2022年3月11日金曜日

Senti Toy/HOW MANY STORIES DO YOU READ ON MY FACE - Nagaland 出身歌手の心地よい folky pops

★Twitter 2020/11/06より転載+加筆修正★

Senti Toy / HOW MANY STORIES DO YOU READ ON MY FACE [intoxicate <Jp>] rec.2005, rel.2006

次は Henry Threadgill (reeds,fl) の嫁さん、Senti Toy。

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Senti の顔立ちは何やら Asia 的で日本人にも見えるが、出身はインド。まだ「?」だと思うが、インド北東部 Nagaland 州出身。Naga 人である。Tibeto-Burma 系民族なので、中国人・日本人ともよく似ているのだ。

Naga は多くの部族に分かれていて、彼女はその中でも Ao の出身。Naga とは Assam の人々からの他称で、彼らはそれぞれ部族名を自称している。

この Naga は蛇神 Naga とは関係ないようだ。北インド系言語の「nanga=山」がなまったもので、つまり「山に棲む人々」。

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お父さんが若い頃日本に出稼ぎに行って、東芝で働いていたそう。それで Toshiba を苗字として使うようになったらしいのだが、発音しにくいので「Toy」になったという。Tibeto-Burma 系民族は本来苗字を持たない人々なので、Naga の苗字も最近のことだと思う。

Senti は学業優秀な娘さんだったんでしょう。Mumbai の大学に進学して、卒業後そこで広告関係の仕事をしていた。そしてインドへ演奏ツアーに来た Henry Thredgill と出会う。二人は結婚し、Senti は1994年にUSAへ移住。Senti の生年は不明だが、二人は20歳以上離れてるんじゃないかな。

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インド時代から歌ってはいたらしいのだが、USA 移住後は Thredhill のバンドでも歌うようになった。Thredgill のバンドメンバーだった Brandon Ross (g)、Tony Cedras (acc, gほか)、Producer の Dick Kondas らの目に留まり、ついに歌手デビュー。

Dick Kondas は長らく American Clave の recording engineer をやっていたが、1999年頃から producer の仕事も始めるようになる。よって本盤にも、Brandon Ross (g) はじめ、Fernando Saunders (b)、Xiomara Laugart (cho) など、Kip Hanrahan 人脈が参加。

他にも、Ted Daniel (brass) は1970年代の Loft Jazz 時代からの Threadgill の盟友。インドからは A. Sivamani (perc)。

とてもユニークな musicians が集まった。とはいえ、この盤の音楽はとても平易なもので、難解なところは一つもない。Senti の support に徹している。

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制作・発売は Intoxicate Records。Tower Record (Japan) の子会社。日本制作である。Brandon Ross や Fernando Saunders の作品を出していることもあり、ここから出すことになったったようだ。

この後も、Cuong Vu や Pedro Martinez の作品も出しており、注目のレーベルだったが、2010年でほぼ活動停止。残念。

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この盤の音楽はJazzではない ( Jazz vocal コーナーに置かれていることもあるが )。Folky Pops である。

作詞作曲の大半は、Senti 自身によるもの。すごい。世の中には隠れた才人ってやっぱりいるもんだ。曲の構成は Tony Cedas がだいぶ手伝っているらしい。

Senti Toy - How Many Stories Do You Read On My Face

声量があるわけでなく、ややハスキーな声でつぶやくように歌う。Bossa Nova 向きの声だ。いずれ Bossa Nova 曲集を作っても面白いと思う。6. Because I Am Woman のバックは Bossa Nova 仕立てだし、10. Berimbau という曲もあるし、本人も多分 Bossa Nova 好きだと思う。

Senti Toy - Because I Am Woman
( Click して Jump してください )

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歌詞はほとんど英語。Native っぽい英語ではないが、インド訛りが全くないのが意外。「英語が達者な日本人」的で親しみが持てる。

2. Say A Wordは、Ao 語/Angami 語による歌垣歌謡 (求愛の歌) だが、歌詞の内容は即興で変わる。Mandolin らしき音が現地の弦楽器を模しているのもいい感じ。

Senti Toy - Say A Word

その chorus には、妹らしい Yala Toy も加わっている。次の 3. More Than the Fingers of My Hands に出てくる娘 Nhumi Threadgill の声もかわいい。多重録音で自分の声も重ねるが、unison なのであまり難しいことはやってないし、暑苦しくもない。涼しげな音楽が続く。

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9. Kohima ( Nagaland 州都 ) は望郷の歌。こういった地元色を出した歌がもっとあってもよかったかもしれないが、個人的な心境を歌った歌詞が多い。自然体の人らしいので、あまり売るための作戦はないのだろう。押しつけがましさがなく軽やか。なお歌詞対訳は内田也哉子。

Senti Toy – Kohima

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バックの musicians は自己主張せず、Senti の歌を実直に support している。Jazz っぽい solo もない。

特に Tony Cedas は guitars、organ、piano にと大活躍。この人、前の Gigi 作品でも出て来ていたが、才人ですな。Co-producer でもある。

インドから招いた A. Sivamani (perc) は出番は2曲くらいしかなく、インド色/エスニック色がほとんどないのも特徴。だから日本の pops ファンにも親しみやすく、根強いファンがいるようだ。

2016年にはアナログ盤も出ている。そろそろ2作目を聴いてみたい。

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(追記@2022/03/11)

Tower Records の site に Senti Toy のインタビューがありましたね。全4回。

← 初出:bounce, no.273 ( 2006/2/25 )

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