2017年10月10日火曜日

ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み

Jazzmanに関する日本語の本で、一番多いのはMiles Davis本だろう。ちゃんと調べたわけじゃないが、間違いないと思う。これに続くのが、たぶんJohn Coltrane本。

続いて、おそらくCharlie Parker本とThelonious Monk本が並ぶのではないか?

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私が持っているMonk本は次の通り。

・村上春樹ほか・著, 村上春樹・編訳 (2014.10) 『セロニアス・モンクがいた風景』. 新潮社, 東京.

・ジャズ批評, no.94(1998.1), セロニアス・モンク大全集. 
→ 再編 : ジャズ批評編集部・編 (2002.12) 『定本セロニアス・モンク』(ジャズ批評ブックス). 松坂, 東京.

・ローランド・ウィルド・著, 水野雅司・訳 (1997.11) 『セロニアス・モンク 沈黙のピアニズム』. 音楽之友社, 東京.

・講談社・編 (1991.1) 『セロニアス・モンク ラウンド・アバウト・ミッドナイト』. 講談社, 東京.

どれもモンクへの愛情にあふれた名作ばかり。

他に

・T・フィッタリング・著, 後藤誠・訳 (2002.6) 『セロニアス・モンク 生涯と作品』. 勁草書房, 東京.

があるが、これはあんまりおもしろくなかったなあ。

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2017年3月30日木曜日 Thelonious Monk at the Five Spot大全(11終) Five Spot 1958 with Sonny Rollins
2017年3月19日日曜日 Thelonious Monk at the Five Spot大全(8) Five Spot 1958 with Johnny Griffin -その2

を書く時に使った

・Robin D.G. Kelley (2009) THELONIOUS MONK : THE LIFE AND TIMES OF AN AMERICAN ORIGINAL. xviii+588pp.+pls. Free Press, New York.

が邦訳されました。

・ロビン・ケリー・著, 小田中裕次・訳 (2017.10) 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』. 673+30pp. シンコーミュージック・エンタテイメント, 東京.


装丁 : 石川絢士(the GARDEN)

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結構高い本なのだが、迷わずすぐに買いましたよ。

まだ本格的に読み始めて間もないので、これまで気になっていたところだけ先に拾い読み。

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(1) Monk with Charlie Rouse @Five Spot Café録音日

2017年3月26日日曜日 Thelonious Monk at the Five Spot大全(10) Five Spot 1958 with Charlie Rouse

で紹介した、Rouseが加入した1958年Five Spot録音

Thelonious Monk/LIVE IN NEW YORK VOL.1 [Thelonious→Explore] rec. 1958, pub. 2002, re-issue 2007

の録音日はいつなんだろう?という疑問。

こちらは、

モンクと以前に共演していたものの、当初ラウズは少々圧倒された。彼は十月二日の夜に、ほとんどリハーサルなしで初出演した。
同書, p.377

バンドがどういうサウンドになっているのか実際に知りたかったので、ラウズの初日か二日目に、モンクはニカに頼んで彼女のテープレコーダーをクラブに持って来てもらった。
同書, p.378

原注 第19章
(9) Thelonious Recordsはこの録音をCD "Live in New York Vol.1&2" としてリリースしている。
同書, 巻末p.23

というわけで、録音日は1958/10/02 or 03であることがわかった。

Rouseの演奏は、Monk 4に加わって初日~二日目という感じは全くしない。驚き。RouseはMonkに合わせることに関しては、まさに天才だ。

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(2)1961~62年の空白期間

1961年4~5月のヨーロッパ・ツアーから、Columbiaと契約して1962年10~11月にMONK'S DREAMを録音するまで、1年半もMonkの公式録音はない。この全盛期に1年半も空白期間があって、今まで誰も疑問に思わなかったんだろうか?

それを埋めるのは2つの非公式録音

1962/07/08 : Monk with Duke Ellington Orch @Newport Jazz Festival [Gambit]
1962/08 or 09 : Monk 4 @Village Gate, NYC [Xanadu]

だが、それでもまだ1年以上空白のままだ。

おそらくRiversideからColumbiaに移籍する手続きに手間取っていたんだとは思うが、それにしてもライブの情報すらないのはおかしい。もしかしてMonkは病気だったのでは?気になる・・・。

そういうわけで、ケリー本からこの間のMonkの動きを拾ってみると

1961/06/01~07/01 : Monk 4 @Jazz Gallery, NYC
1961/10/01~2 weeks : Monk 4 @Bird House, Chicago
1961/11/07~1 month : Monk 4+Clark Terry @Village Vanguard, NYC
1961/11/17 : Monk 4 @Hotel Pierre, NYC
1961/12/31 : Monk 4 @Carnegie Hall, NYC

