies at 87 in St. Petersburg(Friday, May 13, 2016 7:01pm)
http://www.tampabay.com/news/obituaries/jazz-icon-trombonist-buster-cooper-dies-at-87-in-st-petersburg/2277310

Buster Cooper(1929/04/04-2016/05/13)。おそらく最後のEllingtonianだろう。

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(追記)@2017/01/18

Monk & Ellington OrchのNewport 1962 LiveはYouTubeでも聞ける。

・YouTube > Thelonious Monk plays with Duke Ellington Orchestra (Posted by Sergio Portaleoni on 2015/07/17)
https://www.youtube.com/watch?v=Y4npN0dMtmY

CDと同じくVOAのエアチェックがソースらしいが、録音者は別のようだ。

こっちは周波数が少しずれててノイズが入る。しかしその分高音域がよく録れていて、CDよりもクリアだ。

こちらも2曲9分あまりと同じ尺。やはり共演はこの2曲で終わりだったよう(少なくともon airは)。