2017年2月25日土曜日

Bye-Ya 7連発!→ 8連発!

Monk Five Spot (6)に進む前に、Bye-Yaの話を。

前回のエントリーでも述べたように、私はMonkの演奏の中で

THELONIOUS MONK (TRIO) [Prestige(Fantasy/OJC)] rec.1952&54, re-issue 1982



1952/10/15, NJ
TM (p), Gary Mapp (b), Art Blakey

07. Bye-Ya

が一番好きです。この曲の録音は少ないんで、それが残念。

というわけで、このBye-Yaの録音をいろいろ集めてみた。

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上記盤は、Monkの数少ないトリオ作品。Monkはバリバリ弾きまくっています。Bye-Yaはラテン・リズムの曲で、Monkのピアノもよくころがる。

Blakeyの煽りに乗って大盛り上がり。MonkとBlakeyのコンビネーションはほんと素晴らしい。もうね、血沸き肉踊るとはこのことです。特にアドリブ2コーラス目は凄い。

ちょっと不思議なのは、トリオの他にclaveのリズムを刻んでいるもう一人がいるんではないか?ということ。Blakeyがこれもやっているのなら超人だが、おそらく誰か別人だと思う。聞こえるのは遠くからだし、それに下手だ。

最初はGary Mappがベースを休んで叩いてるのかとも思ったが、ベースもちゃんと聞こえる。Claveではなく、その代用品として、そこら辺にある板を叩いているような感じ。誰なんだろう?

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Thelonious Monk Quartet with John Coltrane AT CARNEGIE HALL [Blue Note(EMI)] rec. 1957, pub. 2005


Art Direction & Design : Burton Yount

1957/11/29, Carnegie Hall, NYC
JC (ts), TM (p), Ahmed Abdul-Malik (b), Shadow Wilson (ds)

06. Bye-Ya

これは前回紹介した、Monk – Coltraneの数少ない録音の1つ。

Coltraneのラテン乗りというのも珍しいが、ソロではラテン・リズムとは関係なくいつものColtrane。Shadow Wilsonも大活躍。

Monkのソロは隙間の多い演奏で、トリオ作のBye-Yaとはだいぶ印象が違っておもしろい。

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Thelonious Monk Quartet featuring Johnny Griffin/COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958 [Riverside→Lonehill Jazz] rec.1958, pub. 2009


Concept & Design : Comunicom

1958/07/09, Five Spot Café, NYC
JG (ts), TM (p), AAM (b), AB (ds)

CD2-08. Bye-Ya / Epistrophy

これは次回書くJohnny GriffinとのFive Spot 1958の残りテープからの発掘曲。

初出は、LPだと22枚組、CDだと15枚組の巨大Boxセット

Thelonious Monk/COMPLETE RIVERSIDE RECORDINGS [Riverside] rec. 1955-1961, pub. 1984

だったと思う。

残りテープと言っても、IN ACTION/MISTERIOSOの録音日である8月7日ではなく、それより前の7月9日。テスト録音だったのだろうか、この日の録音からは、当初リリースはなかった。

メンバーは同じ・・・と思いきや、なんとこの曲だけドラムスがArt Blakeyなのだ。Bye-Ya初出時のドラマーBlakeyがバックアップしてくれるのだから心強い。

Roy Haynesのドラム・セットを借りているようで、最初のうちはHaynesみたいに細かくスネアを刻んでる。他人のドラム・セットを使うと、その人に似てしまうのだな。段々慣れてきて、お得意のドラム・ロールが出始めるとBlakeyも本調子。

GriffinのソロもMonkのソロも絶好調。しかしMonkのソロは、トリオ作の時のようなラテン乗りではない。やはりあれは、稀有な演奏だったということがわかる。

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The Thelonious Monk Quartet/MONK'S DREAM [Columbia] rec. 1962



1962/10/31, NYC
Charlie Rouse (ts), TM (p), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)

07. Bye-Ya

お次は、Columbiaに移籍しての第1作目。Monkの円熟期だ。

Columbiaでの初録音にBye-Yaを持ってくるところは、Monkの気合の入り具合が伺える。MonkのBye-Yaの正式録音は、Prestigeのトリオ盤とこれしかないのだ。

