2017年3月19日日曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(8) Five Spot 1958 with Johnny Griffin -その2

1958/07/09の(テスト?)録音に続き、08/07にもRiversideによる録音が行われ、この日の演奏がIN ACTION/MISTERIOSOの2枚で発表された。

Thelonious Monk Quartet with Johnny Griffin/THELONIOUS IN ACTION [Riverside] rec. 1958


Cover Design : Paul Bacon

1958/08/07, Five Spot Cafe, NYC
Johnny Griffin (ts), TM (p), Ahmed Abdul - Malik (b), Roy Haynes (ds)

01. Light Blue
02. Coming on the Hudson
03. Rhythm-A-Ning
04. Epistrophy (theme)
05. Blue Monk
06. Evidence
07. Epistrophy (theme)

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IN ACTIONは、Light BlueとComing on the Hudsonというミディアム・テンポの、わりとおとなしめの曲で始まる。Griffinはこういった曲調でもいつものように全開だが。

Rhythm-A-Ningでは、Griffinだけではなく、MonkもHaynesも全開となる。目立たないが、Abdul – Malikのよくドライブするベース・ラインもエキサイティングだ。

Griffinのソロ最中は、Monkはほとんど休んでいる。最初にキンキンキンと入れる三音がMonkらしい。こんな音を入れられて、よくソロを平然と続けられるものだ、と感心する。それはColtraneもRouseもそうなのだが。

Monkのソロでは何度も得意の下降フレーズが飛び出す。これが出るときはMonkが絶好調の証拠。

毎度おなじみのクロージング・テーマEpistrophyでA面が終わる。

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B面の1曲めは、おなじみBlue Monk。Griffinのソロでは、またしてもほとんどMonk抜き。Griffinがたっぷりソロを吹ききったところで、気持ちよさそうにMonkがソロを展開する。

Evidenceのような変態曲になると、Roy Haynesの臨機応変のドラミングが冴え渡る。とはいえ、Monk抜きのGriffinのソロになると、あまりEvidenceの変態性は感じられなくなる。Monkのソロになると、やっぱり変な曲だなあ、と思うのだけれども。

短いがAbdul – Malikのソロもよくこの曲を消化しているし、この変な曲のメロディに逐一反応できるHaynesのドラミングは本当にすごい。一番Monkらしい曲は何か?と問われれば、文句なしにこのEvidenceだろう。

B面のエンディングももちろんEpistrophy。

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Thelonious Monk Quartet/MISTERIOSO [Riverside] rec. 1958


Cover Painting : Giorgio de Chirico
Cover Design : Paul Bacon

1958/08/07, Five Spot Cafe, NYC
JG (ts), TM (p), AAM (b), RH (ds)

01. Nutty
02. Blues Five Spot
03. Let's Cool One
04. In Walked Bud
05. Just A Gigolo (TM solo)
06. Misterioso

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MISTERIOSOのA面はNuttyとBlues Five Spotで、どちらも比較的のんびり始まるが、Griffinのソロになると手に汗握る展開になってしまうのはいつもと同じだ。全く・・・手抜きを知らない人だね、この人は!

Blues Five Spotのブレイクで、Griffinの完全ソロになり、Monkのソロに移るあたりは実にカッコイイ。

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A面3曲めLet's Cool OneからB面いっぱいが、Five Spot 1958のハイライトだろう。どの曲も実にカッコイイ。

B面1曲めは、Monk作曲の中で一番カッコイイ曲In Walked Budだ。この曲の代表演奏はGriffinのこの演奏と言っていいだろう。

Just A Gigoloは、1954年Prestigeのトリオ盤から弾き続けているMonkの愛奏曲。常にソロ。ここでもそうだが、テーマを繰り返すだけの短い演奏だ。

MisteriosoはMonkの曲の中でも、一番変な曲と言っていい。テーマはメカニカルなメロディなのに、実は泥臭いBluesだという、このギャップ。なお、LPではGriffinのソロの途中でフェイドアウトされていたのだが、CD化を機に終わりまで収録されるようになった。

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Roy HaynesはBe Bop時代から活躍しているドラマーだが、1950年代中頃まではあまり目立った活動がなかった。それがこのMonk 4参加以来、充実した仕事がぐっと増えた。Five Spot Liveの直後のWE THREE [Prestige/New Jazz] rec.1958/11/14 からそれは始まる。

