2017年2月25日土曜日

Bye-Ya 7連発!→ 8連発!

Monk Five Spot (6)に進む前に、Bye-Yaの話を。

前回のエントリーでも述べたように、私はMonkの演奏の中で

THELONIOUS MONK (TRIO) [Prestige(Fantasy/OJC)] rec.1952&54, re-issue 1982



1952/10/15, NJ
TM (p), Gary Mapp (b), Art Blakey

07. Bye-Ya

が一番好きです。この曲の録音は少ないんで、それが残念。

というわけで、このBye-Yaの録音をいろいろ集めてみた。

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上記盤は、Monkの数少ないトリオ作品。Monkはバリバリ弾きまくっています。Bye-Yaはラテン・リズムの曲で、Monkのピアノもよくころがる。

Blakeyの煽りに乗って大盛り上がり。MonkとBlakeyのコンビネーションはほんと素晴らしい。もうね、血沸き肉踊るとはこのことです。特にアドリブ2コーラス目は凄い。

ちょっと不思議なのは、トリオの他にclaveのリズムを刻んでいるもう一人がいるんではないか?ということ。Blakeyがこれもやっているのなら超人だが、おそらく誰か別人だと思う。聞こえるのは遠くからだし、それに下手だ。

最初はGary Mappがベースを休んで叩いてるのかとも思ったが、ベースもちゃんと聞こえる。Claveではなく、その代用品として、そこら辺にある板を叩いているような感じ。誰なんだろう?

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Thelonious Monk Quartet with John Coltrane AT CARNEGIE HALL [Blue Note(EMI)] rec. 1957, pub. 2005


Art Direction & Design : Burton Yount

1957/11/29, Carnegie Hall, NYC
JC (ts), TM (p), Ahmed Abdul-Malik (b), Shadow Wilson (ds)

06. Bye-Ya

これは前回紹介した、Monk – Coltraneの数少ない録音の1つ。

Coltraneのラテン乗りというのも珍しいが、ソロではラテン・リズムとは関係なくいつものColtrane。Shadow Wilsonも大活躍。

Monkのソロは隙間の多い演奏で、トリオ作のBye-Yaとはだいぶ印象が違っておもしろい。

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Thelonious Monk Quartet featuring Johnny Griffin/COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958 [Riverside→Lonehill Jazz] rec.1958, pub. 2009


Concept & Design : Comunicom

1958/07/09, Five Spot Café, NYC
JG (ts), TM (p), AAM (b), AB (ds)

CD2-08. Bye-Ya / Epistrophy

これは次回書くJohnny GriffinとのFive Spot 1958の残りテープからの発掘曲。

初出は、LPだと22枚組、CDだと15枚組の巨大Boxセット

Thelonious Monk/COMPLETE RIVERSIDE RECORDINGS [Riverside] rec. 1955-1961, pub. 1984

だったと思う。

残りテープと言っても、IN ACTION/MISTERIOSOの録音日である8月7日ではなく、それより前の7月9日。テスト録音だったのだろうか、この日の録音からは、当初リリースはなかった。

メンバーは同じ・・・と思いきや、なんとこの曲だけドラムスがArt Blakeyなのだ。Bye-Ya初出時のドラマーBlakeyがバックアップしてくれるのだから心強い。

Roy Haynesのドラム・セットを借りているようで、最初のうちはHaynesみたいに細かくスネアを刻んでる。他人のドラム・セットを使うと、その人に似てしまうのだな。段々慣れてきて、お得意のドラム・ロールが出始めるとBlakeyも本調子。

GriffinのソロもMonkのソロも絶好調。しかしMonkのソロは、トリオ作の時のようなラテン乗りではない。やはりあれは、稀有な演奏だったということがわかる。

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The Thelonious Monk Quartet/MONK'S DREAM [Columbia] rec. 1962



1962/10/31, NYC
Charlie Rouse (ts), TM (p), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)

