Jack Kerouac(1922-1969)はUSAの小説家。Allen Ginsberg、Willam S. Burroughsと共にBeat Generation=Beatnikという文学グループを形成していたとされる。
とはいえ、この三人はそれぞれ芸風が全く違う。この三人は、単に若い頃一緒につるんでいた仲間たちで、それが同じ頃に評価され始めたため、一緒くたにされているだけ。
しかしながら彼らは、WWII直後という時代に、進路も定まらずブラブラしているという、今でいうmoratoriumを体現していた。1960年代以降はごくありふれた風景である、「ダラダラ若者文化」の範となった連中なのだ。
そういったBeatnikたちは、確かにある程度同じグループにくくれる面はある。
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Kerouacの小説は10冊以上邦訳されているが、
・ジャック・ケルアック・著, 青山南・訳 (2010.6) 『オン・ザ・ロード』(河出文庫). 524pp. 河出書房新社, 東京.
カバー装画 : 下田昌克, カバーデザイン : 緒方修一
← 原版 : (2007.11) (池澤夏樹・編 世界文学全集1-01). 河出書房新社, 東京.
← 英語原版 : Jack Kerouac (1957) ON THE ROAD. 310pp. Viking Press, NYC.
にとどめを刺す。というより、これ一冊読んでおけば十分、というKerouacの代表作だ。
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なお、上掲書は新訳で、旧訳として、
・ジャック・ケルアック・著, 福田実・訳 (1959.10) 『路上』(世界新文学双書). 河出書房新社, 東京.
→ 再発 : (1970.8) (モダン・クラシックス)/(1977.10)(世界海外小説選)/(1983.2) (河出文庫) いずれも河出書房新社, 東京.
もある。お好きな方をどうぞ。
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『ON THE ROAD』は、Kerouacの分身であるSal Paradiseが、ヒッチハイク、バス、自家用車などでUSAを数度に渡り横断した際の、いわば旅行記だ。
BackpackersのBibleとも言われ、日本でも1960~70年代にUSAを横断する旅行スタイルが結構流行った。
しかし、行き先がAsia中心に変わった1980年代以降のbackpackersにとっては、「これがbackpackersのBible」と言われても、ピンと来ないのではないだろうか?
でも、いわゆる大上段に振りかぶったテーマ性もなく、あちこちを無軌道にうろつく旅行スタイルは、確かにbackpeckerの祖と言えよう。
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Salは自発的に旅立つときもあるが、旅の原動力となっているのは、友人Dean Moriarty。
こいつは、周囲を振り回すタイプのいわゆるmood makerで、なおかつtrouble maker。押しが非常に強く、ハッタリ屋でもある。一見とても魅力的な人物なので、色んな連中がこいつに引っかかる。
ところが、こいつは全くの無責任野郎で、あちこちに女を作ってはそれぞれにテキトーな事を言って回る男。しょっちゅう自分で自分を窮地に陥れるような奴だ。
自分の周囲には、いてほしくないタイプだなあ。いや、実際いたことがあるのだが、当然へきえきしたよ(笑)。
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このDean Moriartyにも実在のモデルがいる。それがNeal Cassady(1926-1968)。
こいつは、『ON THE ROAD』のMoriartyそのままの生き様だったらしい。Beatnikの連中には大きな影響を与えたようだが、自分は特に作品らしきものを残していない。まさにHippie Generationの元祖だ。
ちなみにNealの最期は野垂れ死に。
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小説では、Salは比較的受動的でおとなしい人物像だが、Kerouac自身はもう少し積極的に動く人物だったように思える。
思うに、Dean Moriartyの人物像にはCassadyだけではなく、実際は作者Kerouacの性格も入ってるような気がした。Moriartyに激しい性格を吸い取られてしまったKerouacの、残りの部分であるSalがおとなしく見えるは当然だろう。
Moriarty/Cassadyもそうなんだが、Kerouacもそれに負けず劣らずカッコつけだ。文体にしても、fashionにしてもそれが伺える。
やはり偉大なるカッコつけである、佐野元春あたりがKerouacを持ち上げるのもよく理解できる。
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しかしこの『ON THE ROAD』は、とにかくスイスイ読める。物語も淀みなく進んでいくし、一箇所に滞在中も休みなく動き回っている。若者の文学なのは間違いない。
Kerouacは、この小説を「三週間で書いた」と言っていたらしいが、思わず納得してしまうほど、小説にはスピード感がある。
しかし、実際は何年もかけて何度も書き直していたことが明らかになっているし、やっぱりKerouacはハッタリの人なのだ。
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他にもAllen GinsbergはCarlo Marxとして、そしてBurroughsはOld Bull Leeとして登場する。
Leeは第2部、Moriarty+SalがNew OrleansのLeeの家に数日滞在する場面に登場するだけだが、毎日heroineを打ってるし、coolでシニカルだし、子供へも愛情薄いし、会話の端々に小話(Routine)が挟まるし、まさにBurroughsそのままだ(笑)。
おもしろいのは、猫好きであることを明言していること。THE CAT INSIDEを書いたように、Burroughsは晩年すっかり猫派になるのだが、実は若い時から猫派だったのだ。
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必ずしも自分の好みではないのだが、ストレスなく楽しく読むことができた小説だ。1970年以降の「ダラダラ若者文化」が大好きな自分にとって、水が染み込むようによく理解できるのだ。
この「ダラダラ若者文化」は、薄まりながら、形を変えながら、今も続いているのだが、その1960年代的展開であるHippie文化の隆盛を横目で見つつ、Kerouacはアル中で死んでしまった。
片や、そこからは距離を置いて、孤高の存在となっていたBurroughsは、junkyのくせに83歳まで長生きした。これは一体なんだろうなあ・・・。
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(追記)@2019/04/12
ちなみにHippieとは、「Hipsterきどりの小僧」という意味だ。Hippie文化を生んだのがBeat Generationであることは、これからも明らか。
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(追記)@2019/04/12
草稿versionも刊行されている。
・ジャック・ケルアック・著, 青山南・訳 (2010.6) 『スクロール版 オン・ザ・ロード』. 543pp. 河出書房新社, 東京.
(from Amazon.co.jp)
← 英語原版 : Jack Kerouac, Howard Cunnell (ed) (2007) ON THE ROAD : THE ORIGINAL SCROLL. 408pp. Viking, NYC.
登場人物を実名に戻し、削除箇所を回復。そして章分けはもとより、段落もなくしたversionだ。ダラ書きKerouacの真骨頂。
自分は・・・もういいな・・・。高いし、そこまでKerouacマニアではないのだ、実は。
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