カバー装画:飯田淳, デザイン:新潮社装幀室
← 英語原版 : Jack Keouac (1958) THE SUBTERRANEANS(An Evergreen Book). 111pp. Grove Press, NYC.
なお、上記書は新訳で、旧訳として
・ジャック・ケラワック・著, 古沢安二郎・訳 (1959.7) 『地下街の人びと』(新潮・現代世界の文学). 196pp. 新潮社, 東京.
というのもある。
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これは、『ON THE ROAD』の後、1953年のお話。『ON THE ROAD』同様、ほとんど私小説。
作者の分身Leo Percepiedと、黒人女性Mardou Fox(Alene Leeがモデル)の出会いと別れを描く。そこに、Beat Generationのボヘミアンたちの日々が散らされる。
なお小説では、舞台はSan Franciscoに変えられているが、実際はNew Yorkのお話である。
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『ON THE ROAD』では、主人公がどんどん移動していくので、主人公の意識だだ漏れ文体でも、読者もそれにつられてフレッシュな感覚を持続でき、面白く読んでいけた。
しかし、本書のように、定住し、狭い地域、狭い人間関係の中で、同じ手法を取られると、なかなかにつらい。堂々巡り、煮詰まり感、螺旋状に険悪に落ちていく人間関係・・・。
しかし、ダラダラ若者文化の黎明期の姿が実写されており、その意味ではとても面白い。やっぱりこれは、読むより実践したほうが面白いに決まってる。
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なお、本作の登場人物もいずれもモデルがあり、
Adam Moorad(Allen Ginsbergがモデル)
Frank Carmody(William S. Burroughsがモデル、北Africa出身の作家ということになっている)
Jane(Joan Vollmer=Burroughsの妻がモデル、小説上でも死んでいる)
Sam Vedder(Lucian Carrがモデル)
Leroy(Neal Cassadyがモデル)
Yuri Gligoric(Gregory Corsoがモデル)
なので、これを念頭に読むとまた違って見えるかもしれない。
なお、前回紹介した『ケルアック』には、Kerouac全小説での「登場人物名-実在の人物名」対比表がある。便利。
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ただし、1953年当時、BurroughsはとっくにMexicoに去っている。私小説とはいえ、時空はねじ曲がっている。1940年代のBeat Generationの日々がかなり反映されていると思った方がいい。
なお、BurroughsのJoan射殺事件は1951年だから、小説上ではJoanがモデルのJaneがすでに死んでいるのは、そこだけ変に時系列に忠実でおもしろい。
発表は1958年なのだが、小説の舞台となった1953年夏の直後にはKerouacはこの小説をもう書いていた。だが、その後何度も書き直しているため、その後の情報が混入しているのだ。
BurroughsがモデルのFrank Carmodyが北Africa出身になっているのも、1958年の発表当時BurroughsがTangierに住んでいたことが反映されているし。
・Wikipedia (English) > The Subterraneans (This page was last edited on 15 January 2019, at 02:21 (UTC).)
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Subterraneans
・David S. Willis/Beatdom > Christina Diamente/Walking With the Barefoot Beat: Alene Lee (Posted by David S. Wills on February 17, 2010)
http://www.beatdom.com/walking-with-the-barefoot-beat-alene-lee/
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なお、『THE SUBTERRANEANS(地下街の人びと)』は映画化されているのだが、その映画についてはのちのentryで触れる。
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(追記)@2019/04/20
しかし、「THE SUBTERRANEANS=地下街の人びと」という邦題はどうなんだろ。地下室の部屋に集まって、ウダウダする連中の話なんだが、地下街ではないよな。
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