2017年11月4日土曜日

美の極致 Derek Bailey/BALLADS & STANDARDS (7完)

BALLADS~STANDARDSと聴いてきたわけだが、私の聴き方はいかにも中途半端だ。このシリーズをちゃんと聴く予備知識を欠いている。

1930~40年代の(Jazz Standardsではない)流行歌の知識、guitarの知識(特にDerek Baileyが大きく影響を受けたJim Hallについて)、そしてfree improvisationの知識。どれもない。

なにせ、

・デレク・ベイリー・著, 竹田賢一+木幡和枝+斉藤栄一・訳 (1981) 『インプロヴィゼーション 即興演奏の彼方へ』. 282pp. 工作舎, 東京.
← 英語原版 : Derek Bailey (1980) IMPROVISATION : ITS NATURE AND PRACTICE IN MUSIC. 137pp. Moorland Publishing, Ashbourne (UK).

も

・ベン・ワトソン・著, 木幡和枝・訳 (2014.1) 『デレク・ベイリー インプロヴィゼーションの物語』. 580pp. 工作舎, 東京.
← 英語原版 : Ben Watson (2004) DEREK BAILEY AND THE STORY OF FREE IMPROVISATION. 443pp.+pls. Verso, London.

も読んでいないのだから。Incus Labelの音盤も、Evan Parkerの3枚しか持っていない。

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Derek Baileyのこのシリーズについてreviewする人の大半が、free improvisation/free jazz/noise musicファンだ。取り上げた曲についての知識を欠いている。

一方Jazz Guitarファン、特にJam Hallファンで、Baileyを聴く人は少ないだろう。ましてや白人女性vocal(Jazzよりもpops寄り)ファンでBaileyを聴く人はまずいない。

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ここは、いろんなジャンルの音楽ファンが知識を持ち寄って、BALLADS~STANDARDSの分析をやって欲しい。

(1) 白人女性vocalファン(特に1930~40年代のpopsに詳しい人)
(2) Jazz Guitarファン(特にJim Hallに詳しい人)
(3) Free Jazzファン(Jazzを中心に、Europ free improvisationまでをカバーできる人。(1)(2)と(4)の仲介役。司会はこの人だな)
(4) ガチガチのEurope free improvisationファン

この4人が一緒に「BALLADS~STANDARDSを聴く」というような対談があったら、ぜひ読んでみたい。(1)(2)にとっては苦痛になるかもしれないが、いずれにしても、自分の専門外ジャンルにも偏見を持たない度量の広いメンバーが必要。無理かな?

昔よくあった、対談でのケンカなんて、別に読みたくない。たいてい中身ないし。

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まあしかし、今回じっくり聴き直してみると、この2枚はまさに感動の「名盤」だ。私にとっては、タイトルに挙げた通り「美の極致」である。

よくある「ジャズ名盤集」みたいな企画では、これらは全く無視されているし、今後も取り上げられそうな気配もない。

しかし「Derek Bailey?うぇ~!無理、無理」という人にこそ、ぜひ知ってほしい。そして聴いてほしい。目から鱗が落ちる瞬間を実感してほしいのだ。

まだ聴いてない人は、これからこのフレッシュな感動、驚きが味わえるのだ。逆に羨ましいぞ。

さあ、また聴こう。

完

2017年11月2日木曜日

美の極致 Derek Bailey/BALLADS & STANDARDS (6)

Derek Bailey/STANDARDS [Tzadik] rec.2001, pub.2007


Design : Hueng-Hueng Chin

を1曲めから。

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01. Nothing New = What's New

BALLADSでは2曲目。

最初は子守唄のような点描ソロだが、よく聴くとWhat's Newのイントロになってる。Free improvisationはちょっとおとなしめ。何かの曲の断片がときおり混じる。その断片だったものが、次第にWhat's Newらしく形を取ってくるところが、この曲の聴き所(か?)。

しかし、ちゃんとしたmelodyが出てくるまでは、なかなか気づかないんだ、これが。何度も聴くとわかってくる。

元曲melodyは最後に出てくるが、その直前のcodeの美しいこと。震えが来る。Melodyに入るのか、入らないのか、煮え切らないが、最後の最後に、お馴染みのフレーズが出てエンディング。

余韻を残して終わるが、もっと聴きたくなるなあ。

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02. Frankly My Dear I Don't Give a Dream = Gone with the Wind

