2017年12月3日日曜日

BURROUGHS WITH MUSIC (01) William S. Burroughsとは何者か?

William Seward Burroughs II(1914-97)はUSAの作家。詩人Allen Ginsberg、小説家Jack Kueroacと共に、いわゆるBeat Generationの作家として知られる。

そこら辺の文章を切り取ってきて、適当につなぎあわせて文章を作る「Cut-up」という手法や、文章が書かれた紙を適当に折ってつながった部分で文章にする「Fold-in」という特異な執筆法で有名だが、ちゃんとした文章もありますよ。文章の並びはチンプンカンプンなものが多いけど。

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代表作は、

・(1953) JUNKY (ジャンキー)-デビュー作、麻薬売人時代の体験が反映された作品

・(1959) THE NAKED LUNCH (裸のランチ)-出世作であり、代表作

・(1961) THE SOFT MACHINE (ソフト・マシーン)-いわゆる「カットアップ三部作」その1

・(1962) THE TICKET THAT EXPLODED (爆発する切符)-「カットアップ三部作」その2

・(1963) THE YAGE LETTERS(麻薬書簡)-南米でYage探索中のBurroughsから、Allen Ginsbegが受け取った書簡を再構成した作品

・(1964) NOVA EXPRESS (ノヴァ急報)-「カットアップ三部作」その3

・(1970) THE LAST WORDS OF DUTCH SCHULTZ (ダッチ・シュルツ最期のことば)

・(1971) THE WILD BOYS : A BOOK OF THE DEAD (ワイルド・ボーイズ(猛者) 死者の書)

・(1973) EXTERMINATOR! (おぼえていないときもある)-短篇集

・(1973) PORT OF SAINTS-THE WILD BOYSの残り素材

・(1978) THE THIRD MIND-Brion Gysinとの共著エッセイ集

・(1978) LETTERS TO ALLEN GINSBERG 1953-1957-Ginsbergへの書簡集

・(1979) BLADE RUNNER : A MOVIE (映画ブレードランナー)-Alan E. Nourseの小説の翻案。Ridely Scott監督の映画BLADE RUNNERのタイトルの元ネタだが、中身は関係ない。

・(1981) CITIES OF THE RED NIGHT (シティーズ・オブ・レッド・ナイト)-「Western三部作」その1

・(1981) THE PLACE OF DEAD ROADS (デッド・ロード)-「Western三部作」その2

・(1981) WITH WILLIAM S. BURROUGHS : A REPORT FROM THE BUNKER (ウィリアム・バロウズと夕食を : バンカーからの報告)-雑談集

・(1985) QUEER (おかま)-JUNKYとTHE YAGE LETTERSの間を埋める自伝的作品

・(1985) THE ADDING MACHINE (バロウズという名の男)-エッセイ集

・(1986) THE CAT INSIDE (内なるネコ)-中編

・(1987) THE WESTERN LANDS (ウエスタン・ランド)-「Western三部作」その3

・(1988) APOCALYPSE (アポカリプス(黙示録))-Keith Haringの絵に文章を付けたもの

・(1989) TORNADE ALLEY (トルネイド・アレイ)-短篇集

・(1989) INTERZONE (インターゾーン)-THE NAKED LUNCH関連中編

・(1991) GHOST OF CHANCE (ゴースト)-中編

・(1995) MY EDUCATION : BOOK OF DREAMS (夢の書 : わが教育)-夢日記

など。

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Burroughsの小説・対談などを読み始めたのは最近だ。

難解な『裸のランチ』は全く歯が立たず、少し休みにして、『ジャンキー』と『麻薬書簡』に乗り換えてこっちは読み終えた。

今は『裸のランチ』再挑戦と対談集を読んでる。『裸のランチ』なんて、電車じゃとても読めねーよ!

でも『裸のランチ』は最初から最後まで通読する必要がない、ということに最近気づいてきた。詩のように、あちこちパラパラ読みすればいいのだ。

あと『ウエスタン・ランド』は、ざっと眺めるだけで、もっぱら「使う」方向で(笑)。

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上掲書のタイトルを見てもわかるように、Burroughsは麻薬中毒者(junky)だ。「Yage(ヤヘ)」と呼ばれる幻の麻薬を求めて、南米をウロウロしたことも。

他にも同性愛者、Mexicoで妻を誤射殺、その裁判中Mexico国外へ逃亡、などなど、episodesを挙げるに困らないお方。

重度のjunkyだったのに、享年83歳とえらく長生きしたのも異常。麻薬耐性体質だったんだろうか。

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Burroughsは小説家だが、音楽作品にもやたらと登場している。何枚あるのか、いまだ全容は把握できていないが、とにかく手持ちのCDを紹介していこう。

Burroughsが音楽作品に登場する理由のひとつは、musiciansにBurroughsファンが多いこと。

「Steely Dan」とは、Burroughsの小説THE NAKED LUNCHに出てくる張形「Steely Dan III from Yokohama」から取られているのは有名だし、先日亡くなったAllan Holesworthが在籍していた「Soft Machine」も、同名の小説タイトルからだ。

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そして、もうひとつの理由はBurroughsの声だ。

Burroughsのしわがれた、ちょっとアニメ的な声は、聞いているとクセになる。なにか魔界に引き込まれそうな蠱惑的な声だ。

その魔声で自分の小説を朗読し、そのバックにmusiciansが音楽をつけるという形をとる。歌を歌うわけではない(歌ったのも少しあるが・・・)。

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特に音楽上でBurroughsとつき合いが深いのは、このblogでは常連のBill LaswellとHal Willnerだ。

まずLaswell作品を、次にWillner作品、そして他のmusiciansの作品(これがまた調べるとゾロゾロ出てくる)の順に紹介していこう。

次回、まずはLaswellものから。

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(追記)@2017/12/03

同業者の小説家、特にSF作家、そして映画監督にもBurroughsファンは多い。

THE NAKED LUNCHが、

David Cronenberg (dir) (1991) NAKED LUNCH.

