2017年3月11日土曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(6) 1957年末~1958年前半のMonk

1957年12月26日に、長かったFive Spot Caféの出演を終え、Monk Quartetは一時解散。

Shadow Wilsonは12月半ばに脱退。Five Spot最後の10日間はKenny Dennisがドラムスを務めた。

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その直前、MonkはCBS TVへの出演を果たす。

THE SOUND OF JAZZ 
1957/12/08, NYC

この番組は、Count Basie、Coleman Hawkins、Billie Holidayらを招き、その演奏を紹介。USAでも初の本格的なJazz番組となった。

その6曲目にMonk Trioが登場。Five Spotの評判は、ついにTVにまでMonkを引っ張り出したわけだ。

Thelonious Monk (p), Ahmed Abdul-Malik (b), Ossie Johnson (ds)

06. Blue Monk

DVDは不完全版しかリリースされていない上に、Monkの演奏はカットされている。しょうがないのでYouTubeでどうぞ。

YouTube > The Sound Of Jazz (Cbs 1957) Count Basie,Red Al..(uploaded by jean françois Fernandez on 2013/03/09)
https://www.youtube.com/watch?v=sMkHxEyXV5Y

Monkの演奏だけなら、映画/DVD

Charlotte Zwerin (dir) (1988) THELONIOUS MONK :  STRAIGHT, NO CHASER. Werner Bros., USA.
→ DVD : (2001) Werner Home Video, USA.



でも見ることができる。

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Monkはハンチングにサングラスという怪しい姿で登場。ドラムスはまだShadow Wilsonがいたはずだが、なぜかBillie HolidayのバンドからOsie Johnsonを借りてきている。

演奏はいつもの通り。今のJazzファンにとってはどうということはないが、あの異様な姿・演奏に当時USAのお茶の間は驚きだったろう。

Basieが真正面に座ってずっと見つめ続けるので、Monkは相当やりにくかったらしい。「殴ってやろうかと思った」とまで言っている。

かつての親分Coleman Hawkinsも2度ショットを抜かれており、楽しそうにスイングしている。Monkの最大の理解者だね。

それにしても当時、Monkの曲では、'Round Midnightを別格として、Blue Monkが真っ先にポピュラーになったことがわかる。わかりやすいしね。

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1958年2月には、後述するJohnny Griffin Sextetの録音に1曲ゲスト出演。

5月には、Clark Terry Quartetの録音に、珍しくサイドマンとして登場。

Clark Terry with Thelonious Monk/IN ORBIT [Riverside(ユニバーサル)] rec. 1958, re-issue 2008


Cover Design : Paul Bacon

1958/05/07&12, NYC
CT (flh), TM (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)

01. In Orbit
02. One Foot in the Gutter
03. Trust in Me
04. Let's Cool One
05. Pea-Eye
06. Argentia
07. Moonlight Fiesta
08. Buck's Business
09. Very Near Blue
10. Flugelin' the Blues (CD Bonus)

どちらもバリバリのBe-BopミュージシャンとはいえないClark TerryとMonkは、思いのほか相性がよい。Monkは、いつものホーン奏者の邪魔をしているとしか思えないようなバッキングはここでは控えめ。だいぶTerryに気を使っているよう。

03. Trust in MeはMonkのおとなしいバラード・プレイが聴きどころ。珍しい演奏だ。他にも、日頃演奏しない曲をMonkがどう料理しているかが聴きどころ。

Monkの曲は、04. Let's Cool Oneが取り上げられている。ここだけClark Terryがゲスト扱い。Monkとの共演は3度目になるPhilly Joeが楽しげだ。MilesバンドをやめてからのPhilly Joeはパッとしないので、Monkのバンドに入っていたらおもしろかったのにな。

Sam JonesとMonkはこれが初共演。翌年、Sam Jonesは短い間だったが、Monk 4のレギュラーとなる。

また、Clark Terryは、1967年のMonk Septet/Octetのヨーロッパ・ツアーにゲストとして呼ばれ、Monkと再演する。

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1958年7月には、トリオでNewport Jazz Festivalに出演。これが有名な映画

Aram Avakian+Bert Stern (dir) (1960) JAZZ ON A SUMMER'S DAY(真夏の夜のジャズ). New Yorker Films, USA.

への出演だ。

映画では1曲だけ、またしてもBlue Monkが取り上げられたが、実はこのステージでは4曲演奏されている。そのすべてを収録したのが、

2017年1月2日月曜日 Thelonious Monk と Duke Ellington

でも紹介した

Thelonious Monk Trio & Quartet/UNISSUED LIVE AT NEWPORT 1958-59 [Gambit] pub.2008



ソースはラジオVoice of America放送のAir Checkとみられる。短波なので高音はごっそり飛んでいるが、録音は悪くない。

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1958/07/07, Newport Jazz Festival, Newport, Rhode Island
TM (p), Henry Grimes (b), Roy Haynes (ds)

01. Just You, Just Me
02. Blue Monk
03. 'Round Midnight
04. Well You Needn't

ここでRoy Haynesが登場。その後のFive Spot 1958を通してMonk 4のレギュラーとなる。当時レギュラーだったはずのAhmed Abdul-Malikはなぜかお休み。1960年代にフリージャズ畑で活躍するHenry Grimesの姿が珍しい。

スタンダードのJust You, Just Meから始め、Monkの曲では人気の2曲Blue Monk、'Round Midnightと続けるあたりは、Jazzファンではない一般人が多い客層に、Monkなりに気を使った選曲。全体に、Monkにしてはわかりやすい演奏になった。

映画では、Blue Monkにヨットレースの映像とアナウンスがかぶさるという、Monkファンにとっては噴飯物の出来だったが、それでもMonkの映像では一番のメジャーどころには違いない。

写ったのは一瞬だったが、食い入るようにMonkの演奏を見つめるGerry Mulligan(Festival/映画の出演者でもある)の姿が印象的だった。この人ほんとにMonkが大好きなんだな。映画STRAIGHT, NO CHASERに収録されたMonkの葬式でも最前列にいたし。

Well, You Needn'tではRoy Haynesが暴れまくり、Five Spot 1958での活躍を予感させてくれる。

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このトリオにAhmed Abdul-Malikが戻って、そこにJohhny Griffinが加入し、いよいよFive Spot第2ラウンドの開幕だ。

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(追記)@2017/04/01

・JAZZDISCO.org > Sonny Rollins > Discography(as of 2017/04/01)
http://www.jazzdisco.org/sonny-rollins/discography/

を見ると、1958年のNewport Jazz FestivalにはSonny Rollinsもpianoless trioで出演しており、その時のbass、drumsがGrimesとHaynesだった。もしかすると、Monkはこの二人をRollinsから借りたのかもしれない。

そして、その数日後Rollinsはこの二人を伴ってTHE BIG BRASS [Metrojazz]を録音している。

当時のRollinsはレギュラー・バンドを持たない人だったが、Grimes、Haynesが、一時的ではあるがRollins Bandのレギュラーだったと見てよさそう。

HaynesはNewport 1958でMonkに気に入られ、そのままFive Spotへ。GrimesはしばらくRollinsとつき合い続け、1959年のヨーロッパ・ツアーを共にする(1963年のツアーでも呼ばれた)。

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