Derek Bailey話の途中ですが、先日紹介した
・ロビン・ケリー・著, 小田中裕次・訳 (2017.10) 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』. 673+30pp. シンコーミュージック・エンタテイメント, 東京.
← 英文原版 : Robin D.G. Kelley (2009) THELONIOUS MONK : THE LIFE AND TIMES OF AN AMERICAN ORIGINAL. xviii+588pp.+pls. Free Press, New York.
装丁 : 石川絢士(the GARDEN)
ようやく読了しました。2週間かかったな。読むだけでも大変なのに、この翻訳はホントにすごい仕事だ。
これから、何度も何度も拾い読みすることになるだろう。この本で、何十年も楽しめると思うと、ほんとうにうれしい。
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その中から、また気になったところをひろい読み。
(1) Theloniousという名前
この本では、Monkの先祖を3代前まで逆上って調べてある。曾祖父母がJohn Jackと通称Mother Cole。祖父母がHinton ColeとSarah Ann Williams。父母がThelonious Monk Sr.とBarbara Batts (Monk)。
この本には残念ながら、固有名詞のアルファベット表記がほとんどない。せめて索引にはアルファベット表記をつけてほしかった。
「Thelonious」という、このUSA市民としては一風変わった名前はラテン語。7世紀フランスのキリスト教聖者St. Tiloのラテン名だ。英語にするとTheodore。
ここまでは知っていたのだが、その名をMonkの父につけたのが祖父Hinton Cole。彼は、どうもカトリック教やラテン語の勉強していたようなのだ。それでも19世紀に黒人で、「Thelonious」というラテン名をつける、というのは只者ではない。さすがMonkの祖父と言えようか。
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(2) Babs Gonzalesの兵役逃れ
Be Bop期の男性シンガーBabs Gonzales(1919-80)。彼の兵役逃れの作戦は爆笑もの。ここではネタばらしはしないが、知りたい人は本書p.130を読んでほしい。
しかしこの話、たぶん盛ってるな(笑)。
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(3) Miles Davisとのケンカ
この本には、MonkとMilesの口ゲンカが何度も出てくる。MilesがMonkから多くを教わり、尊敬していたのは間違いない。ただし「自分のバックでMonkが弾くのは勘弁」と思っていたのも間違いない。Monkのバッキングは、Milesのソロには合わない。
しかし、かの有名な1954年12月24日の、いわゆる「ケンカ・セッション」は誤り。これはもう、「マイルス自伝」などで、みんな知ってるだろう。
実際、このレコーディングの後、MonkはMilesを家に招待し、Milesは朝までくつろいでいた、てんだから。
でも実は、その9ヶ月前、MonkとMilesはケンカをしていた。1954年3月、Monkのアパートで、Monk、Miles、Max Roachが練習をしてた時に、Milesは「あんたの弾き方は間違ってる」とMonkをけなし、二人は一触即発になった。
まあ、殴り合いまでは行かなかったが、どうも「ケンカ・セッション」神話には、このあたりの話も混入しているような気がする。
1955年7月Newport Jazz FestivalでのMiles – Monk共演でも、互いに「あいつの演奏は間違ってる」と言い合ってケンカになったらしい。これも、後には「ケンカ・セッション」神話に吸収されたのかもしれない。
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(4) MilesがColtraneを殴ってクビにした事件
1957年4月、Café Bohemiaに出演していたMiles 5だったが、麻薬中毒のColtraneとPhilly Joe Jonesがあまりにも不甲斐ないステージをするので、Milesは怒って二人をクビにした。
その時にMilesはColtraneをぶん殴ったらしい。このステージを聴きに来ていたMonkが、ちょうどその場に居合わせ、Coltraneに「オレのところに来い」と引き取った、と云われる。
あまりにも出来過ぎた話なので、
2017年1月24日火曜日 Thelonious Monk at the Five Spot大全(1) Monk's Mood (revised)
では、「おそらく神話にすぎないだろう」と書いてしまったが、この本によると、どうも本当らしい。
こういう運命の瞬間って本当にあるんですね。ドラマみたいだ。訂正します。
なお、THELONIOUS HIMSELFで、1曲だけColtraneが参加しているMonk's Moodの録音は、この事件よりも前らしいです。
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この本読んではじめて知った、おもしろい話はまだまだあるので、Bailey話の合間に、またやりましょう。
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