1962/02/20-??/?? : Monk 4 @Village Gate, NYC
1962/04/前半~2 weeks : Monk 4 @Jazz Workshop, SF
1962/04/後半~04/29 (2 weeks) : Monk 4 @Club Renaissance, LA
1962/06/02 : Monk 4 @First International Jazz Festival (Jazz at the Coliseum), Washington DC
1962/07/08 : Monk with Duke Ellington Orch @Newport Jazz Festival [Gambit]
1962/07/10-??/?? : Monk 4 @Village Gate, NYC [Xanadu]

体調が悪い時期もあったようだが、意外にめいっぱい活動していた。一安心(50年以上前のことに?(笑))。

なお、Monkの活動日誌については、

・Chris Sheldon (2001) BRILLIANT CORNERS : A BIO-DISCOGRAPHY OF THELONIOUS MONK (Discogrphies, Number 89). Greenwood Press, Westport, CT.
https://books.google.co.jp/books?id=soVtoCn8pRQC&printsec=frontcover&dq=Thelonious+Monk&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjS1cyfmObWAhXFzbwKHVJHBccQ6AEIQzAE#v=onepage&q=Thelonious%20Monk&f=false

というものすごい本もあり、Monkの足取りがもっとくわしく記録されています。これもほしいなあ。

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(3) Monk with Ellington Orch @Newport Jazz Festival 1962

2017年1月2日月曜日 Thelonious Monk と Duke Ellington

で紹介した、1962年Newport Jazz FestivalでのMonk – Ellington共演。

これ、ものすごく面白い録音なんだが、それにしてもBilly Strayhornの編曲が、なんでまたあんな凶悪なんだ?(特に2曲目Frere Monk=Bolivar Blues)と思わないこともなかった。

その謎が、この本を読んだら解けた。

次の曲ストレイホーンの〈フレア・モンク〉はそれほどうまく行かなかった。エリントン自身もその曲はほんのわずかしか知らない様子で、「えーと、モンク・フレア?フレア?フレア・モンクだったかな?」と紹介している。誰もモンクに譜面を渡していなかったのか、モンクが見るのをやめにしたのかはわからないが、モンクは〈バルー・ボリヴァー・バルーズアー〉を弾き始めたのだ。一コーラス弾き終わると、バンドは〈フレア・モンク〉にいきなり入って、一方モンクはBフラットのブルースをインプロヴァイズしている。
同書, p.480

なんと、MonkとEllington Orchは互いに別の曲を演奏していたのだ!道理で、Ellington Orchが後で録音したFrere MonkにBolivar Bluesのmelodyが全然出てこないはず。

Strayhornの編曲が凶悪なアンサンブルに聞こえたのも当然だ。いやはや、ますますこの録音のおもしろさが増した。

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他にも面白いエピソード、初めて聞くエピソードが満載。Monkファンなら絶対買いの一冊です。

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(追記)@2017/10/11

かつて一九六六年にヘルシンキで、一群のレポーターがモンクのクラシック音楽に関する考え方と、ジャズとクラシック音楽が一体となれるのか否か、モンクに回答を迫ったことがあった。モンクのドラマーだったベン・ライリーは会話の成り行きを見守っていた。「誰もが、モンクがそれに答え、クラシック音楽とジャズの関係について、何らかの形で明快に語るのを聞きたがっていた・・・すると、モンクはこう言ったんだ。『二つは一つだ(Two is one.)』(後略)
同書, p.27

RouseのMonk 4脱退後の力作

Charlie Rouse/TWO IS ONE [Strata East] pub.1974

の元ネタは、Monkの名言だったのか!おんもしれー!

さあ、ますますこの本読みたくなったでしょ!

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(追記)@2017/10/12

河出書房新社の文藝別冊でもモンク特集本を出すようだ。

・河出書房新社 > もうすぐ出る本 > 文藝別冊 セロニアス・モンク モダン・ジャズの高僧 河出書房新社編集部 編(as of 2017/10/12)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309979328/

文藝別冊
KAWADE夢ムック
セロニアス・モンク
モダン・ジャズの高僧
河出書房新社編集部 編
ムック A5 ● 208ページ
ISBN:978-4-309-97932-8 ● Cコード:9473
発売日:2017.11.15(予定)
予価1,404円(本体1,300円)
サイズ:208ページ

バップの開拓者であり、バップを超える孤高のジャズ・ピアニスト、作曲家モンク。生誕100年、その圧倒的な音楽は、今さらに輝き今日の音楽シーンに影響を及ぼす。

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今どき「モダン・ジャズの高僧」なんていう、的はずれなキャッチフレーズ使ってるあたり、なんかガックリしてしまうが、中身がダメでもたぶん買うんだろうなあ。中身がいいにこしたことはないが・・・。

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