07. Bye-Ya

お次は、Columbiaに移籍しての第1作目。Monkの円熟期だ。

Columbiaでの初録音にBye-Yaを持ってくるところは、Monkの気合の入り具合が伺える。MonkのBye-Yaの正式録音は、Prestigeのトリオ盤とこれしかないのだ。

よくころがるドラムスFrankie Dunlopはこの曲にピッタリ。オープニングもDunlopからだ。

RouseもMonkに合わせて、跳躍の多いフレーズを多用。これだからMonkは手離さないよね。

Monkがソロで隙間を作ると、Dunlopがすぐさま反応しておかずを入れる。勘のいい人だ。私はColumbiaでは、1962~63年のドラムスDunlop時代(バンドメンバーとしては1961年4~5月のEurope Tourから)が一番好きなんだけど、もっと長くやってほしかったなあ。

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Columbia移籍当初の1963年には、MONK'S DREAMのアルバム・プロモーションの意味もあって、ライブではこの曲がよく演奏されていた。当時のブートでもいくつか聴けるが、今回は省略。

次のアルバム収録のBye-Yaも、その流れで演奏されている。

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Thelonious Monk/MONK BIG BAND AND QUARTET IN CONCERT [Columbia(SONY)] rec. 1963, original release 1964, re-issue 1994


Art Direction : Allen Weinberg

1963/12/30, Lincoln Center, NYC
Thad Jones (cor), Nick Travis (tp), Eddie Bert (tb), Steve Lacy (ss), Phil Woods (as、cl), CR (ts),Gene Allen (bs, bcl, cl), TM (p), Butch Warren (b), FD (ds), Hall Overtone (arr)

CD1-01 Bye-Ya

Riverside時代のTown Hall Liveに続く大編成もの第2弾。

Monk研究の第一人者Steve Lacyの参加も注目だが、Lacyのソロはない。しかし、Lacyの存在感は特別で、アンサンブルにあってもLacyだけ浮き上がって聞こえてくる。

Monkは、アルトではPhil Woodsがお好みらしく、大編成ものになると必ずWoodsが呼ばれる。意外な関係。Gerry Mulliganも呼んでやればよかったのに(ギャラが高かったのかもしれない)。

もともとLP1枚ものだったのが、1994年の再発CDで未発表曲を収録しCD2枚組となった。Bye-Yaはその時に日の目を見た曲。

ソロ回しは、Thad (cor) → Woods (as) → Rouse (ts) → Monk (p)。Thadのソロの後半から、ホーン奏者のソロの間、Monkはほとんど休んでいる。何やってたんだろう?Thadあたりは、曲を持て余している感じ。MonkにはClark Terryの方が相性がいい。一番こなれたソロを展開するのはやはりRouseだな。

テーマのアンサンブルに合わせて、メロディに寄り添ったドラムを展開するDunlopも聴き所。この人は、私はEd Blackwellと同じ仲間に入れているのだが、ホントにメロディアスかつ切れのいいドラムだ。

Frankie Dunlopは、このコンサートを最後にMonk 4から脱退。1964年頭から後任にBen Rileyが入る。

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Steve Lacy PLAYS THELONIOUS MONK : REFLECTIONS [Prestige/New Jazz(Fantasy/OJC)] rec. 1958, re-issue 1990



1958/10/17, NJ
SL (ss), Mal Waldron (p), Buel Neidlinger (b), Elvin Jones (ds)

04. Bye-Ya

上記盤にも参加しているSteve Lacyは、1950年代からMonkの曲を演奏し続けているMonk研究のパイオニアだ。

デビュー作のSOPRANO SAX [Prestige] rec. 1957でもMonkの難曲Workを取り上げる、という無茶なことをしているが、この第2作目はなんと全曲Monk曲集。

