2018年4月4日水曜日

Thelonious Monk/PIANO SOLO : PARIS 1954 : THE CENTENNIAL EDITION

Monk生誕百周年記念盤として、2017年に出たばかりの盤です。

Thelonious Monk/PIANO SOLO : PARIS 1954 : THE CENTENNIAL EDITION [Sony (France)] rec.1954, release 2017


Design : Objectif Lune

Daniel Baumgarten+Daniel Richard (re-issue prod)

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中身の中心は、お馴染みのいわゆるSOLO ON VOGUE(原盤はSwingだけど)の9曲(+イントロ会話)ですが、solo曲が録音順に並べ替えられていることが特徴。

それと、Paris滞在中のtrio liveが5曲収録されているのが目玉になる。

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Soloは、もともとが放送用音源で、今回の曲順、すなわち録音順で放送されたようだ。10"LP化の際に曲順を入れ替えてあり、通常出回っているのはそっち。

そもそもtotal conceptのあるアルバムではないので、今回の曲順(録音順)でも入れ替えた曲順でも、自分には違和感はない。通常盤を聴き慣れた人の中には、今回の曲順に反感もあるようだが。

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1954/06/07, Paris, André Francis (prod)

01. Introduction by André Francis
02. Evidence
03. Smoke Gets in Your Eyes
04. Hackensack
05. 'Round Midnight
06. Eronel
07. Off Minor
08. Well, You Needn't
09. Portrait of An Ermite (Reflections)
10. Manganese (We See)

Monkのsoloがまとまって聴ける初のアルバム。まだ37歳なので、Monkのpianoも溌溂としている。Monk入門盤としても最適。

曲目はほとんど自作曲だが、Smoke Gets in Your Eyes(煙が目にしみる)が珍しい。Hackensackは当初収録されず、後に発掘されたもの。

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これは、最初はSwingから8曲入り10"LPで発売された。

当初、EvidenceがReflectionsと間違ってクレジットされていた。今回、冒頭にhost/producerとの会話が入って、その理由がわかった。

Monkは「Reflections !」と言い放って、Evidenceを弾き始めるのだ(笑)。そりゃ、クレジットも間違うわな。

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CDクレジットでは、録音日は06/04となっているが、正しくは06/07であることは周知。

2017年10月10日火曜日 ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み
2017年10月19日木曜日 ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み2
2017年10月25日水曜日 ロビン・ケリー 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』 ひろい読み3 - Frankie Dunlop

で紹介した

・ロビン・ケリー・著, 小田中裕次・訳 (2017.10) 『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』. 673+30pp. シンコーミュージック・エンタテイメント, 東京.
← 英文原版 : Robin D.G. Kelley (2009) THELONIOUS MONK : THE LIFE AND TIMES OF AN AMERICAN ORIGINAL. xviii+588pp.+pls. Free Press, New York.

でも、

2017年11月14日火曜日 文藝別冊 セロニアス・モンク

で紹介した

・林建紀・編 (2017.11) 資料 セロニアス・モンク 主要ディスコグラフィー. 西口徹・編 『文藝別冊 セロニアス・モンク モダン・ジャズの高僧』(KAWADE夢ムック)所収. pp.178-189. 河出書房新社, 東京.

でも、そしてもちろん

・Robin D. G. Kelley/Thelonious Monk Sessionography(as of 2018/03/31)
http://www.monkbook.com/sessionography/

でも、1954/06/07になっています。

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さて、今回の目玉が、Paris滞在中のlive音源。これは上記sessionographyでもその存在は示されていましたが、発売されたのは今回が初めて。出てくるもんですね。

1954/06/01, Paris
Thelonious Monk (p), Jean-Marie Ingrand (b), Jean-Louis Viale (ds)

11. Announcement
12. Well, You Needn't
13. 'Round Midnight
14. Off Minor
15. Hackensack / Epistrophy

1954/06/03, Paris
Thelonious Monk (p), Jean-Marie Ingrand (b), Gérard "Dave" Pochonet ?(ds)

16. 'Round Midnight (incomplete)

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Liner Notes所収のコンサート写真もいい。どれもそのままジャケットに使えそう。


同盤liner notesより

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Monkのtrio演奏は少ないので、貴重な録音だ。録音状態も良好。

Bassもdrumsも、スタイルはBe-bop以前のものなので、Monkについて行くので精一杯だが、難物Monkと初顔合わせでここまでできるのは立派だ。Monkも少し遠慮して、おとなしくしている感は否めないが(特に前半)。

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11~15が06/01の1st Setなのは、たぶん正しいだろう。しかし、少し疑問もある。

ケリー本によれば、このコンサート冒頭で、Monkは「Well,.You Needn't」と言って、その後「Off Minor」と言い直しているらしい。

しかし、CDにはその言い直しは収録されておらず、曲もちゃんとWell, You Needn'tで始まっている。この辺よくわからない。

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そのWell, You Needn'tでは、Monkは自分のsoloの途中で、突然dsを指さして演奏をやめてしまう。b、dsは戸惑って、一瞬音がなくなるが、dsが機転を利かせてds-soloでつなぐ。その後、Monkは何事もなかったようにsoloを再開。

何があったのかはよくわからないが、どうもdsのplayが気に入らなかったらしい。

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Off Minorでは、またもsoloの途中で演奏を止め、今度は楽屋に下がってしまう。おいおい。

残されたb、dsはまたもds-soloでしのぐ。どうなってんだ?

「やってらんねえ」とでも思ったのか、楽屋で一杯ひっかけたMonk。ステージに戻ると、またsolo継続。酔いが回ったか、少し荒れ気味のsoloになる。

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終演後、この件でMonkになじられたVialeはショックでその場を去り、同日の2nd SetはPochonetが替りを務めたらしい。

何をやり出すかわからんMonkのお相手は大変だ。Vialeに同情する。

このへんの下りは、ケリー本にあるIngrandの談話とCDライナーで、若干食い違いがあるので、総合して書いてみた。

参考:
・R・ケリー (2017.10) 『セロニアス・モンク』. (既出)
・Laurent De Wilde, Martin Davies (tr.) (2017) Liner Notes for Thelonious Monk/PIANO SOLO : PARIS 1954 : THE CENTENNIAL EDITION. Sony (France), Paris.

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ケリー本によれば、Pochonetがdsを務めたのは、06/01の2nd Setだけらしいので、上記personnelが正しければ、16の録音日は06/01になる。

しかし、これがPochonetかどうか定かではないようなので、06/03が正しい可能性もある。06/03のコンサートではVialeが戻って来てdsを務めたらしいので、録音日が正しければ、dsはPochonetではなく、Vialeということになる。

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06/03のコンサートは「rhythm sectionとの息もぴったりで、素晴らしい演奏だった」という評判なので、そちらも是非全曲発売してほしい。

それにしても、演奏も録音もこんな素晴らしいブツが六十数年後に、ひょっこり出て来るんだから、驚きだ。

未発掘録音はまだまだあるに違いないから、次は何が出てくるのか、本当に楽しみだ。

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