BALLADSでは7曲目と10曲目。

これも、比較的おとなしめのfree improvisationから入る。やっぱり何かのmelody断片がときおり混じる。

途中、沖縄音階みたいな音列が現れる瞬間は、結構笑える。なんかBaileyは時々そういうことするらしいのだが・・・。

スローダウンしてcodeを弾き始めると、テーマも近い。出るぞ、出るぞ、と待ちきれない。そしてmelodyが出現した瞬間のカタルシス。たまんないです。

1 chorus弾くが、最後は中途半端なまま終わる。ちょっと恥ずかしがってる感がある。

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03. When Your Liver Has Gone = When Your Lover Has Gone

BALLADSでは3曲目。

この曲は、free improvisationの冒頭から、アルペジオ中心で何か曲のようになっている。美しい。

途中、Body and Soulのfakeのようになってる区間もあるぞ。「Melodyを弾きたいんだけど、弾けない。もう弾いていいか?いや、まだだ」という逡巡が見て取れる。

唐突に美しいcodeが現れ、素直なmelodyへ。くわーっ、すごい。1 chorus弾いてエンディング。少しオカズを足して終了。

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04. Please Send Me Sweet Chariot = Rockin' Chair

BALLADSでは8曲目と11曲目。

やっぱ、このアルバムでのfree improvisationは、おとなしめだ。その中に、What's NewだのBody and Soulだのが断片として現れる。

これを手クセと言っていいんだろうか?通常のBaileyではそんなことは決してないので、これはこの2枚のアルバムに限った、特殊な現象なのだろう。

弾くcodeが、不協和音から徐々に聴けるものになっていき、そしてmelodyが顔を出して来るのだが、それまでが長い。その分ちゃんとmelodyが出てきた瞬間の喜びは大きい。

これも1 chorus弾いてあっさり終わる。

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05. Don't Talk about Me = Please Don't Talk about Me When I'm Gone

BALLADSでは一番最後の14曲目。決まりに決まったエンディングの曲だ。

この曲は4分半と短いので、曲melodyがすぐ出てくる。BALLADSでの決まりすぎのエンディングは、この時できあがっていたことがわかる。

また、短くまとめることの効果も、この曲で気づいたのではなかろうか。

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06. Pentup Serenade = Petnhouse Serenade (When We're Alone)(lyr / comp - Val Burton+Will Jason)

これだけ、BALLADSには収録されていない曲。

1931年発表。Tom Grune Orchが初録音。有名になったのは、Nat King Cole/PENTHOUSE SERENADE [Capitol] pub.1952のタイトル曲でらしいが、この辺も全然知りませんねえ。

参考:
・Second Hand Songs > SONG When We're Alone(as of 2017/10/02)
https://secondhandsongs.com/work/126290/all?sort=date#versions126290

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Flamencoのようなかき鳴らしfree improvisationで始まる。なかなかつかみ所のない演奏が続くが、codeの連続が出始めると、melodyも近い。

今回はmelodyの出現はかなり唐突。1 chorus弾ききらないうちにエンディング。

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07. Head = You Go to My Head

BALLADSでは12曲目。

この曲はfree improvisationの中に、曲の前兆が全然ないので、melodyが出てくると驚いてしまう。

ラストに、クスクス笑いと「Happy New Year」の声(Baileyの声?)。ということは、録音は2001年12月31日の夜中か?楽しそうでいい。

ツヅク

2017年10月30日月曜日

美の極致 Derek Bailey/BALLADS & STANDARDS (5)

続いては、2005年にBaileyが亡くなった後、2007年に出た

Derek Bailey/STANDARDS [Tzadik] rec.2001, pub.2007


Design : Hueng-Hueng Chin

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これも美しいジャケ写。だいぶ調べたのだが、こちらは出どころがわからなかった。

有名な写真なのかもしれないし、無名の写真なのかもしれない。John Zornは膨大な写真コレクションも持っており、その内容は玉石混交。

Naked City、Pain Killerなどのジャケ写には、その中から特別「悪趣味」な写真が選ばれている。ほしいんだけど、ジャケ写のあまりの気持ち悪さに、購入に二の足を踏む人も多いだろう。

このアルバムは、そんな心配はないが・・・。

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BALLADSには解説はあるが、録音の経緯については、Baileyの電話インタビューがちょっとあるだけで、詳しい事情はよくわからない。

STANDARDSの方には、John ZornとKaren Brookman – Bailey(Baileyの奥さん)の解説、というよりエッセイがある。これで、STANDARDS~BALLADS録音の経緯を知ることができる。

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2001年のクリスマス、訪NY中だったBaileyは念願のvintageもののguitarを買った。そして滞在中のHotelにZornとIkue Mori(元DNAのdrummer)を招き、楽しい時を過ごした。

