2017年10月10日火曜日 ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み
で予告しておいた
・西口徹・編 (2017.11) 『文藝別冊 セロニアス・モンク モダン・ジャズの高僧』(KAWADE夢ムック). 4+191pp. 河出書房新社, 東京.
表紙・目次デザイン : 市川衣梨
が出ました。
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あんまり期待はしていなかったのですが、なんと再録だらけ。再録と新作は半々くらいだ。ちょっとくせのある編集。
恒例の詳細目次をまた掲載しておきましょう。新作は★で表示。
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001-001 中扉 文藝別冊 セロニアス・モンク モダン・ジャズの高僧
002-004 目次
001-001 中扉 文藝別冊 KAWADE夢ムック セロニアス・モンク モダン・ジャズの高僧 生誕100周年記念総特集
002-003 小西康陽/エッセイ 眠りに就く前の時間に 『ソロ・モンク』.
← 初出 : (2010.10) 芸術新潮, 2010年10月号.
004-007 柳瀬尚紀/エッセイ モンクに寄せるラグレター(RAG=LETTER).
← 初出 : (1984.1) ユリイカ, 1984年1月号.
008-019 植草甚一/セロニアス in 東京 五日間のデミ・ショック モンクを聴いたり眺めたり.
← 初出 : (1963.7) スイングジャーナル, 1963年7月号.
020-023 中上健次/エッセイ 新世界への入り口 セロニアス・モンク 「サムシング・イン・ブルー」.
← 初出 : (1979.8) 『破壊せよ、とアイラーは言った』. 集英社, 東京.
024-027 中条昌平/新エッセイ 村上春樹とモンクの「謎」.★
028-033 古今亭志ん朝/インタヴュー 「ああ、これは志ん生だな」って思った.
← 初出 : 講談社・編 (1991.1) 『セロニアス・モンク ラウンド・アバウト・ミッドナイト』. 講談社, 東京.
034-069 諸岡敏行/モンクの生涯 「マッド・モンク」はマッドではない.★
070-071 藤本史昭/モンクを聴く モンクのソロ.★
072-074 熊谷美広/モンクを聴く モンクのトリオ.★
075-075 写真 若きモンク.
076-078 後藤誠/モンクを聴く モンクの管楽器カルテット・クインテット.★
079-081 久保田晃弘/セロニアス・モンクの作曲.★
082-086 山下洋輔・談, 松坂妃呂子・聞き手/特別インタビュー 山下洋輔、モンクを語る.
← 初出 : ジャズ批評編集部・編 (2002.12) 『定本セロニアス・モンク』(ジャズ批評ブックス). 松坂, 東京.
087-087 写真 セロニアス・モンク.
088-095 相倉久人/モンクス・ワールド セロニアス・モンク 完結した一つの世界.
← 加筆版 : (1981.12) 『モダン・ジャズ鑑賞』(角川文庫). 角川書店, 東京.
← 初出 : (1963) 『モダン・ジャズ鑑賞』. 荒地出版社, 東京.
096-103 寺島靖国/作曲家モンク聴き較べ 「ラウンド・ミッドナイト」名演集.
← 初出 : 講談社・編 (1991.1) 『セロニアス・モンク ラウンド・アバウト・ミッドナイト』. 講談社, 東京.
104-123 後藤雅洋+加藤総夫・対談/特別対談・モンクの現在 セロニアス・モンク-ジャズを開く.
← 初出 : 講談社・編 (1991.1) 『セロニアス・モンク ラウンド・アバウト・ミッドナイト』. 講談社, 東京.
124-135 間章/モンクス・ワールド ピアノへの戦略とその位相.
← 初出 : (1982.12) 『時代の未明から来たるべきものへ』. イザラ書房, 東京.
136-143 植草甚一/モンクと共演者 セロニアス・モンクのレコードを理解するために.
← 初出 : スイングジャーナル, 1960年6月号.
144-149 柳樂光隆/モンクのその後 モンクの影響 バップの前、バップの後.★
150-156 高見一樹/モンクの本質と現代 A Thousand of Monks.★
157-161 小沼純一/モンクス・ミュージック モンクをめぐるファンタスム.★
162-177 マニュエル・ヤン/モンクの音楽社会学 音楽労働者はモンクは全体主義に「ノー」と言う.★
178-189 林建紀・編/資料 セロニアス・モンク 主要ディスコグラフィー.★
190-191 文藝編集部/セロニアス・モンク略年譜.★
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前半では、諸岡氏による長い「Monk評伝」が特異。これ、評伝の体をなしていない。
Minton's Playhouseの下りから一向に話が進まず、自分の話や、間章の話や、Billie Holidayのepisode(Monkは出てこない)が6ページも続いたりする。
まあ、それはそれで興味のある人には面白いんだと思うが、「Monk評伝」ではない。これは諸岡氏の「作品/評論」と思って読んだほうがいい。
これ以外の前半部の新作は、総じて短すぎで、物足りないものばかり。Monk山の麓に到達して終わりだ。ジャケットをデカデカと載っけるくらいなら、もっとちゃんと紙面与えればいいのに・・・。
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植草甚一のモンク観覧記はおもしろいなあ。再録の価値は充分あった。
『セロニアス・モンク ラウンド・アバウト・ミッドナイト』からの再録は、志ん朝のインタビューも、後藤・加藤対談も面白い。寺島エッセイも、この頃はまだ、わざと挑発的な発言をしないので、初々しくて好感が持てる。
相倉久人・論文や間章・論文は、今ではなかなか見かけなくなった文体なので、博物館的な意味で貴重かもしれない。
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後半の新作の中には読みごたえある文もあるで、もう一度しっかり読もう。
林建紀氏のdiscographyは完璧です。これは使いでがかなりある。息子T.S.Monkの自主レーベルやbootlegsもしっかり網羅しています。ちなみにジャケ写はなし。一つ残念なのは、映像作品が含まれていないこと。
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雑多な再録が多いせいで、この特集がどこへ向かっているかがわかりにくく、散漫な印象を受けた。「ジャズ批評」の特集や講談社のMonk本よりは、ユリイカあたりがやっている特集に雰囲気が近いかも。
ひと通り読んでも、何かMonkの姿がボンヤリとしか見えてこなかったなあ、自分には。
Monkをあまり知らない人にとっては、かなりとっつきにくく、「おお、よし、Monkを聴いてみよう」という気にはならないんじゃないかなあ。
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とはいえ、Monk生誕百周年記念の貴重なJazz本なので、手に取ってみて、自分に合うようだっらどうぞ。
私は、林discography目当てだけでも充分買う価値があると思いますね。
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(追記)@2017/11/15
それにしても「特別インタビュー」とか「特別対談」とか銘打って、それが全部「再録」ってどういうことだ?よっぽど予算がなかったとみえる。
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