今でこそMonk曲集は珍しくはないが、1958年にはそうとう珍しかったはず。無謀と思われていたかもしれない。

このアルバムは、ドラムスに当時売り出し中の若手Elvin Jonesを入れたのが成功のキー。

Bye-YaでもElvinが大活躍。Lacyはいつものようにクールにソロを処理しているのだが、ElvinはオリジナルでのBlakeyに倣って、ラテン・リズムを刻んでいる。MalはちょっとMonkを真似している感もある。

しかしMonkの曲の中でも、Bye-Yaはストレートに陽性の曲調なので、屈折した曲が得意なLacyやMalとは、あまり相性がいいとはいえない。

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最後に紹介するのは、再び登場の

Hal Willner/THAT'S THE WAY I FEEL NOW : A TRIBUTE TO THELONIOUS MONK [A&M(キャニオン)] pub. 1984


Design : M&Co. New York

ca.1984, NYC
Steve Slagle (as), Dr. John (p), Steve Swallow (b), Ed Blackwell (ds)

D05. Bye-Ya

Carla BleyんとこのアルトSlagleとベースSwallow、この組み合わせに意外性はないが、それとEd Blackwellを組み合わせるというのは異常だ。さらにJazz畑ではないDr. Johnを加えるのだから、さすがHal Willner。プロデュースが冴え渡っている。

とはいえ、実はDr. JohnもEd BlackwellもNew Orleans出身で、共通性があるのだ。「Carla Bley対New Orleans」といったところか?

曲はBlackwellのドラム・ソロから始まる。これがとにかく、よくころがるころがる。テーマが始まる前から血沸き肉踊る展開。

テーマに続いてSlagleのソロ。Bleyバンドでもいソロをする人だが、ここでもよく鳴るアルトを吹いている。

続くDr. Johnのソロは、Monk風に弾かず、自分のGumboサウンドだ。Monkに無理に合わせず、自己流のMonk解釈を並べているこのアルバムらしいところ。

これはオリジナルに匹敵する名演だ。

ところが!この曲はCD化の時にカットされてしまい、アナログ盤でないと聴くことが出来ない。なんということだ!

しょうがないので、YouTubeで聴いてください。

That's The Way I Feel Now - Tribute to Thelonious Monk LP2 - Side4 [FULL ALBUM](Posted by PeanutButterSocks on 2017/02/21)
https://www.youtube.com/watch?v=3XV79GSjA0g

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Bye-YaはMonkの曲の中では、注目されることがあまりない曲ですが、いろいろ名演が多い。特にオリジナルのPrestige盤とHal Willner盤は必聴!

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(追記)@2017/03/01

もう一つ足して8連発にしましょう。足したのはこれ↓

INTERPRETATIONS OF MONK AT THE WOLLMAN AUDITRIUM, COLUMBIA UNIVERSITY, NOVEMBER 1, 1981(Live from Soundscape Series) [DIW] rec. 1981, pub. 1994



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一見、Monkの追悼曲集のように思えるが、コンサートが開かれた日は1981年11月1日。Monkが亡くなる3ヶ月半前(亡くなったのは1982/02/17)。

ピアノ以外の6人Don Cherry (tp)、Roswell Rudd (tb)、Steve Lacy (ss), Charlie Rouse (ts)、Richard Davis (b)、Ben Riley or Ed Blackwell (ds)を固定し、そこに4人のピアニスト、Muhal Richard Abrams、Barry Harris、Anthony Davis、Mal Waldronを交代ではめ込んだ超豪華コンサートだ。CD4枚組。

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コンサートの全容については、いつかあらためて語るとして、ここではBye-Yaについてだけ語ることにしよう。

Bye-Yaが演奏されたは、CD2枚目、Barry Harrisのセット。

1981/11/01, NYC
Don Cherry (tp), Roswell Rudd (tb), Steve Lacy (ss), Charlie Rouse (ts), Barry Harris (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)

CD2-05. Bye-Ya

ソロ順は、DC (tp) → CR (ts) → RR (tb) → SL (ss) → BH (p)

