2017年3月16日木曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(7) Five Spot 1958 with Johnny Griffin -その1

Johnny GriffinのMonkとの初共演は、

ART BLAKEY'S JAZZ MESSENGERS WITH THELONIOUS MONK [Atlantic] rec. 1957



1957/05/14&15, NYC
Bill Hardman (tp), JG (ts), TM (p), Spanky DeBrest (b), AB (ds)

01. Evidence
02. In Walked Bud
03. Blue Monk
04. I Mean You
05. Rhythm-A-Ning
06. Purple Shade

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当時のJMは、後のBenny GolsonやWayne Shorterのような音楽監督がおらず、「暗黒時代」と言われていた。

そこに当時のレギュラー・ピアニストSam Dockeryの代わりにMonkがゲスト出演。JMにしては珍しくAtlanticへの録音だ。単発だけど。

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Monkをゲストに迎える、というのはBlakeyのアイディアなのか、ProducerのNesuhi Ertegunのアイディアなのかわからないが、まさに卓見だ。BlakeyとMonkの相性は最高だし。

そしてGriffinとの相性も最高であることが、ここで明らかになる。

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6曲中Monkの曲が5曲。いきなり難曲Evidenceから始まるあたり、Monk色が強い。

放っておくとMonkのリーダー作になってしまうので、Blakeyはかなり意識的に音を多めにしている。

GriffinはMonkの難曲をサクサクこなしていく。I Mean Youを除く4曲はFive Spot 1958でも再演されているし、ここでGriffinはMonk曲を自家籠中のものにしたよう。

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他人のバンドとは思えないほどMonkは自由。自分のソロなのに、数秒間沈黙が続くとか、普通ありえない。Blakeyが焦って煽ってきてようやくソロが続く。ある意味エキサイティング。

最後のPurple ShadesはGriffinらしいBlues曲。Monkの変な解釈がおもしろい。Five Spotでも、1曲くらいGriffinの曲やってもおもしろかったかもしれない。

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Jazz Messengersの作品としても、Monkの作品としても、注目されることは少ないが、名盤だと思う。

しかしステレオ黎明期らしいとも言えるのだが、左チャンネルにBlakeyはじめJM全員を集めてしまい、右チャンネルはMonkだけ、という珍妙なミキシングはなんとかならんものか。

Monkはしょっちゅう沈黙するのだが、すると右チャンネルからはしばらく何も聞こえない。この放送事故みたいな時間帯が結構あるのは笑えるけど・・・しかし。

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Griffinは1957年3月に、Jackie McLeanに代わってJMに加入し、1957年12月まではJMのレコーディングに名前が見える。

1958年になると、BlakeyもGriffinセッション・ワークが忙しくなり、JMはお休み状態だったようだ。

JMが復活するのは、1958年後半。Benny Golsonが加入し、Lee MorganやらBobby Timmonsを引っ張りこんでMOANIN' [Blue Note] rec. 1958/10/30を録音して以降だ。

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GriffinがMonk 4に加入したのは1958年のいつごろだろうか?7月のNewport Jazz Festivalはまだトリオでの出演だから、Five Spot Liveが始まる8月の直前だろう。

Griffin参加Monk 4の録音は、このFive Spot Liveしかない。他にライブ活動があったかも怪しく、Griffinのレギュラー期間は、おそらくFive Spot Liveの間だけだったのではないかと思う。

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Five Spot 1958は、通常IN ACTIONとMISTERIOSOの2枚にまとめられているが、その後の発掘曲も含めて集大成した2枚組がこれ↓

Thelonious Monk Quartet featuring Johnny Griffin/COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958 [Riverside→Lonehill Jazz] rec. 1958, pub. 2009



これはかなりのお得盤だ。

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2枚目の最後に収録されているのが、

1958/02/25, NYC
Donald Byrd (tp), JG (ts), Pepper Adams (bs), TM (p), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)

2-09. Coming on the Hudson

これは、

JOHNNY GRIFFIN SEXTET [Riverside] rec. 1958

録音時に、Kenny Drewに代わって、1曲だけMonkが加わったもの。長らくお蔵入りとなっていたが、Monkの未発表曲集

Thelonious Monk/BLUES FIVE SPOT [Milestone]

で初公開された。

すでに共演経験があるはずのPhilly Joeでも、Monkのリズム感覚に合わせるのに苦労している。Byrdもこの面妖な曲に相当とまどっている様子。すごくおもしろい。

そんな中、GriffinはMonkに惑わされず、グイグイ吹きまくる。これはFive Spotでも同じで、すでにMonkとの共演のコツを掴んでいることがわかる。

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1958/07/09, Five Spot Cafe, NYC
JG (ts), TM (p), Ahmed Abdul - Malik (b), Roy Haynes (ds)

2-03. Evidence
2-04. Blues Five Spot
2-05. In Walked Bud / Epistrophy (theme)
2-06. Sweet Stranger (TM solo)
2-07. 'Round Midnight

1958/07/09, Five Spot Cafe, NYC
JG (ts), TM (p), AAM (b), AB (ds)

2-08. Bye-Ya / Epistrophy (theme)

ここからFive Spot 1958録音が始まる。

しかし、これはIN ACTION/MISTERIOSOが録音された08/07の1ヶ月前の録音。テスト録音だったのだろうか。

(追記)@2017/03/18
リリース用の本番録音だったらしいが、Monkが気に入らず、08/07に再度録音となったらしい。

今は両盤にボーナス・トラックとして収録されているケースが多い。

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Coltraneは迷っている状態でMonkに出会い、懸命にMonkの音楽を吸収しようとしていた。MonkとColtraneの音楽性は結構異質なんだが、ColtraneがMonkに擦り寄る形で、意外にバランスがとれていた。

今回のQuartetは、GriffinにしてもHaynesにしても、すでに自分のスタイルが完全に確立されている。従って、Monkの色にあまり染まらない。むしろMonkとぶつかり合うことで、丁々発止の勝負を繰り広げている感じ。そんなことができるミュージシャンは、滅多にいない。

Coltrane時代とは、また別の、非常にスリリリングなライブ録音となった。Monk作品としては、むしろ珍しい作品といえるかもしれない。

GriffinのソロでMonkが休んでいるときなど、完全にJohnny Griffin Trio Play Monkになってるし。Monk作品としても、Griffin作品(曲は全部Monkだが)としても聴くことができる。

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'Round Midnightは、後にGriffinの得意曲になることもあり、またIN ACTION/MISTERIOSOでは演奏されていないので、ありがたい収録。

Haynesに代わってBlakeyが叩いたBye Ya/Epistrophyについては、前々回の

2017年2月25日土曜日 Bye-Ya 7連発!→ 8連発!

を参照のこと。

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次回は、Five Spot 1958の核心、IN ACTION/MISTERIOSOを見ていこう。

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