よくころがるドラムスFrankie Dunlopはこの曲にピッタリ。オープニングもDunlopからだ。

RouseもMonkに合わせて、跳躍の多いフレーズを多用。これだからMonkは手離さないよね。

Monkがソロで隙間を作ると、Dunlopがすぐさま反応しておかずを入れる。勘のいい人だ。私はColumbiaでは、1962~63年のドラムスDunlop時代(バンドメンバーとしては1961年4~5月のEurope Tourから)が一番好きなんだけど、もっと長くやってほしかったなあ。

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Columbia移籍当初の1963年には、MONK'S DREAMのアルバム・プロモーションの意味もあって、ライブではこの曲がよく演奏されていた。当時のブートでもいくつか聴けるが、今回は省略。

次のアルバム収録のBye-Yaも、その流れで演奏されている。

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Thelonious Monk/MONK BIG BAND AND QUARTET IN CONCERT [Columbia(SONY)] rec. 1963, original release 1964, re-issue 1994


Art Direction : Allen Weinberg

1963/12/30, Lincoln Center, NYC
Thad Jones (cor), Nick Travis (tp), Eddie Bert (tb), Steve Lacy (ss), Phil Woods (as、cl), CR (ts),Gene Allen (bs, bcl, cl), TM (p), Butch Warren (b), FD (ds), Hall Overtone (arr)

CD1-01 Bye-Ya

Riverside時代のTown Hall Liveに続く大編成もの第2弾。

Monk研究の第一人者Steve Lacyの参加も注目だが、Lacyのソロはない。しかし、Lacyの存在感は特別で、アンサンブルにあってもLacyだけ浮き上がって聞こえてくる。

Monkは、アルトではPhil Woodsがお好みらしく、大編成ものになると必ずWoodsが呼ばれる。意外な関係。Gerry Mulliganも呼んでやればよかったのに(ギャラが高かったのかもしれない)。

もともとLP1枚ものだったのが、1994年の再発CDで未発表曲を収録しCD2枚組となった。Bye-Yaはその時に日の目を見た曲。

ソロ回しは、Thad (cor) → Woods (as) → Rouse (ts) → Monk (p)。Thadのソロの後半から、ホーン奏者のソロの間、Monkはほとんど休んでいる。何やってたんだろう?Thadあたりは、曲を持て余している感じ。MonkにはClark Terryの方が相性がいい。一番こなれたソロを展開するのはやはりRouseだな。

テーマのアンサンブルに合わせて、メロディに寄り添ったドラムを展開するDunlopも聴き所。この人は、私はEd Blackwellと同じ仲間に入れているのだが、ホントにメロディアスかつ切れのいいドラムだ。

Frankie Dunlopは、このコンサートを最後にMonk 4から脱退。1964年頭から後任にBen Rileyが入る。

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Steve Lacy PLAYS THELONIOUS MONK : REFLECTIONS [Prestige/New Jazz(Fantasy/OJC)] rec. 1958, re-issue 1990



1958/10/17, NJ
SL (ss), Mal Waldron (p), Buel Neidlinger (b), Elvin Jones (ds)

04. Bye-Ya

上記盤にも参加しているSteve Lacyは、1950年代からMonkの曲を演奏し続けているMonk研究のパイオニアだ。

デビュー作のSOPRANO SAX [Prestige] rec. 1957でもMonkの難曲Workを取り上げる、という無茶なことをしているが、この第2作目はなんと全曲Monk曲集。

今でこそMonk曲集は珍しくはないが、1958年にはそうとう珍しかったはず。無謀と思われていたかもしれない。

このアルバムは、ドラムスに当時売り出し中の若手Elvin Jonesを入れたのが成功のキー。

Bye-YaでもElvinが大活躍。Lacyはいつものようにクールにソロを処理しているのだが、ElvinはオリジナルでのBlakeyに倣って、ラテン・リズムを刻んでいる。MalはちょっとMonkを真似している感もある。

しかしMonkの曲の中でも、Bye-Yaはストレートに陽性の曲調なので、屈折した曲が得意なLacyやMalとは、あまり相性がいいとはいえない。

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最後に紹介するのは、再び登場の

Hal Willner/THAT'S THE WAY I FEEL NOW : A TRIBUTE TO THELONIOUS MONK [A&M(キャニオン)] pub. 1984


Design : M&Co. New York

ca.1984, NYC
Steve Slagle (as), Dr. John (p), Steve Swallow (b), Ed Blackwell (ds)

D05. Bye-Ya

Carla BleyんとこのアルトSlagleとベースSwallow、この組み合わせに意外性はないが、それとEd Blackwellを組み合わせるというのは異常だ。さらにJazz畑ではないDr. Johnを加えるのだから、さすがHal Willner。プロデュースが冴え渡っている。

とはいえ、実はDr. JohnもEd BlackwellもNew Orleans出身で、共通性があるのだ。「Carla Bley対New Orleans」といったところか?