ドラムスはまたEd Blackwellですが、こっちではちょっとおとなしめ、というかわりと普通。

ソロの先頭はCherry。コード進行など全く気にしない毎度おなじみのソロ。意外かもしれないが、この人もMonk関係の場所に引っ張り出されたり、Monkの曲を演奏したりすることがわりに多い人だ。

続くRouseは安定のフレージングで、やっぱりMonk's musicにはRouseが欠かせないことを感じさせる。

Ruddはミュートをかけたソロで、ちょっとおもしろい出来になっている。まるでCootie Williamsみたいだ。

Lacyは相変わらず、リズミックなこの曲とは相性あんまり良くないが、最初の方のリズムを刻むようなソロはかなりおもしろい。上述のREFLECTIONSから23年。その間、何度も何度も演奏してきたことを感じさせる。まさにplays Monkの進化形だ。

Barry Harrisは、かなりMonkっぽい弾き方をしている。この人はそういうことをする人ではない、と思っていたんだが、意外だった。ここではBlackwellのブラシも聞き所。

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このCD、中古でもめったに見かけないし、あっても結構高い。けど、買い逃すと後で絶対後悔するから、見つけたら、なりふりかまわず買っておけ!

2017年2月22日水曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(5) Monk with Coltrane at Carnegie Hall 1957

1957/07/18~12/26というロングランとなったMonk – Coltrane QuartetのFive Spot出演だが、その間仕事はこれだけではなかった。

Coltraneは大忙し。Prestigeと契約したばかりで、5/31には初リーダー作

John Coltrane/COLTRANE [Prestige] rec.1957

を録音。Five Spot出演中も、しょっちゅうPrestigeのセッションに呼ばれ、New Jersey州HackensackのRudy Van Gelder Studioに顔を出していた。

・08/16 (Fri)  NJ, LUSH LIFE+THE LAST TRANE [Prestige]
・08/23 (Fri)  NJ, TRANEING IN [Prestige]
・09/01 (Sun)  NJ, Sonny Clark/SONNY’S CRIB [Blue Note]
・09/15 (Sun)  NJ, BLUE TRAIN [Blue Note]
・09/20 (Fri)  NJ, Mal Waldron/WHEELIN' AND DEALIN'+THE DEALERS [Prestige]
・10/??  NYC, WINNER'S CIRCLE [Bethlehem]
・11/15 (Fri)  NJ, Red Garland/ALL MORNING LONG+SOUL JUNCTION+HIGH PRESSURE [Prestige]
・11/29 (Fri)  NYC, Thelonious Monk/Carnegie Hall [Blue Note]
・12/13 (Fri)  NJ, Red Garland/HIGH PRESSURE+DIG IT ! [Prestige]
・12/20 (Fri)  NJ, Ray Draper [Prestige]
・12/??  NYC, Art Blakey Big Band [Bethlehem]

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昼はレコーディング、夜はFive Spotだったとすれば、かなりの多忙だ。BLUE TRAINの準備にも、かなり手間もかかってるはずだし。

曜日を調べてみると、おもしろいことがわかった。圧倒的に金曜日が多いのだ。これは・・・?

もしかすると、毎週金曜日はFive Spot自体が、あるいはMonkの出番が休みだったのではないだろうか?

考えてみれば、Garlandとのマラソン・セッション、特に11/15の10曲なんて、朝からやっても夕方まで終わりそうにない。

これは更に突っ込んで調べる価値はありそうだ。

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それはさておき、一方のMonkといえば、

・08/12 (Mon)  NYC, with Gerry Mulligan [Riverside]
・08/13 (Tue)  NYC, with Gerry Mulligan [Riverside]
・11/29 (Fri)  NYC, Carnegie Hall with Coltrane [Blue Note]
・12/08 (Sun)  NYC Sound of Jazz [CBS TV]

