2017年3月22日水曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(9) Five Spot 1958 with John Coltrane

Coltraneの一時的とはいえ、Monk 4への復活である。

前回述べたように、1958年のFive Spot Liveでは、Griffinが留守がちであったため、Monkは複数のサックス奏者をトラ(エキストラ)として用意していた。

その一人が、前年のレギュラーJohn Coltrane。

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1958年初頭から、ColtraneはMiles Davisが再開したバンドに復帰。旧Quintet(MD (tp), JC (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds))にCannonball Adderley (as)を加えたSextetとなった。

1958/02~03にはMILESTONES [Columbia]を録音。Mode奏法の実験が開始されたアルバムである。

5月には、Graland、Philly Joeに替わってBill Evans (p)とJimmy Cobb (ds)が加入。当初お蔵入りとはなったが、1958 MILES [Columbia]セッションを録音。

7月にはMonkもトリオで出演したNewport Jazz FestivalにMiles 6も出演し、NEWPORT '58 [Columbia]として記録が残っている。

09/09には、Columbia Recordsのコンベンションで演奏。こちらも後にJAZZ AT THE PLAZA [Columbia]として発表された。MonkとのFive Spot Liveの2日前だ。忙しいね、どうも。

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自信たっぷりに吹きまくるColtraneの評判はうなぎ登り。

Prestigeのセッションも相変わらず多く、2月には名盤SOULTRANE [Prestige]、3月にはSETTIN' THE PACE [Prestige]、5月にはBLACK PEARLS [Prestige]、7月にはSTANDARD COLTRANE/STARDUST/BAHIA [Prestige]に分散収録される8曲を録音。

もう留まるところを知らない。

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そんな多忙なColtraneでも、Monkの頼みとあらば、さっそくトラに駆けつける。

そのColtraneがGriffinのトラを務めた時の録音がこれ↓

The Thelonious Monk Quartet featuring John Coltrane/LIVE AT THE FIVE SPOT : DISCOVERY! [Blue Note(東芝EMI)] rec. 1958, pub. 1993


Art Direction & Design : Oscar Schnider Design, Inc.

1958/09/11, Five Spot Cafe, NYC
JC (ts), TM (p), Ahmed Abdul - Malik (b), Roy Haynes (ds)

01. Trinkle Tinkle
02. In Walked Bud
03. I Mean You
04. Epistrophy
05. Crepuscule with Nellie

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これが発掘された1993年時の評判はすごかった。待ちに待ったMonk – ColtraneのFive Spot Liveだったのだから。

当初は「1957年Five Spotの発掘!」という触れ込みだったのだが、ドラムスは私のような素人が聴いてもRoy Haynesにしか聴こえない。ならば、これは1957年のはずがない。

案の定、その後、1958/09/11、GriffinのトラをColtraneが務めた際に、当時のColtraneの妻Naimaがテレコで録音したものであることが判明した。

テレコ録音なので、当然音は劣悪。中には「音が悪いので聴く価値なし」という評価を下す人もいるが、私はブート音質などぜんぜん平気なので、大喜びで聴きました。ただ、Coltraneがややオフ気味なのは残念。

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このライブは、ウォーミング・アップみたいなCrepuscule with Nellieで始まったのだが、それでは盛り上がりに欠けるので、Blue Note盤ではTrinkle Tinkleを1曲目に持ってきた。

Monkの珍曲の一つ。Coltraneとは前年にMONK WITH COLTRANE [Riverside/Jazzland]で録音しているので、Coltraneにはお手のもの。1957年よりも一層自信たっぷりで、音数も一段と増えている。Griffinも熱演だったのだが、この時のColtraneはもう熱演を越えて、なにか凄みが出てきている。

また、こういう変な曲へのRoy Haynesの反応は一段とすごい。すごくおもしろいドラミングだ。テレコの位置がドラムスに近いらしく、Roy Haynesばかりよく聞こえる。

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2曲めはIn Walked Bud。これまでGriffinでさんざん聴き慣れているので、Coltraneというのはちょっと違和感あった。Coltraneは高音部でヒラヒラ吹くので、この曲はGriffinバージョンのほうが好きかな。

ここでのMonkは絶好調で、全くよどみなくバリバリ弾きまくる。久々のColtraneとの共演の喜びが伝わってくる。それにしてもカッコイイ曲。

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3曲めI Mean YouはColtraneは初めての録音(Five Spot 1957では演奏していたんだろうけど)。Coltraneは、アドリブの素材として曲を切り刻んでいる。

しかしこの時のバンドは凄いね。Coltraneの息子Raviが「Cranegie Liveよりこっちの方が好きだ」というのもうなづける。

例によって短いEpistrophyでエンディング。録音トラブルなのか、発表できない会話かなんかが入ったのか、Coltraneのソロの途中でカット。Monkのソロが丸々カットされているのは残念。

実際は冒頭で演奏されたCrepuscule・・・を、最後に持ってきたのは正解。いい終わり方だ。

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音は悪いが、これは一時期聴きまくった。愛聴盤のひとつです。

しかし、なんということか、これは1993年に出て以来、再発されていないようだ。中古市場には常にあふれているので、入手に困るということはあまりないのだが、それにしてももったいない。

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そんな状態なので、こういうブツはすかさずブート屋に食われてしまう。それがこれ↓

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane/COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958 [Gambit] rec. 1957-58, pub. 2006



1958/09/11, Five Spot Cafe, NYC
JC (ts), TM (p), AAM (b), RH (ds)

01. Crepuscule with Nellie
02. Trinkle Tinkle
03. In Walked Bud
04. I Mean You
05. Epistrophy

1957/07-08?, Five Spot Cafe, NYC
JC (ts), TM (p), Wilbur Ware ? (b), Shadow Wilson ? (ds)

06. Ruby My Dear
07. Nutty

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これは前述のDISCOVERY!をリマスターして音質を向上させたもの。といっても、元がテレコ録音なので、音質向上といっても限りがあるのだが。

強いて言えば、周囲のガヤガヤがよく聞こえるようになった。Blue Note盤の低音質は、観客の会話についての、著作権面でのトラブルをさけるために、わざと悪いままにしていたんではないか、と推察している。

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1957年録音と思われるボーナス・トラックスについては、

2017年2月8日水曜日 Thelonious Monk at the Five Spot大全(4) Five Spot 1957 with Coltrane

を参照のこと。

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これがMonk – Coltrane最後の共演となった。この後Coltraneは思い残すことなく自分の道を突き進むことになる。

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