曲はBlackwellのドラム・ソロから始まる。これがとにかく、よくころがるころがる。テーマが始まる前から血沸き肉踊る展開。

テーマに続いてSlagleのソロ。Bleyバンドでもいソロをする人だが、ここでもよく鳴るアルトを吹いている。

続くDr. Johnのソロは、Monk風に弾かず、自分のGumboサウンドだ。Monkに無理に合わせず、自己流のMonk解釈を並べているこのアルバムらしいところ。

これはオリジナルに匹敵する名演だ。

ところが!この曲はCD化の時にカットされてしまい、アナログ盤でないと聴くことが出来ない。なんということだ!

しょうがないので、YouTubeで聴いてください。

That's The Way I Feel Now - Tribute to Thelonious Monk LP2 - Side4 [FULL ALBUM](Posted by PeanutButterSocks on 2017/02/21)
https://www.youtube.com/watch?v=3XV79GSjA0g

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Bye-YaはMonkの曲の中では、注目されることがあまりない曲ですが、いろいろ名演が多い。特にオリジナルのPrestige盤とHal Willner盤は必聴!

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(追記)@2017/03/01

もう一つ足して8連発にしましょう。足したのはこれ↓

INTERPRETATIONS OF MONK AT THE WOLLMAN AUDITRIUM, COLUMBIA UNIVERSITY, NOVEMBER 1, 1981(Live from Soundscape Series) [DIW] rec. 1981, pub. 1994



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一見、Monkの追悼曲集のように思えるが、コンサートが開かれた日は1981年11月1日。Monkが亡くなる3ヶ月半前(亡くなったのは1982/02/17)。

ピアノ以外の6人Don Cherry (tp)、Roswell Rudd (tb)、Steve Lacy (ss), Charlie Rouse (ts)、Richard Davis (b)、Ben Riley or Ed Blackwell (ds)を固定し、そこに4人のピアニスト、Muhal Richard Abrams、Barry Harris、Anthony Davis、Mal Waldronを交代ではめ込んだ超豪華コンサートだ。CD4枚組。

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コンサートの全容については、いつかあらためて語るとして、ここではBye-Yaについてだけ語ることにしよう。

Bye-Yaが演奏されたは、CD2枚目、Barry Harrisのセット。

1981/11/01, NYC
Don Cherry (tp), Roswell Rudd (tb), Steve Lacy (ss), Charlie Rouse (ts), Barry Harris (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)

CD2-05. Bye-Ya

ソロ順は、DC (tp) → CR (ts) → RR (tb) → SL (ss) → BH (p)

ドラムスはまたEd Blackwellですが、こっちではちょっとおとなしめ、というかわりと普通。

ソロの先頭はCherry。コード進行など全く気にしない毎度おなじみのソロ。意外かもしれないが、この人もMonk関係の場所に引っ張り出されたり、Monkの曲を演奏したりすることがわりに多い人だ。

続くRouseは安定のフレージングで、やっぱりMonk's musicにはRouseが欠かせないことを感じさせる。

Ruddはミュートをかけたソロで、ちょっとおもしろい出来になっている。まるでCootie Williamsみたいだ。

Lacyは相変わらず、リズミックなこの曲とは相性あんまり良くないが、最初の方のリズムを刻むようなソロはかなりおもしろい。上述のREFLECTIONSから23年。その間、何度も何度も演奏してきたことを感じさせる。まさにplays Monkの進化形だ。

Barry Harrisは、かなりMonkっぽい弾き方をしている。この人はそういうことをする人ではない、と思っていたんだが、意外だった。ここではBlackwellのブラシも聞き所。

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このCD、中古でもめったに見かけないし、あっても結構高い。けど、買い逃すと後で絶対後悔するから、見つけたら、なりふりかまわず買っておけ!

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