Mulliganとのセッションがあるくらいで、ほとんどFive Spotに専念している。7年ぶりのライブに対し、いかに力を入れていたかがわかる。

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その中で異彩を放っているのが、11月29日(金)のCarnegie Hall Live。この日はTHANKSGIVING JAZZと銘打たれたコンサートが開かれ、出演者は

・Billie Holiday
・Dizzy Gillespie Orch with Austin Cromer
・Ray Charles
・Chet Baker with Zoot Sims 4
・Thelonious Monk 4 with John Coltrane
・Sonny Rollins

という豪華メンバー。

夜8:30(Early Show)と深夜(Late Show)の2回公演。Monk 4は30分ほどのステージを2回こなしている。

これも金曜だ。ますます「毎週金曜 Five Spot休み」説が強くなって来る。

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このコンサートは、Voice of Americaが放送・録音し、そのテープはLibrary of Congress(米議会図書館)に人知れず保管されてきた。

それが公表されたのは2005年のこと。最初は、前述のT.S. Monkのサイト。そしてついにBlue Noteがリリース。

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Thelonious Monk Quartet with John Coltrane AT CARNEGIE HALL [Blue Note(EMI)] rec. 1957, pub. 2005


















Art Direction & Design : Burton Yount

1957/11/29, Carnegie Hall, NYC
JC (ts), TM (p), Ahmed Abdul-Malik (b), SW (ds)

Early Show
01. Monk's Mood
02. Evidence
03. Crepuscule with Nellie
04. Nutty
05. Epistrophy
Late Show
06. Bye-Ya
07. Sweet and Lovely
08. Blue Monk
09. Epistrophy (incomplete)

録音状態もよく、時期もFive Spot出演中の合間なので、Monk – ColtraneのFive Spot 1957を想像させるに最適な録音といえるだろう。

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Early Showのオープニングは、Monk's Mood。Monkがまずソロで1コーラス、続いてColtraneが入って1コーラス半。少しフェイクするくらいで、ほとんどテーマを奏でるだけ。HIMSELFでのルーチンとほぼ同じだ。

これだけで8分もあるのだ。30分ほどのステージなのに・・・。

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続くEvidenceは、Coltraneが吹く唯一のEvidence。貴重な録音だ。バリバリ吹きまくるColtraneも素晴らしいが、Shadow Wilsonも珍しくオカズが多く、素晴らしい出来。

それにしてもColtraneのEvidenceが聞けるなんて、なんという至福。

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Crepuscule with Nellieは、これも例によってテーマを繰り返すだけの演奏。さっきのMonk's Moodとも似た展開なので、2曲も必要だったかな?という気はする。

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Nuttyは、Monk – Coltrane 4が残している曲の中では一番録音が多いおなじみの曲。倍速で飛ばすColtraneとリラックスして弾くMonkが対照的。

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EpistrophyはEarly Showでのクロージング・テーマの扱いだが、4分半あるので、それなりにソロも堪能できる。

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Late ShowはBye-Yaから。

これは珍しい!Monkの生涯でも4回くらいしか録音していないレア物だ。それもColtraneが吹くBye-Yaときてるんだから、たまらん!

私はMonkの全演奏の中で、Prestigeのトリオ盤でのBye-Yaが一番好きだ。Claveのリズムで大盛り上がり大会を見せるArt Blakeyもものすごかったし。

それに比べると、Shadow Wilsonはちょっと物足りないが、充分盛りがっている。Coltraneのソロの間、Monkはバッキングを続けているのが珍しい。Carnegieのステージで、グルグル回ったり踊ったりするのは憚られたのだろうか?なんてね。

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Monkの愛奏曲Sweet and Lovelyは、前半はしっとり展開するが、後半、突如倍速で飛ばすColtraneに驚愕。Monkの異様なバッキングもすごいなあ。これは見てみたかった。

MonkもColtraneも、この日は絶好調なのがよくわかる演奏。

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Coltraneが吹くBlue Monkも、ここでしか聴けない。じっくり聴こう。