として映画化されている。なんだか、だいぶremixされているらしいが、仕方ない。もともとがまともな小説じゃないんだから。

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Phillip K. DickのSF小説DO ANDROIDS DREAM OF ELECTRIC SHEEP ?(アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)を映画化(というよりほとんど翻案)した

Ridley Scott (dir) (1982) BLADE RUNNER(主演 : Harrison Ford)

のタイトルは、Burroughsの小説

・William S. Burroughs (1979) BLADE RUNNER : A MOVIE. Blue Wind Press, Berkeley (CA).

から、Scottが「かっこいいタイトルだなー」とテキトーに拝借したもの(Burroughsに使用料を払っている)。内容は全く関係ない。原作はDickなのに、いいかげん(笑)。また、DickがよくOK出したものだ。

ScottもBurroughsファンらしいのだ。

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声だけではなく、これだけ個性的な人間Burroughsを、映画界も放っておくはずがない。

Burroughsのdocumentary film

Howard Brookner (dir) (1983) BURROUGHS : THE MOVIE

に出演しているのはもちろんのこと、他にもチョイ役での出演依頼が引きも切らない。

Gus Van Sant (dir) (1989) DRUGSTORE COWBOY(主演 : Matt Dillon, Kelly Lynch)

での神父役、あたりが有名。

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(追記)@2017/12/03

Burroughs研究本として評価の高い

・山形浩生 (2003.2) 『たかがバロウズ本』. 447pp. 大村書店, 東京.

は、絶版久しく、現在入手難。私は見たことすらない。しかし、

・山形浩生/YAMAGATA Hiroo : Official Page > Japanese > 『たかがバロウズ本』サポートページ > 1. 関連資料 全文 pdf ファイル (1.67 MB) > たかがバロウズ本 Version 1.0.4β2 山形浩生 2003年6月16日
http://cruel.org/wsb/burroughs.pdf

で全文公開されている。太っ腹だ。

今回のシリーズでも言及する機会があるかもしれない。

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(追記)@2017/12/03

このシリーズで取り上げるのは、Burroughsの朗読作品でも、Popular Musicをバックに朗読している作品。主に1989年以降の作品になる。

それ以前の、朗読だけ録音した作品(audio tape cut-up作品を含む)はたくさんあるが、ここでは取り上げない。自分が把握できている分のリストだけ挙げておく。

(01) William S. Burroughs/CALL ME BURROUGHS [English Bookshop→ESP] pub.1965
(02) William Burroughs/ALI'S SMILE [Unicorn Books] pub.1971
(03) WILLIAM S. BUROUGHS / JOHN GIORNO [Giorno Poetry System] pub.1975
(04) William S. Burroughs/NOTHING HERE NOW BUT THE RECORDINGS [Industrial] pub.1981
(05) William S. Burroughs/THE DOCTOR IS ON THE MARKET [LTM] pub.1986
(06) William S. Burroughs/BREAK THROUGH IN GREY ROOM [Sub Rosa] pub.1986
(07) William S. Burroughs/UNCOMMON QUOTES [Caravan of Dreams] pub.1988

など。

・竹田賢一 (1986.2) 溶け出す声(ウイリアム・バロウズ)と析出する声(ブライアン・ガイシン). 現代詩手帖, vol.29, no.2(特集:言葉から声へ), p109-115.
→ 増補 : (1992.8) 思潮社・編 『バロウズ・ブック』(現代詩手帖特集版)所収. pp.126-133. 思潮社, 東京.

では、Burroughsの(01)及びBryon Gysinの朗読作品について論じている。


増補部分では、DEAD CITY RADIOについても触れている。

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(追記)@2017/12/03

現時点で書き終えているBurroughsシリーズは、すでに40回を超えています。一体いつ終わるんだか・・・。

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(追記)@2017/12/04


Burroughs on CD Jacketsの数々(Burroughsとはこういう男だ)


Burroughs本の数々(Burroughsファンは変わり者ばかり=お前もな!)

それにしても、このエントリー追記だらけだな(笑)

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(追記)@2018/01/04


Burroughs on CD Jacketsその2(いい感じのジジイです)


Burroughs本の数々 その2

『たかがバロウズ本』も入手しましたよ。PDFで公開されているとはいえ、ひと通り「読む」にはやっぱり本だ。PDFは「使う」には便利だけど。

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(追記)@2018/03./11

上述の竹田(1986/92)の他に、バロウズの朗読アルバムのレビューをもう一つ見つけました。

・小沼純一 (1997.11) バロウズ・ジジイの声の旅. 現代詩手帖, vol.40, no.11, 「追悼特集 ウィリアム・バロウズ」, pp.110-112.

扱っているアルバムは、

(1) William S. Burroughs/BREAK THROUGH IN GREY ROOM [Sub Rosa] release 1986
(2) Material/SEVEN SOULS (1997 version) [Mercury/Triloka] release 1997
(3) Hal Willner/SEPTEMBER SONGS : THE MUSIC OF KURT WEILL [Sony] release.1997

(4) William S. Burroughs/SPARE ASS ANNIE AND OTHER TALES [Island/Red Label] release.1993 → タイトルのみ紹介

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