2018年4月10日火曜日

Thelonious Monk/THE TRANSFORMER

Monkのsolo作をいくつか取り上げたので、いい機会だから、Monk solo作品の中でも、最大の怪作も紹介しておこう。

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Thelonious Monk/THE TRANSFORMER : THELONIOUS MONK TRANSFORMS "I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU" [Explore] rec.1957-64, release 2007


Design : Mark Millington for WLP Ltd.

1957/01-03? (exact dates are unknown), NYC
Thelonious Monk (p)
1-01. Transposition Part 1
1-02. Transposition Part 2
1-03. Practice Part 1
1-04. Practice Part 2 ; Transform Part 1
1-05. Transform Part 2
2-01. Transformation Part 3

1963/03/09, Paris
Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)
2-02. Performance 1

1964/02?/??, Paris
Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), Butch Warren (b), Ben Riley (ds)
2-03. Performance 2

1961/05/16, Stockholm
Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)
2-04. Performance 3

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曲は、なんとI'm Getting Sentimental over Youの1曲のみ。CD2枚組に渡り、この1曲が繰り返し繰り返し流れるのだ。

Soloの6曲は自宅での練習風景である。録音は奥さんのNellieさん。その宅録open-reel tapeを、Monk家の協力を得て、公式にCD化したもの。

怪しげな作品と思うかもしれないが、executive producerは息子のT.S.Monkだし、masteringもちゃんとRudy van Gelderが担当している。できる限り音質向上にも務めているのだ。

とはいえ、元が宅録だから限界がある。「音の悪い作品は、聴く価値なし」という人は、最初から手を出さない方がいいブツです。

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Monkのレパートリーとして有名な曲だが、同曲を録音したのは、実は意外に遅い。

1957 THELONIOUS HIMSELF [Riverside]

これが最初で、studio録音はこの1回だけ。どうも宅録の6曲はそのための練習だったらしい。

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この曲は1932年発表、Ned Washington作詞、George Bassman作曲。

当初からTommy Dorsey Orchの持ちネタとしてヒット。そののんびりした演奏は、Charlie Parkerのdocumentary filmあたりで、なんか聴いたことある(ParkerはDorsey Brothersが大好きだった)。

Tommy Dorseyは1956年死去。Monkが急にこの曲を取り上げようと思ったのは、Tommy Dorseyの死去がきっかけなのかもしれない。

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その後、

1960 AT THE BLACKHAWK [Riverside]
1961 TWO HOURS WITH THELONIOUS MONK(APRIL IN PARIS/MONK IN FRANCE) [Riverside]
1963 MONK IN TOKYO [CBS Sony]
1964 MISTERIOSO [Columbia]
1964 LIVE AT THE JAZZ WORKSHOP [Columbia]

など、Quartetの持ちネタとしてすっかり定着し、liveでは欠かせないレパートリーとなりました。

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その最初期の、生の姿が記録されております。

1-01~02は、移調の模索。「つたない」「探り探り」ということばがぴったりの、正に練習だ。

Monkの好みは、FからE♭に移調、だったようだ。同じphraseを何度も繰り返し、chord と奏法を模索していく。

最初のうちはキョロリン、キョロリンうるさいが、この音を出しながら、その先を色々考えていたことがわかる。

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1-03以降は、もうすっかり自分のものになり、別takesとして聴いていいレベル。短い作品としてまとめるために、考えながら慎重に弾いている、HIMSELFの本番とは違った魅力が満載だ。

Art Tatumばりに、意外に音数が多いのに驚く。「Monkはテクがない、下手」と思ってる人は、これを聴いて考え直すだろう。

高音部でキンキラ弾きまくるケースが多く、本番ではあまり聴けない演奏。これ聴くと、Brilliant CornersのPannonicaで、celestaを使ったのも理解できる。意外にこういうキラキラした感じも好きな人らしい。

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1-04~2-01の3曲は、16分、29分、19分という長尺。HIMSELFの本番は4分だし、Quartetのliveでも、この曲はわりと短く済ませるのに、この長さ。1-05の29分は、一度終わってまた始まるので、2 takes分だ。Endingにも色々工夫を重ねていたことがわかる。

1-01~04はMonkの自宅の、やや調律が狂ったpianoだが、1-05~2-01はpianoや録音環境が変わったような感じ。これはもしかするとNicaさん家かもしれない。2-01の高音部の連打はすごいなあ。

Takeが進むにつれ、どんどんmelodyから離れていき、Monkらしいsoloになる過程がほんとに面白い。

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1-01~02のもたもたした印象が強いので、「作品として成立していない」「つまらん」という人がいても全くおかしくない。作品というよりは、あくまで記録なので。

やはりこれは、エンドレスでSolo Monk温泉につかっていたいMonkマニアのためのアルバムだ。もうホントに、永久に聴いていたい。

という人はそんなにいないと思うけど・・・。

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2枚目後半のQuartetによる3曲は、尺合わせの、まあおまけ(CD1枚に収めるには、2-01がちょっと長かった)。他のlive盤やブートと比べて特筆すべきものは何もないが、やっぱりFrankie Dunlopのdsは楽しいなあ。

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