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クロージング・テーマはやはりEpistrophy。3分弱の短い演奏だが、Coltraneのソロはかなりあるので十分楽しめる。

しかし、Monkのソロでフェイド・アウトしてしまうのはなぜだ?これは完全版がちゃんとあるはずなので、いずれどこかで聴きたい。

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このCarnegie Liveは録音状態もよく、CD1枚分と十分な分量があり、Monk – ColtraneのFive Spot Liveを聴きたくて聴きたくて飢えていたファンの期待に見事答えてくれた。

特に、Coltraneの演奏としてはここでしか聴けない、Evidence、Bye-Ya、Sweet and Lovely、Blue Monkが聞けたのは大収穫だ。このあたりはほんともう何度も聴きたくなる。

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このCarnegie Liveの後、Five Spotのステージをさらに1ヶ月続けて、ColtraneはMonkの元を去る。

Monk's Mood → MONK'S MUSIC → MONK WITH COLTRANE → Ruby, My Dear/Nutty → Carnegieと聞いていくだけでも、Coltraneがどんどん自信をつけていく様子がわかる。音数も増えているし。

こうしたColtraneをMilesも見直し、Cannonballを加えたSextetとしてバンドを復活させる。その後のColtraneの活躍はご存知の通り。

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一方のMonkもすっかり満足したようで、Coltraneを送り出し、一時バンドを解散する。

Coltraneに代わってメンバーとなるのは、疾風テナーJohnny Griffin。

2017年2月8日水曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(4) Five Spot 1957 with Coltrane

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane/COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958 [Gambit] rec. 1957-58, pub. 2006


Cover Design : Twins

1957/07?, Five Spot Cafe, NYC
JC (ts), TM (p), Wilbur Ware (b) ?, Shadow Wilson (ds) ?

06. Ruby My Dear
07. Nutty

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本盤のメインは、Blue Noteが発掘したFive Spot 1958 with Coltraneの5曲をリマスターしたもの。

問題のFive Spot 1957の発掘曲(と推測されるの)は、bonus tracksの2曲だ。

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これは、CD での表示では1958/09/11の残りテープとされているが、dsに注目して聴いてみると、1958年のds、すなわちRoy Haynesではないのだ。Haynes特有の、細かく刻むスネアが全く聞こえない。

後述のCarnegieにおけるNuttyを聴いてみると、Shadow Wilsonは「チーチッキ、チーチッキ」と、定石通りのシャッフルを刻んでいる。このFive SpotのNuttyも同じだ。少なくともRoy Haynesではない。Shadow Wilsonとみて間違いないだろう。

bはWareかAbdul-Malikかは自分にはわからなかったが、Wareとされている。いずれにせよ、dsがWilsonであるならば、それは1957年であるのは確実。

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これは、一説ではMonkの奥さんNellieさんが録音したものだという。

初出は、Monkの息子T.S. Monkのサイト

・T.S. Monk/MONKZONE.com(2001-)
http://www.monkzone.com/index.htm

これをGambitがさっそくパクって商品化。「協力 : T.S.Monk」といったクレジットは一切ないから、まさにパクリだ。

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Websiteでの発表時点で、1958年の残りテープとされていたが、これも不可思議。

1958年のテープは、当時のColtraneの奥さんNaimaによる録音であるのは間違いない。それと同時にNellieさんも録音していた、とでも言うのだろうか?

第一このdsを聴けば、私のような素人でも1957年のShadow Wilsonであると気づく。T.S. Monkが気づかないはずない。また、Gambitのスタッフだって気づいているに決まってる。

Five Spot 1957であることを隠蔽しなきゃいけない事情があるようだ。

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後述するFive Spot 1958 with Charlie Rouse(という録音もあるのです)は、T.S. Monkの協力により一度発売されたものの、発売中止となった。

