2022年3月3日木曜日

Niko Schaüble + Arthur Blythe/YA-IT-MA THANG - これは意外な名作!

★Twitter 2020/10/15より転載+加筆修正★

Niko Schaüble's Tibetan Dixie with Arthur Blythe / YA-IT-MA THANG [Timeless <Ne>] rec.1992, rel.1993

タイトルに情報量が多く、どこから突っ込んでいいやら迷う。Australia の10人編成 band に Arthur Blythe が客演したアルバム。意外な良作。

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Niko(laus) Schaüble (1962-) はドイツ出身の drummer。1989年に Australia に移住し、ドイツ時代からの band 名 Tibetan Dixie を継続。変な名前だが、音楽にチベット色があるわけではなく、これは Niko の趣味。これと Dixie をくっつけると、ミスマッチ感で印象度大。まんまとひっかかった私。

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Arthur Blythe は LA 出身。西海岸からは、Eric Dolphy、David Murray、James Newton、Blythe といった変な人が時々湧いてくる ( なぜかそこに Chico Hamilton がいつもからんでいるのが不思議 )。

で、1970年代には Loft Jazz ブームで一躍人気を得て、1979年以降は業界大手 Columbia と契約。1980年代初めころまでは意欲的な作品を連発していたが、80年代半ばになると失速。Columbiaでは結局9枚albumsを出したが、最後はlabelから放置状態。自分もその頃はBlytheのことなど忘れていた。
 
Columbia から解放された後は、Chico Freemen とさえない双頭バンド ( Leaders ~ Roots ) を組んだりしていたが、かつての輝きを取り戻すには至らなかった。残念。

それでも、澄んだ高音の鳴りは相変わらずで、「いい producer でもつけば、いい作品残せるはず」とは思ってた。2017年に76歳で亡くなっている。

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Australia 南東部 Victoria 州 Wangaratta ( Melbourneの北東250㎞ ) で開かれるWangaratta Festival of Jazz & Blues 1992 に Arthur Blythe を迎えるにあたり、Niko はかなり張り切って、地元 Wangaratta に inspiration を得た組曲を作曲。10人編成ensemble に Blythe の as を乗っけた。

一流 musician はやはり違う。Blythe は到着後1日の rehearsal で score を理解。そしてfestival でのお披露目も大成功。翌日 Melbourne に戻り、この album を録音したのだった。

Ya-it-ma Thang とはなにやらチベット語みたいな響きだが、これはチベット語ではなかった。ガックリ。Wangaratta 周辺を指す地名で「鵜の休息地」という意味らしい。Jacket の絵もチベットの版画風だし、いろいろチベット風を匂わせといて、中身は全くチベットでない。ヤラレタ。

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組曲は Part-I~IV まであり、42分の大作。全編にわたり Blythe を feature し、IV ではband members も大暴れする。Band 編成は、tp-2, tb-1, ts-2, bs-1, g&bjo-1, b&tu-1, ds-1, perc-1。Kb がいないので音の隙間も多く、風通しのいい ensemble だ。

曲の構成もそんなに複雑ではなく ( Blytheの希望でもあったよう )、わりとシンプルなensemble riff に Blythe が好きなようにsoloを乗せる。静寂に近い繊細なパートで浮かび上がる、Blythe の澄んだ高音は特に素晴らしい。Blythe の特質をよく理解している Niko の力量が光る。 Blythe の solo の back では bass の代わりに tuba を使ったりするあたりも、丁重に気を使っている。Blythe も気分よさそうなのがわかる。

Blythe は、大編成で Ulmer なんかとのガッチャガチャした sound も面白いが、スカスカな音の中で、澄んだ音で風のように一人吹きまくるのが彼の本質だと思う。Niko Schaüble、よくわかってる。

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Part-I~IV まで全部 YouTube に上がっている。本盤は日本盤もなく、中古盤市場でもあまり見かけないので、ここで聴いてもいいだろう。でもCD見つけたら買ってね。

Teil eins

Teil zwei

Teil drei

Teil vier

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1990年代の Arthur Blythe というと、全く聴く気が起きなかったのだが、全然衰えていないこともわかった。これを機にもっといろいろ聴いてみよう。そういう機会を与えてくれたNikoにも感謝したい。

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