★Twitter 2020/11/02-03より転載+加筆修正★
Sun Ra Sextet / AT THE VILLAGE VANGUARD [Rounder] rec.1991, rel.1993
Sun Ra 晩年 ( 1993年没 ) の小編成によるライブだが、非常に珍しいアルバム。というのも、バンドの中心にいるのがゲストの Chris Anderson (p) だから。
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Chris Anderson (1926-2008) は一般にはほとんど知られていないが、Chicago では一目置かれていた local musician。よく「Herbie Hancock が若い頃影響を受けた」という話が出てくるが、Hancock に似たところなど一つもない。
目が見えないせいもあるのかタイム感覚が独特で、Monk 的なギクシャクしたラインを取る人。Trio作では、b+ds が合わせようと四苦八苦していることが多い。こういう人には無理に合わせなくていい。定常リズムを着実に刻んでいれば、不思議と合ったり合わなかったり、そこが面白い。
Monk と付き合いが長かった John Ore (b) はその辺よくわかってる。彼の存在感が大きいアルバムでもある。
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Sun Ra が全然出てこないが、そうなのだ。Sun Ra は piano を一切弾かず、Anderson のback でシンセをピャラピャラ鳴らしているだけ。録音もかなり off。Solo をとっても、off 気味なのでどうしても Anderson に耳が行く。
実はこのライブは、もともと John Gilmore (ts) をリーダーとして企画されたのだが、Gilmore はリーダー権を Sun Ra に返上 (この辺は『てなもんやSUN RA伝』参照)。譲りあいの末、「じゃあ Anderson を feature しよう」となったのかも。
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そもそも、なんで Anderson が Sun Ra と?Sun Ra とは Chicago 時代から旧知であったんだろうけど。わざわざ Chicago から NYC まで Anderson を呼び出して、一緒に live をやるほど仲が良かったのだろうか?あるいは Producer である John Snyder の差し金?謎だ。
いろいろ調べたら、Chris Anderson は1960年代以降は Chicago から NYC に移っていたようだ。なるほど、1980年代作品も NYC 録音だしな。
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1曲目の ’Round Midnight からして21分もあるが、ほとんど Anderson の独壇場だ。Intro の solo ( というか Sun Ra との duo ) パートが素晴らしい。Sun Ra は遠くで遊んでるだけだが。Anderson の独特の間が待ちきれず、Sun Ra が先にメロディーを弾いてしまうこともw。
Sun Ra も solo を取るのだが、例によって abstract な solo な上に off ぎみなもんだから、back で遊んでるのと区別がつかない。Anderson の backing もかなり自由奔放。だから Anderson ばかり solo を取ってるように聞こえてしまう。
'Round Midnight (Live)
Gilmore は影が薄い。Solo も短めだし音もか細い。この頃から Gilmore は肺の具合が悪かったらしいのだ。翌92年の欧州ツアーは欠席になる。長年 Sun Ra のとこにいたわりに free jazz が不得意な Gilmore にとって、この setting はおあつらえ向きなんだが、実力発揮できず。
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そのかわりに John Ore が大活躍。Sun Ra、Anderson という自由すぎる二人をかかえて、よく場を収めている。Anderson は数秒間沈黙したりするのだが、その間 Ore は淡々と4ビートを刻む ( よくわかってる人 )。Solo もとり、特に bowing は素晴らしい。音程もリズムも正確。
John Ore は1962年に Monk 4 を抜けてから、Bud Powell や Kenny Dorham などとの活動が知られている程度で、1980年ごろまでは動向がわからない。Hal Willner の Monk tribute 作品 (1984) に呼ばれたあたりから再び表舞台に現れ始め、1989年に Sun Ra と合流。
Ore は1961-62年頃、Monk 4 と並行して、一度 Sun Ra と演奏していたことがあった。合流後は Sun Ra の死まで行動を共にする。Sun Ra 最後の録音 Billy Bang / A TRIBUTE TO STUFF SMITH [Soul Note] rec.1992, rel.1993 でも一緒だ。
こんな実力者が、60年代後半~80年代後半までなぜ20年間もくすぶっていたんだか、これも謎だ。しかし、彼の実力は小編成での本盤を聴くだけでもよくわかると思う。大編成Arkestra だと、bass の音なんてほとんど聞こえないし。
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2. Sun Ra Blues は、Sun Ra 作とはいえ blues なので、Anderson も対応しやすくバリバリ弾く。相変わらずマイペースだが。全体を Ore がしっかり押さえているから安心。
Sun Ra Blues (Live)
Bruce Edwards (g) は、ほとんど Sun Ra のとこでしか名前を見ない人だが、Wes Montgomery フリークのようだ。オクターブ奏法も出すし、Wes のコピー・フレーズをそのまま出したりもする。Sun Ra の作品では珍しい。Ore の solo はこの曲の聴き所。
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3. Autumn in New York では、Sun Ra がシンセでテーマを弾き始めると、珍妙さに笑ってしまう。Solo 回しは、Anderson → Gilmore → Sun Ra → Anderson に戻ってくるのが面白い。
Autumn In New York (Live)
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4. 'S Wonderfulでは、Anderson が出だしをトチるが、その後は終始好調。Ore の bass line も聴きごたえある。
'S Wonderful (Live)
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5. The Stargazers でようやく Sun Ra 主導の曲。といってもリフだけで展開が何もない、いつものヤツだが。みんな勝手に solo を取るので、Anderson は所在なさげだが、頑張ってついて行ってる。最後は Sun Ra の演説w。
Theme Of The Stargazers (Live)
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変なアルバムなんだが、いろいろおもしろいし、聴きごたえも結構ある。Sun Ra、Chris Anderson 双方のファンにとって珍品なので、入手して損はないと思う。
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