★Twitter 2020/10/29より転載+加筆修正★
KYLYN LIVE [日本コロムビア / Better Days] rec./rel.1979
言わずと知れた1970年代日本 Fusion の大傑作。渡辺香津美 (g) 以下の、当時の凄腕若手たちが結集。もう言うことは何もない。今回はその中で 清水靖晃 (ts) について。
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本盤はLP2枚組だが、一番よく聴くのは1枚目A面であろう。
A1. Inner Wind
A2. Snap Dragon
(どちらも渡辺作曲)
本盤参加の sax 奏者は、清水靖晃 (ts) と 本多俊之 (ss,as) の二人。A1では清水、A2では本多が feature されている。この二人、非常に対照的な演奏をするのだ。
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SNAP DRAGON KYLYN LIVE 2/8 KAZUMI WATANABE 渡辺香津美 1979
先に A2 の話をしておくと、ハイテンポの theme を渡辺が弾いて、続いて本多 (ss) が飛び出す。もう最初から最後まで完璧な solo を繰り広げる。菊池成孔が「この中で本多さんだけNYレベル」と呼ぶのもうなずける。
完璧なんだが、何度も聴いてると???が浮かび上がる。「素晴らしい solo だけど、これ出来すぎだ。出木杉君だ。流暢すぎる」てな感じ。才気走った曲を書き、バカテクでその難曲をこなす渡辺香津美には、本多の sax はよく合っているが・・・
本多の solo は、即興というより、何度も何度も何度も練習した上でできた phrase を記録( あるいは記憶 ) しておいて、次から次へとお蔵出ししてるだけじゃないだろうか?という気がしてきた。いや、それだけでもものすごい話なんだけど。
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INNER WIND KYLYN LIVE 1/8 KAZUMI WATANABE 渡辺香津美 1979
一方 A1 は、A2 よりもゆったりしたテンポ。Solo 回しは、渡辺 (g) → 坂本龍一 (syn) → 小原礼 (b) → 清水 (ts) の順。長い solo 回しが終わって登場した清水は、とても起伏にとんだ solo を繰り広げる。本多とは対照的。
ゆったり吹いたかと思えば、細かく刻み、そして単音 blow、吐き出すような dirty tone。これらが変幻自在に現れる。昔は何やってるかよく理解できなかったが、なんか違和感だけは感じていて、これなに?とは思っていた。
何やってるかわかってきたのは、それからだいぶたってから。「これ、R&B の honker の吹き方じゃねえか!」と。
当時の日本の ts は Coltrane 一色。清水にも Coltrane っぽいところは当然あるが、それとは異質な吹き方をしている時間帯が長い。
1979年当時、ts の honker についての情報はほとんどなかった。まあ、jazz fans なんて、R&B なんかはほとんど馬鹿にしていたのだ。1960年代の soul jazz/organ jazz もなかったことにされていたし。そんな中、King Curtis (ts) くらいはかろうじて jazz fans の耳にも届いていたが。
そういわれてみると、清水の演奏は、King Curtis を思わせるところもある。でも King Curtis だけじゃ、あれは吹けないだろう。もっといろいろな R&B honkers を聴いていたに違いない。Coltrane 一色の時代に honkers を聴いていたとすれば、すごい先見の明がある。
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清水靖晃という人は、この後 New Wave 的な Maraiah を始めたり (1979-83)、JAZZ というバンドを組んで JAZZ LIVE という cool jazz 作品を発表したり (1982)、Saxophonettes で strings をバックにベタな standard 集「北京の秋」をやったり (1983、「なんで今!?」) と、わけがわからなかった。
「北京の秋」の頃なんて、NHK-FM のライブ番組 Session '83 ( かな? ) に出たときは、ずっとカラオケをバックに淡々と吹くなんていう、ある意味ふざけたことをやってたし。とにかくよくわからない人だった ( 今も )。
1980年代後半になると清水は Paris に拠点を移し、私の視界から消えてしまい、今は何やってるのか全然知らない。しかしとても不思議な、気になる人ではある。
で、話は Tenor Sax Honkers に移る。
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