★Twitter 2020/10/17より転載+加筆修正★
沖縄の音楽 潮風の詩 [キング <Jp>] rel.2000
おみやげ屋で見かけるような安っぽいjacketだが、馬鹿にしてはいけない。CD1枚66分ながら、宮廷音楽から本島・宮古・八重山の民謡まで、高密度に詰め込んだ素晴らしいcompilation。
録音は1975年ごろらしく、アナログで元盤があると思われるが、調べがつかなかった。わかったら続報する。
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古典は、
1. 西江喜春 (唄, 三線) / かぎやで風節
2. 島袋正雄 (唄, 三線) / 述懐節
式典の開幕は必ず「かぎやで風節」。西江氏 (1940-) は伊平屋島出身、島袋氏 (1922-2018) は国頭出身の、共に人間国宝。
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組踊から、
3. 「銘苅子 ( めかるしぃ )」より「子別れ」
組踊とは、踊りもついた歌劇。この曲は、組踊の開祖・玉城親雲上朝薫( たまぐすく・ぺーちん・ちょうくん、のちに親方 ( うぇーかた )、1684-1734 ) 作。
羽衣伝説の歌。少女少年二人の口上(別れた母・天女を慕う歌)に始まり、後半は三線による古典朗詠。伸びやかな声に癒される。 「母 ( ふぁふぁ )」、「父 ( てぃてぃ )」は、沖縄方言の発音=古代日本の発音。
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箏 ( 沖縄琴、クトゥ ) の曲からは、
4. 宮城秀子+赤嶺和子+宮里秀明 ( 箏 ) / 菅撹 一段~三段
落ち着く。なごむ。これはヤマトの影響の強い音楽。
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以下は本島の民謡。
5. 知名定男 (唄, 三線) / 谷茶前 (たんちゃーめー)
名人・知名定男さん (1945-) の登場。恩納村の伝統民謡。女性の合いの手も聴きどころ。
男たちが魚を捕って、女たちがそれを売り歩く様を歌う、にぎやかな歌。合いの手「なんちゃむさむさ でぃあんぐぁそいそい でぃあんぐぁそいそい」は「それはいいことだ さあ姉さん急ごう さあ姉さん急ごう」という意味らしい。「あんぐぁ」は「姉小」。
6. 宮城康子ほか (唄) / てぃんさぐぬ花
沖縄民謡では一番有名な歌だろう。「てぃんさぐ」は鳳仙花。魔除けになる。親の言うことをよくきくように、という説教の歌だ。
7. 知名定男 (唄, 三線) / ナークニー
毛遊び ( もーあしびー ) で即興で歌われた抒情歌。宮古島に源流があるという ( 宮古根=みゃーくにー )。後半はカチャーシー「山原汀間当 ( やんばるてぃまとぅ )」になるが、これはこの歌のルーチン。
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以下2曲はカチャーシー ( 早弾き )。みんなこれで踊る。
8. 喜納昌永 (唄, 三線) / あっちゃめー小 (ぐぁ)
9. 同 / 唐船 (とうせん) ドーイ
喜納昌永 (1920-2009) は、喜納昌吉のお父さん。8では拍子木も聴きどころ。9は超定番、上がる。裏で鳴ってる低音楽器は何だろう?
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宮古からは、
10. 砂川恵吉 (唄, 三線) ほか / 宮古 : 豊年の歌
新・安里屋ユンタとよく似たメロディー。両者の関係はどうなんだろう?
11. 浜川春子 (唄) / 多良間 : 多良間しょんがね
無伴奏独唱。「しょんがね / しょんかね」は「しょうがない」で、別れの諦観を歌うもの。実際に多良間島に行ってみると、その哀感が心にしみる。
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以下は八重山。
12. 大底朝要+前浜のり子 (唄, 三線) / 石垣 : とぅばらーま
「殿方よ」という意味で、男女の掛け合いによる恋歌。歌詞はいろいろ。「ツィンダーサーヨー ツィンダーサー ( かわいそうだね かわいそう )」という合いの手がいい。
大底朝要 (1934-2013) は西表島古見出身。八重山民謡界の重鎮だった。
13. 内盛すみ (唄, 三線) ほか / 竹富島 : 安里屋節 (あさとやぶし)
「安里屋ユンタ」に三線をつけたものが「安里屋節」。沖縄「民謡」とされ、内地でも一番有名な「安里屋ユンタ」は、歌詞・メロディーとも実はほぼ創作。「新・安里屋ユンタ」とも呼ばれる。
内盛すみ (1924?-2019) は竹富の民宿・内盛荘のおばあ。男性の歌は誰かわからない。後半ようやく出てくる、おなじみの「マタハーリヌ チンダラ カヌシャマヨー」は、「また逢いましょう かわいい 美しい人よ」という合いの手。「サーユイユイ」も楽しいよね。
14. 大底朝要 (唄, 三線) / 西表 : 古見の浦節
大底氏の地元に伝わる恋歌。漂着した役人と村娘の悲恋を歌う。独奏/唱でじっくり聞かせる名人芸。
15. 運道いかび (唄) ほか / 黒島 : 旅ぱいあよー
無伴奏で男女の詠唱。神前で、旅の安全を祈る歌。いかびおばあは1975年当時80歳とのこと。
16. 大嵩秀雄 (唄) ほか / 小浜 : くくるん嶽あよー
無伴奏の集団詠唱。これも神前で、豊作を祈願する歌である。
17. 宮里常雄 (唄, 三線) / 波照間 : まみむれぬいしぃけま
呪文のようなタイトルだが、地名「まみむれ」の女性名「いしぃけま」ということ。歌詞も全部波照間方言で、すごく難解らしい。
18. 後間啓升 (唄, 三線) / 与那国 : しょんかね (スンカニ)
独奏/唱でしんみりと別れの哀歌を歌う。島で聴いてみたいね。
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沖縄民謡のアルバムは、日本コロムビアのCD4枚組 (2CD×2) ほか、いくつか持っているが、その中でも屈指の作品。たぶんあちこちで投げ売りされていると思うので、入手もしやすい。
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