2017年6月11日日曜日

Joe HendersonのBlue Noteワンホーン作品4作 (1) Andrew Hill/BLACK FIRE

ジョーヘンには、Blue Noteにワンホーン・カルテット作品が4作ある、と聞いて意外に思う人が多いのではないでしょうか。

確かにリーダー作はINNER URGEだけですが、他人の作品に呼ばれて残したワンホーン・カルテットが他に3作もあるのです。

(1) Andrew Hill/BLACK FIRE [Blue Note] rec.1963
(2) Joe Henderson/INNER URGE [Blue Note] rec.1964
(3) Pete La Roca/BASRA [Blue Note] rec.1965
(4) McCoy Tyner/THE REAL McCOY [Blue Note] rec.1967

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Pianist、bassist、drummerのリーダー作では、フロントに2管・3管を据えることが多いが、1管だけというのは珍しい。自分の音楽性によほど自信のある人でないとできない。でないと、普通はフロントの管に食われてしまうから。

これができたのは、Thelonious Monk、McCoy Tyner、Dave Brubeck、Cecil Taylor、山下洋輔、Chick Coreaあたりか。思いついたのはPianistばかりだけど、個性の強い人ばかりですね。

ジョーヘンも非常にアクが強い人なのだが、それをわざわざワンホーンでフロントに呼ぶんだから、そのリーダーたちはたいしたもの。

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ジョーヘンは、

Kenny Dorham/UNA MAS [Blue Note] rec.1962

でレコーディング・デビュー。

以後、1967年にBlue Noteを離れるまで、リーダー作、サイドマンを問わずBlue Noteに多数録音を残している(Kenny Dorhamとのコンビでの参加が多かった)。いわば、当時のBlue Noteハウス・テナーと言ったところ。

Lee Morgan/THE SIDEWINDER [Blue Note] rec.1963
Larry Young/UNITY [Blue Note] rec.1965

あたりのヒット作あるいは名盤への参加も有名。

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まずはこれ↓

Andrew Hill/BLACK FIRE [Blue Note] rec.1963, re-issue 2005


Cover Design : Reid Miles

1963/11/08, Englewood Cliffs, NJ
JH (ts)*, Andrew Hill (p), Richard Davis (b), Roy Haynes (ds)

01. Pumpkin *
02. Subterfuge
03. Black Fire *
04. Cantarnos *
05. Tired Trade
06. McNeil Island *
07. Land of Nod *

08. Pumpkin (alternate take) * – CD bonus
09. Black Fire (alternate take) * – CD bonus

Blue NoteレーベルのオーナーAlfred Lionが、ジョーヘンとともに1960年代売り出しに力を入れていたAndrew HillのBlue Note初リーダー作。

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正直Andrew Hillがよくわからない。そんなにたくさん聴いているわけではないのだが、わかりやすいメロディは絶対に弾かないし、リズムも何拍子なんだかはっきりしない曲も多い。

いまだ掴みどころがわからない。まあでも、Wayne Shorterも最初はそんな感じだったが、たくさん聴いているうちになんとなく(笑)わかってきたし・・・。

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それはさておき、このアルバムはRoy Haynesの参加が珍しい。HaynesのBlue Note録音って、この他数えるほどしかないはず。Hillがわざわざ名指しで呼んだだけあって、とても効果的なdrummingを残してくれた。

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いきなり4人が大波のように迫り来る、冒頭Pumpkinに圧倒される。さっそく何拍子なんだかわからない謎テーマ。ここですでに好き嫌いが大きく分かれる。アドリブ部分は4/4なのだが。

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Monk風の曲ワルツBlack Fireもおもしろい。ジョーヘンの起用が一番効果的だったのは、この曲だろう。ジョーヘンの後のリーダー作でのIsotopeという曲に影響を与えていると思う。

一貫して、微妙にリズムをずらしてバッキングするHillが異様だ。Hillに乗れない人は、この辺からしてついていけないのだと思う。

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Cantarnosは、ジョーヘンがテーマを吹く後ろでは、Hillがラテン・ビートで別のメロディを弾くという、魅力的な曲。bもまともにリズムを刻まないし、4人がバラバラなことをやっているように聞こえるが、不思議と統一感のある謎曲。ジョーヘンはよく対応できるよねえ。

これも何拍子か捉えにくい。Hillのヘンさが極地に達してる曲なので、魅力的に感じる人と全く拒否反応を示す人と極端に別れるだろう。

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Haynesが抜けるMcNeil Islandは、Hillのピアノの美しさが堪能できる、いわば珍しい曲だ。

あと、Blue Note時代のHillには珍しいpiano trio曲が2曲あるのも貴重(注)。

(注)
HillのBlue Note時代には、純粋な「ピアノ・トリオ」作品はない。しかしSMOKESTACKという「ピアノ・カルテット」作品はある。これもすごい作品。Bassが2本といるという珍しい編成。DsはまたしてもRoy Haynesが大暴れ。

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それにしても、Hillとジョーヘンの相性はぴったり。Hillの入り組んだ曲に1対1で対応できるテナー奏者はそう多くないだろう。

Andrew Hillとジョーヘンの共演は、この他、OUR THING、POINT OF DEPARTURE、PAX(当初未発表)と結構あるが、もっとやってもよかったな。レギュラー組んでもいいくらい。

1980年代にも、Mt. Fuji Jazz Festival 1986などで何度か共演しているらしいが、録音が発表されたことはない。聴いてみたいなあ。

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