2017年10月19日木曜日

ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み2

Derek Bailey話の途中ですが、先日紹介した

・ロビン・ケリー・著, 小田中裕次・訳 (2017.10) 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』. 673+30pp. シンコーミュージック・エンタテイメント, 東京.
← 英文原版 : Robin D.G. Kelley (2009) THELONIOUS MONK : THE LIFE AND TIMES OF AN AMERICAN ORIGINAL. xviii+588pp.+pls. Free Press, New York.


装丁 : 石川絢士(the GARDEN)

ようやく読了しました。2週間かかったな。読むだけでも大変なのに、この翻訳はホントにすごい仕事だ。

これから、何度も何度も拾い読みすることになるだろう。この本で、何十年も楽しめると思うと、ほんとうにうれしい。

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その中から、また気になったところをひろい読み。

(1) Theloniousという名前

この本では、Monkの先祖を3代前まで逆上って調べてある。曾祖父母がJohn Jackと通称Mother Cole。祖父母がHinton ColeとSarah Ann Williams。父母がThelonious Monk Sr.とBarbara Batts (Monk)。

この本には残念ながら、固有名詞のアルファベット表記がほとんどない。せめて索引にはアルファベット表記をつけてほしかった。

「Thelonious」という、このUSA市民としては一風変わった名前はラテン語。7世紀フランスのキリスト教聖者St. Tiloのラテン名だ。英語にするとTheodore。

ここまでは知っていたのだが、その名をMonkの父につけたのが祖父Hinton Cole。彼は、どうもカトリック教やラテン語の勉強していたようなのだ。それでも19世紀に黒人で、「Thelonious」というラテン名をつける、というのは只者ではない。さすがMonkの祖父と言えようか。

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(2) Babs Gonzalesの兵役逃れ

Be Bop期の男性シンガーBabs Gonzales(1919-80)。彼の兵役逃れの作戦は爆笑もの。ここではネタばらしはしないが、知りたい人は本書p.130を読んでほしい。

しかしこの話、たぶん盛ってるな(笑)。

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(3) Miles Davisとのケンカ

この本には、MonkとMilesの口ゲンカが何度も出てくる。MilesがMonkから多くを教わり、尊敬していたのは間違いない。ただし「自分のバックでMonkが弾くのは勘弁」と思っていたのも間違いない。Monkのバッキングは、Milesのソロには合わない。

しかし、かの有名な1954年12月24日の、いわゆる「ケンカ・セッション」は誤り。これはもう、「マイルス自伝」などで、みんな知ってるだろう。

実際、このレコーディングの後、MonkはMilesを家に招待し、Milesは朝までくつろいでいた、てんだから。

でも実は、その9ヶ月前、MonkとMilesはケンカをしていた。1954年3月、Monkのアパートで、Monk、Miles、Max Roachが練習をしてた時に、Milesは「あんたの弾き方は間違ってる」とMonkをけなし、二人は一触即発になった。

まあ、殴り合いまでは行かなかったが、どうも「ケンカ・セッション」神話には、このあたりの話も混入しているような気がする。

1955年7月Newport Jazz FestivalでのMiles – Monk共演でも、互いに「あいつの演奏は間違ってる」と言い合ってケンカになったらしい。これも、後には「ケンカ・セッション」神話に吸収されたのかもしれない。

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(4) MilesがColtraneを殴ってクビにした事件

1957年4月、Café Bohemiaに出演していたMiles 5だったが、麻薬中毒のColtraneとPhilly Joe Jonesがあまりにも不甲斐ないステージをするので、Milesは怒って二人をクビにした。

その時にMilesはColtraneをぶん殴ったらしい。このステージを聴きに来ていたMonkが、ちょうどその場に居合わせ、Coltraneに「オレのところに来い」と引き取った、と云われる。

あまりにも出来過ぎた話なので、

2017年1月24日火曜日 Thelonious Monk at the Five Spot大全(1) Monk's Mood (revised)

では、「おそらく神話にすぎないだろう」と書いてしまったが、この本によると、どうも本当らしい。

こういう運命の瞬間って本当にあるんですね。ドラマみたいだ。訂正します。

なお、THELONIOUS HIMSELFで、1曲だけColtraneが参加しているMonk's Moodの録音は、この事件よりも前らしいです。

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この本読んではじめて知った、おもしろい話はまだまだあるので、Bailey話の合間に、またやりましょう。

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