特に、Eric DolphyやColtraneなどのプログレッシヴ・ジャズ畑で、名指しで参加を乞われるようになったのは、間違いなくこのMonk 4での活躍と臨機応変の対応力が世間の耳に止まったからだろう。Newport 1963でColtraneとサシで死闘を繰り広げたImpressionsなどは、Jazz界最大の遺産のひとつ。

Roland Kirkとの共演、Andrew Hillとのコラボレーション、長く続くChick Coreaとのコラボレーション、果てはPat Methenyとの共演なども、みなこの文脈で語っていい仕事だ。もはやBe Bop時代から活躍しているドラマーとは思えない幅の広さ。

そして1970年代初頭、Hannibal Marvin Peterson、George Adamsを擁したヘビー級バンドHip Ensembleで、その活動は頂点を極める。

2017年3月17日現在、92歳、まだ現役!一部では「化物」などとも呼ばれているが、いつまでもドラムを叩いていてほしいぞ。

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さて、Monk 4のレギュラーであるJohnny Griffinだったが、当時GriffinはRiverside専属の売り出し中で、Riversideをはじめとする数多くのセッションで多忙を極めた。Five Spot出演中も

・07/02&03 Blue Mitchell/BIG 6 [Riverside]
・07/16 Babs Gonzales/VOLLA [Hope]
・09/17 Philly Joe Jones/BLUES FOR DRACULA [Riverside]
・09/?? CHET BAKER IN NEW YORK [Riverside]
・09/?? Nat Adderley/BRANCHING OUT [Riverside]

と引っ張りだこ。

当然、Monk 4のFive Spot Liveに参加できない日もしょっちゅう。他の仕事で留守にしてもいい、というのがMonk 4への参加の条件だったのだろう。

Monkはその対策として、代役のサックス奏者を数人常に用意していた。次回からはそのトラ(エキストラ)・サックス奏者とのFive Spot 1958 Liveを見ていこう。

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GriffinはこのFive Spot Live録音が有名だが、実はわずか3ヶ月の在籍で、1958年9月末にはバンドを去る(Monk 4のFive Spot出演は10月半ばまで続く)。

GriffinがMonkと再会を果たすのは、1967年のMonk Septet/Octetのヨーロッパ・ツアーであった(1963年以来ヨーロッパに移住している)。

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毎度おなじみの

Hal Willner/THAT'S THE WAY I FEEL NOW : A TRIBUTE TO THELONIOUS MONK [A&M(キャニオン)] pub. 1984


Design : M&Co. New York

にもGriffinは当然登場。Carla Bley Bandにゲストとして迎えられ、Misteriosoのソロ・パートを任されている。

1983?, NYC
JG (ts), Michael Mantler (tp), Vincent Chancey (frh), Gary Valente (tb), Bob Stewart (tu), Steve Slagle (as, bs), Kenny Kirkland (p), CB (org, arr), Hiram Bullock (g), Steve Swallow (b), Victor Lewis (ds), Manolo Badrena (perc), Hal Willner (voice)

A05. Carla Bley Band with Special Guest Johnny Griffin/Misterioso

これは

Carla Bley/HEAVY HEART [ECM/Watt] rec.1983, pub.1984

とは録音時期もメンバーもほぼ同じなので、このアルバム制作の合間に録音したものだろう。

Carlaらしい牧歌的なイントロから始まり、Monkのメカニカルなテーマ・メロディ、そしてGriffinの泥臭さたっぷりのBluesソロと、Misteriosoの多面的な姿とCarla、Monk、Griffin三者の長所を表現。まさに傑作だ。

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(追記)@2017/03/31

・Robin D.G. Kelley (2009) THELONIOUS MONK : THE LIFE AND TIMES OF AN AMERICAN ORIGINAL. xviii+588pp.+pls. Free Press, New York.

によれば、Griffinは9月上旬にはMonkバンドから抜けていたそうな。理由はギャラが悪かったから。

GriffinはMonk 4に1年くらいいたという話もあるが、どうも実際は2か月くらいだったよう。それでこの傑作ライブ盤を残していくのだから、さすがというべきか。

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