理由は、テープの出処がNicaさんだったためで、どうも著作隣接権が充分クリアできなかったと思われる。

この2曲も、実は元々の出処はNicaさんテープだったのかもしれない。真相はわかりませんがね。

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で、ようやく曲に行くのだが、実はあんまり面白くない。

ここで聴かれるRuby, My DearとNuttyはMONK WITH COLTRANEでも録音されていた2曲。

どちらの曲でも、ソロも展開もよく似ている。時期が近い、すなわち1957年であるのは、ここからも推測可能。

ちょっと地味な2曲なので、もっと聴きたくなる!ああ。

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・J.C.トーマス・著, 武市好古・訳 (1975) 『コルトレーンの生涯』. 327pp. スイングジャーナル社, 東京.
← 英語原版 : J.C. Thomas (1975) CHASIN' THE TRANE : THE MUSIC AND MYSTIQUE OF JOHN COLTRANE. 252pp. Doubleday, Garden City(NY).
→ 再発 : (2002.10) 『コルトレーンの生涯 モダン・ジャズ 伝説の巨人』(学研M文庫). 476pp. 学研, 東京.

を読むと、Coltraneと奥さんのNaimaは、Five Spot 1957の間にもテープを回し、家に帰ってから二人で録音を聴いていた、という記述がある。

後に発掘された1958年のテープ以外にも、まだ他にテープがあるんじゃないか?

上記の2曲はそこから出てきたものの可能性もある。なんだか判じ物。そこがブートの面白いところでもある。

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また、1957年の演奏は2曲だけ出てきているが、ひょっとすると、1958年のレパートリーとは重複しない2曲だけが選ばれているのかもしれない。

その場合は、他にも出せるネタを誰かが持っているのかもしれない(といいなあ)。いやー、わからないんだけど、想像していくとちょっと楽しみになりますね。

Gambitは、Monk – Ellingtonの共演も発掘しているし、最近すごい活発だ。期待しましょう。

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さて、残念ながらほとんど録音が残っていない1957年のMonk – Coltrane Quartetだったが、2005年にとんでもないものが発掘される。

それが次回紹介するMONK WITH COLTRANE AT CARNEGIE HALL。Five Spot 1957へのファンの渇望を見事に満たしてくれた。

それは次回に。

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(追記)@2017/03/06

・Lewis Porter (ed.), Lewis Porter+Chris DeVito+David Wild+Yasuhiro Fujioka+ Wolf Schmaler (2008.3) THE JOHN COLTRANE REFERENCE. 848pp. Routledge, Oxford (UK).

によれば、1957年Five Spot Liveでは、Ware → Abdul – Malikの交代以外にもけっこう入れ替わりがあったらしい。

・07/18-07/末 JC (ts), TM (p), Wilbur Ware (b), Frankie Dunlop (ds)
・07/末-08/12 JC(ts), TM (p), WW (b), Shadow Wilson (ds)
・08/13-08/末 JC (ts), TM (p), Ahmed Abdul-Malik (b), SW (ds)

・09/05-09/10or11 JC (ts), TM (p), AAM (b), Philly Joe Jones (ds)
・09/11or12-11/06 JC (ts), TM (p), AAM (b), SW (ds)

・11/21-12/15 JC (ts), TM (p), AAM (b), SW (ds)
・12/16-12/26 JC (ts), TM (p), AAM (b), Kenny Dennis (ds)

Frankie DunlopがMonkのDiscographyに現れてくるのは1961年4~5月のヨーロッパ・ツアーからなのだが、1957年のFive Spotですでに共演していたとは知らなかった。Monkとの相性は抜群だから、MonkはDunlopを手に入れるまで4年も待ってたわけか。

1週間程度とはいえ、Philly Joe Jonesが叩いているのも面白い。相性はあまりいいとはいえないが。Philly Joeは1969年のParis Liveで久々の共演を果たすことになる。

2017年2月1日水曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(3) MONK WITH COLTRANE

THELONIOUS MONK WITH JOHN COLTRANE [Riverside/Jazzland→Fantasy/OJC(ZYX Music)] rec.1957


