買ったばかりのguitarを、いじっては爪弾いていたBaileyだったが、誰かがLauraをリクエスト。上機嫌だったBaileyはBALLADSに聞かれるように、この美しいmelodyを弾くのであった。そして次々にリクエストに応えていった。

つき合いの長いZornも、こんなBaileyは聞いたことがなく、唖然、感動。すぐさま録音を決定。Baileyも快諾。その内容がSTANDARDSだ。録音は2011年12月末ということになろうか。

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Londonに帰ったBaileyは、どうもこの録音に満足しなかったようで、自前でもう一度録音し、テープをZornに送った。その内容がBALLADSだ。

後の録音(2002年1~3月のいつか)が、2002年4月にBALLADSとして発売。STANDARDSの方はオクラ入りとなり、Bailey没後にお蔵出しとなったのだった。

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2001/12, NYC
Derek Bailey (g-solo)

01. Nothing New (What's New)
02. Frankly My Dear I Don't Give a Dream (Gone with the Wind)
03. When Your Liver Has Gone (When Your Lover Has Gone)
04. Please Send Me Sweet Chariot (Rockin' Chair)
05. Don't Talk about Me (Please Don't Talk about Me When I'm Gone)
06. Pentup Serenade (Petnhouse Serenade)
07. Head (You Go to My Head)

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STANDARDSとBALLADSを比較して、まず気づくのは、BALLADSが14曲に対し、STANDARDSは7曲。

1曲あたり4~11分と、BALLADSよりずっと長いのだ。曲の展開もいつものfree improvisationが延々続き、曲のmelodyは最後にちょびっと出てくるだけ。曲のmelodyを冒頭に置くBALLADSとの大きな違いだ。

曲間も、medleyではなく毎回ちゃんと切れ目がある。

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おもしろいのは、free improvisationの最中、ちらほらとmelodyの断片が顔を出すこと。Melodyを弾こうか弾くまいか、そして、いつmelodyに入ろうか、と、逡巡している様がありありとわかるのだ。

Melodyへの入り方も唐突で、free improvisation部とテーマは全く別と見ることが可能な曲もある。だからなのか、STANDARDSでは元曲名ではなく、ちょっとひねった曲名がついている。

冒頭のmelodyの余韻で、free improvisationでも、なんとなくだが曲を演奏している雰囲気はあったBALLADSとは、かなり違った印象。

曲のmelodyもメリハリがなく、なんとなく自信なさげ。テーマを完奏しないで終わるのも多い。「バツが悪そう」「煮え切らない」「恥ずかしそう」といった言葉が頭に浮かぶ。

実際、準備期間がほとんどなかったようなので、melody弾きの実験は、中途半端に終わった感がある。この場合に必要だった準備は、練習というよりも「心の準備」とか「覚悟」だろう。

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「いかにも中途半端」というのは、Bailey自身が一番痛感していたようで、UKに戻りすぐさま再度録音。今度は思い切りよく、本プロジェクトのきっかけとなったLauraのmelodyをいきなり弾き始める。

「清水の舞台から飛び降りるつもりで、冒頭からトップギアに入れた」という感じ。これが大成功で、アルバムを通じこのLauraの余韻が残り、統一感のとれた作品となった(BALLADSのことね)。

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かと言って、STANDARDSが単なる「没テイク集」かというとそうではない。アプローチが違うのだ。その違いも見極めつつ聴いていくのが、一つの聴き方。

では、STANDARDSの曲を聴いていこう。

ツヅク

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(追記1)@2017/10/31

上で紹介した2001/12/24のパーティーの写真があった。

・Incus Records > FEATURES > (Derek Bailey's) Instruments > Epiphone Emperor Regent > page 3(as of 2017/10/31)
http://www.incusrecords.force9.co.uk/features/epiphone3.html

音楽だけ聴いていると、常に苦虫を噛み潰しているようなイメージのBaileyだが、こんなうれしそうな顔するんだな。「LauraでもGeorgiaでもなんでも弾いちゃうぞ」(笑)。

左写真はJohn ZornとIkue Mori。右写真はZornとBailey夫人。Page 4にも写真があります。

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(追記2)@2018/11/26

> これも美しいジャケ写。だいぶ調べたのだが、こちらは出どころがわからなかった。

と書きましたが、ようやくモデルが誰かわかりました。こちらでどうぞ。

2018年11月26日月曜日 Derek Bailey/STANDARDSのジャケ写モデルがわかった

ついでに、姉妹編BALLADSのジャケ写モデルについては、こちらをどうぞ。

2017年10月30日月曜日 美の極致 Derek Bailey/BALLADS & STANDARDS (5)