★Twitter 2020/11/24より転載+加筆修正★
Betty Carter / FEED THE FIRE [Verve] rec.1993, rel.1994
Betty Carter が、Geri Allen (p)、Dave Holland (b)、Jack DeJohnette (ds) という、歌伴らしからぬ all star trio を従えて London, Royal Festival Hall で行った Live 盤。
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冒頭、Geri Allen 作のトリッキーな曲 Feed the Fire で始まるのだが、「ああ、最初は Betty 抜きの trio で始まるのね」と思っていたら、Betty が歌い出したのでびっくり。 歌詞はないので当然全編スキャットなのだが、すさまじい出来だ。最初から11分もあるし。Geri もすごい!
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Betty は声域が狭いし音程も悪い、というか独特。メロディーを自分の土俵に引っ張り込んで歌うのだ。作曲者が怒りそう。声量はあるが、ハスキーぎみで伸びはない。Rhythm 感は抜群 ( これも結構独特だが )、というか一般リスナーが理解できるのはそこだけ、と言ってもいいかも。
だから、普通の jazz vocal と同じ聴き方をしていてもわからないと思う。管楽器と同じ聴き方をするのが正しい。それも Eddie Lockjaw Davis みたいな chord 無視でぶっ飛ばす人と同じように ( どっちにも失礼!)。あるいは percussion と思ってもいい。
Jazz vocal としては全く異色の人。だから正統派 jazz vocal 好きにはあまり聴かれていない、と思う。主にインスト好きの人 ( 自分だ!) の方がよく聴いているんじゃないかなあ?
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Betty Carter はけっこう聴いてるのだが、たぶんずっとわからずに聴いていた。むしろ sidemen 目当てで聴いていたのだ。Norman Simmons とか John Hicks とか Cyrus Chestnut とか。メインの Betty の歌がいいと思うのは、急速調のスキャット曲の時だけ。やっぱり楽器として聴いてるな、これは。
特に ballad 曲はどう聴いていいんだかわからなかった。しかし、「音程なんか気にするな!この人は James Brown と同じ shout 系歌手、あるいは Jive 歌手、もっと言うと、percussion だ」と思ったら、楽しく聴けるようになったよ。
JB の歌なんかも音程なんかないに等しい。Betty の歌は JB よりはずっと歌になってるが。しかしそうであっても、やっぱり pianist に耳が行ってしまうのだが・・・。いろいろ考えさせてくれる面白い人だ。
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BETTY CARTER - Love Notes
2曲目の Love Notes でも Geri の back は素晴らしい。普通の歌伴とは全然違うんだが。Geri の音だけ聴いていても成立している。むしろ Betty を percussion として聴こう。やはりこういう曲では Geri は Hancock 的ですね。
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Lover Man は、Betty がメロディを全然なぞらない独特な歌い方。Geri の back も Lover Man とはわからない弾き方をしている。元メロは途中でなんとなくわかってくる程度だ。かなり挑戦的な歌・演奏なんだが、そのおもしろさはすぐにはわからない。なんかすごいものを聴いている感じではある。
これも Betty を percussion として聴き、Geri Allen 4 だとしても成立する感じ。かといって、出しゃばって Betty の邪魔をしてるわけでもない。Geri がずっと同じことを弾いてるな、と思うと実はそこは DeJohnette の地味な solo だったりするし。いやあ、なんかすごいね。
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6~8 は p、b、ds の順に duo で一騎打ち。
BETTY CARTER - If I Should Lose You
Vo と p の duo はまあ普通。Geri の方を聴いていてやっとなんの曲かわかる、ってのは普通じゃないが。
Vo と b の duo もまあ、ないことはない。Holland の確かな音程・rhythm はやはり安心できる。
しかし vo-ds duo なんて聞いたことないぞ。それも相手が DeJohnette とは。堂々即興スキャットで渡りあってるから驚き。Coltrane と Elvin Jones もしくは Roy Haynes の一騎打ちを思わせる。やっぱ Betty の声は楽器だね。
歌伴に Jack DeJohnette を持ってくる、というのもすごい話。DeJohnette の音圧は凄いから、下手すると歌を壊してしまう。まあここでは、DeJohnette は Keith との Standards 時程度に抑えているし、mixing もかなり抑えてぎみなので圧をあまり感じないが、現物はとんでもない。
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BETTY CARTER - Day Dream
Day Dream は、長い intro の後お馴染みのメロディーが出てくるからわかるけど、その後の展開はなんだかよくわからない、いつもの Betty。Geri も普通に chord 進行をなぞらないし。Ellington - Strayhorn の曲の奥深さを感じさせる演奏だ。
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たぶん今でも自分はこのアルバムの真価はよくわかってないし、ネット上でもこの盤の評はほとんどないのだ。これだけの名人4人がそろえば、こういう不思議な盤が出来上がるのだろう、とひれ伏すばかり。もう少し間置いたらまた何か見えるかもしれない。その時もう一度触れよう。
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