Cover Painting : Richard Jennings
Cover Design : Ken Deardoff

このMonkの肖像画を描いたJenningsは、Eric DolphyのOUTWARD BOUNDやOUT THEREのジャケ画でも有名。いわゆるProphetである。

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1957/07, NYC
JC (ts), TM (p), Wilbur Ware (b), Shadow Wilson (ds)
01. Ruby My Dear
02. Trinkle, Tinkle

1957/06/26, NYC
Ray Copeland (tp), Gigi Gryce (as), Coleman Hawkins (ts), JC (ts), TM (p), WW (b), Art Blakey (ds)
03. Off Minor (alternate take)

1957/07, NYC
JC (ts), TM (p), WW (b), SW (ds)
04. Nutty

1957/06/26, NYC
RC (tp), GG (as), CH (ts), JC (ts), TM(p), WW (b), AB (ds)
05. Epistrophy (alternate take)

1957/04/16, NYC
TM (p)
06. Functional (alternate take)

Quartetでの録音が3曲、MONK'S MUSICの残りtakesが2曲、HIMSELFの残りが1曲(Monkのソロ)、という構成。

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Quartetでの3曲の録音日ははっきりせず、1957年7月、Five Spot Liveが始まる直前といわれている。Five Spot Live 1957を想像するにはこれが一番。3曲しかないのが惜しまれる。

発表されたのは1961年と、録音の4年後。諸般の事情で、すぐには発表できなかったのだ。Quartetの録音は3曲しかなく尺も足りなかったろうし。

Impulse発足直後のColtraneブームに乗っかったリリースでもある。同様な便乗リリースはPrestigeも大量にやった。

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冒頭のRuby, My DearはMONK'S MUSICのHawkinsと聴き比べるとおもしろい。

情感たっぷりなHawkins。一方のColtraneはずっとドライでメカニカル。RubyとはMonkの姉の友だちだというが、頭のなかにはそれぞれ別のRubyさんの姿が浮かんでくる。

Coltraneの、高音を多用したちょっとか細い音で、その上ビブラートをかけないtsは、Hawkinsとは全く対照的で、そのドライな感覚は当時新しいものだったろう。

Coltraneはここでもメロディからあまり離れず、オカズをたくさんくっつけるやり方で仕上げている。

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Trinkle, TinkleはFour in Oneと並び、Monkの珍曲として有名。どうしてこういう、麻雀牌をかき混ぜるような曲を書くんでしょうか、この人は。

いわゆるsheets of soundで吹きまくるColtrane。バックからMonkははずれてColtraneが独走する。録音はないが、Five Spot 1957でも当然こうだったのだろう。後述のFive Spot 1958も同じルーチンだったし。そして、それはCharlie Rouse時代にも受け継がれる。

Nuttyでも、アドリブ・パートではMonkがはずれたトリオで、Coltraneは思う存分吹きまくる。

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Off MinorとEpistrophyはMONK'S MUSICの残りtakes。このOff Minorは、MONK'S MUSICのCD追加曲と同じだと思う。

Epistrophyは3分程度のショートバージョン(MONK'S MUSICでは11分近くもある)。ソロもColtraneとCopelandだけできっちりまとまってる。トチリもないし。MonkもプロデューサーのOrrin Keppnewsは、トチリはあっても11分バージョンを収録したかったんだろうなあ。

Functionalはソロ作HIMSELFの残りtake。

このアルバムの聞き所はやはりQuartetの3曲になるんだが、それでも3曲しかなく、Coltraneファンには物足りないだろう。

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そして、Monk 4は1957/07/18~12/26、Five Spot Caféに長期出演。途中でWilbur Wareがクビになり、8/12からAhmed Abdul-Malikがbassに座る。

残念ながらそのライブ録音は残っていない、とされていたが、実はわずか2曲だが、発掘されているのだ!

以下次回。4回目にしてようやくFive Spotに到達だ。